【まくら✖ざぶとん】①⑧④『常陸・陸前・蝦夷紀行』
さてはて巷で話題の政府が流行らせ廃らせたGO TO TRAVEL再開は今のところGO TO TROUBLEまっしぐら、旅行といえばいつからか定番化した紀行まくらだが紀州以来の動物園めぐりにいつだったか赴いたってんなら、ご時世もご時世だしいつかは云わぬままにまるっとまとめてお届け。
常陸といえば大洗水族館のオススメはマンボウ、ボウっと覇気も邪気も無邪気さもなく無表情で水中に浮かび続けるだけの姿は人間なら廃人、その水槽全体が漂わせる只ならぬ退廃感が想起させるのはある種のディストピア、戯れにつけてみたキャッチフレーズは〈神さまのしっぱいさく〉。
常陸→陸前としりとりのごとく北上した先で寄ったのは蔵王キツネ村、ゴリラの作り物が出迎えるB級テーマパークで待ち受けていたのは、噛まれるだの盗まれるだの外国への入国よりも物々しい入村前の注意事項と「自己責任」の免責事項、戦々恐々としつつ踏み入ったキツネ村は閑散期で客がまばらだしキツネたちは換毛期で毛がまだら。ただでさえ目つきが鋭く近寄りがたい雰囲気があるのに、毛の抜け落ちた姿と独特の獣臭が野性味を際立たせるそこはもう異世界異空間、キツネが群れをなして眠りこける参道とあちこちに鳥居を置いた神社を模した作りが醸し出していたのは絵巻物的世界観、浄土じみたディストピア感にアテられて馴染めなくなりゃ村八分、名実をともなったお稲荷さんに恐れをなして村からは早々においとまさん。
常陸前をひと旅した後ふた旅めに再び北上陸したのは蝦夷、押しも押されぬA級テーマパークたる旭山動物園の一押しはオオカミ、一匹狼たる孤高な印象とは裏腹に本来は群れで生き抜く十匹狼、それでも気高さと誇り高さを滲ませる鋭い眼光と存在感はさすが〈神さまのずいはんしゃ〉。
ノースサファリサッポロもキツネ村と同じく作り物のライオンが出迎えて黄色い看板が「自己責任」を強調するB級テーマパーク、テッテケテーと園内を走り回るアヒルの群れを檻の中からご馳走を見る目で追う痩せこけたライオン、小学校にある池みたいな水たまりでアザラシが泳ぎ、キリンとハイエナが横並びでエサやりされる姿はサバンナでもサファリでも見られない光景、順路の脇に立たされたまま佇んでいるフラミンゴたちはもはやディスプレイというより放置プレイに見えるありさま。ともあれ〈動物のごった煮〉ぶりはリアル『あつまれ どうぶつの森』ではなきにせよ絵本的世界観、行き場をなくした動物たちを集めて一緒くたにしたようなディストピアともユートピアとも受け取りうるそこはきっと北の大地の『ズートピア』。
オチはやっぱりキツネ村。
売店でかわいさ余って邪悪さ百倍のステッカーを購入した時のこと、店員さんの手の甲と手首の二か所を大きく覆ってたのは白い傷当てパッド。
…めっちゃ噛まれてら!
えー、「一字千金」という故事ことわざもありますが、【まくら✖ざぶとん】を〈①⓪⓪⓪文字前後の最も面白い読み物〉にするべく取り敢えず①⓪⓪⓪作を目指して積み上げていく所存、これぞ「千字千金」!以後、お見知りおきを!!