【まくら✖ざぶとん】⑤③『日向紀行』
さあさて先だって久々の飛行機に乗って日本の果てまで行ってQしたのは九州の宮崎、おなじみそば屋のせがれの旅に便乗してはるばる南国まで足と羽を伸ばしたとあっちゃその旅行記をまくらに仕上げねばなるまい、紀行文と言えば聞こえがいいがまくらとあらば土産噺としたほうがよござんしょ。
「フェニックス」たる南国風ヤシの木が並ぶ海沿いの道を離れ、一路目指したのは大吊り橋。途中のだだっ広い河川敷にあった真っ平らなゴルフ場は現地の知人いわく「百姓ゴルフ」。クワをクラブに持ち替えてドライバーでダフっても「クワのクセが出ちまった」と破顔一笑で呵呵大笑、和気藹々で球を飛ばす百姓たちを尻目に内陸へドンドコドコドコ進めばいざ吊り橋。
百聞は一見に如かず、画像を挟めばご覧の有様。意気揚々と張り切って渡りはじめるが高さ百四十メートルに腰が引け、手すりに触れておそるおそる進むことお化け屋敷で彼氏の服の裾をつかむ女子の如し。そう思ったトコロガドッコイ、居合わせた女性たちはけろりとした顔で渡ってら。現地の職員いわく「女性のほうが(ないはずの)肝が据わってる」。でも吊り橋よりもこわかったのは曲がりくねった山道のガケから車の飛び出して落下した痕跡。
旅先では現地の人間よろしく過ごすのがモットー、とあらば観光だけに囚われずひいきのチームの試合観戦。球速百四十キロメートルにも腰を引かず意気軒昂に振り切るのはドライバーではなくウッドことバット、打ち返した球を飛ばしに飛ばすこと百姓たちもビックリ一気呵成の長打攻勢で呵呵大勝。
束の間の休息は百四十時間とはいかず半分の七十時間足らず、空港に着いたはいいが風速四十メートルにも迫ろうかという結構な強風で乗るはずの飛行機が着陸できずに一悶着、荒天欠航か出発決行で二転三転、四の五の言わずに待てばいいのだがああだこうだと後生願いの六十乗客。
帰れるか留まるか、天国か地獄の振り幅を前にした心境たるや勝負の打席に臨むゴルファーとバッターの如し。そう思ったトコロでボットン、ガケからは落ちちゃならぬがサゲがきたら落とさねばならないのがこの【まくら✖ざぶとん】、宮崎紀行は終始一貫、飛ぶも飛ばぬもドライバー(パイロット)次第だったってことで、ここはひとつ。
えー、「一字千金」という故事ことわざもありますが、【まくら✖ざぶとん】を〈①⓪⓪⓪文字前後の最も面白い読み物〉にするべく取り敢えず①⓪⓪⓪作を目指して積み上げていく所存、これぞ「千字千金」!以後、お見知りおきを!!