【まくら✖ざぶとん】㉕『不貞愁訴』

えー、他人の不幸は蜜の味、とよく言われることは十も百も万ほど承知はしていたが、なぁにがそんなに楽しいのか他人の色恋沙汰に首を突っ込んで横やり入れるのが我が国のしきたり、一線を越えた越えないで物議をかもした元アイドルは女性参議の不貞にああだのこうだのとワイドショーの視聴率に貢献する以外にゃ一銭にもならない議論が湧き上がり盛り上がる。

その間にも次なるスキャンダル求めてゴシップ記者は忍者の如き隠密行動で東奔西走南跳北躍、秘儀めく情事を暴き晒されるのは今を時めく著名人、下手に名が知られるのも困り者、我が者顔でシャッター切られムービー撮られて優先されるは著名人権の侵害よりも〈報道の自由〉、企業のコンプライアンスが叫ばれる世の中にあって個人のコンプライバシーは論の外。

せっかく売れ出した名前でもって浮き名を流す色男もカシャカシャと光学ズームレンズに切り刻まれた途端に色褪せるこのご時世、明日は我が身と後学のために他人のフリ見て我がフリ直すか、それともどっこい誰が言ったか「不倫は文化」、右に続けとばかりに倫理の一線みんなでまたげばこわくない、ごたごたのどさくさに紛れ込んで「どうか餌食になりませんように」は群れに群れて熊が舌舐めずりする川上に遡上する鮭の心理、待て待て待ったどうせ抱くならいっそ「抱けるなら・抱くだけ抱こう・ホトトギス」は漢字に変換すれば読んで字の如く我が家に返還できない「不如帰」。

数に物を言わせて不倫絶倫酒池肉林、一事バレれば万事バレ、清々しきこと日本晴れ、誰が言ったか〈一人殺せば人殺し、百万人殺せば英雄〉にちなんで〈一人抱けば人でなし、百人抱けば英遊〉としたらちょうど陸上競技の国際大会で盛り上がる英国に遊びに行きたくもなるが、首都ロンドンは漢字に変換すると倫理に敦い＝「倫敦」と書くと見るも知ったりフライング失格！