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【まくら✖ざぶとん】⑨⑦『おでん屋台➋』

なんとまあ早いもので今年もいよいよ年の瀬の瀬戸際、お部屋騒動の後はおでん屋台と続くのがこの時期のまくら、暖簾はあれど看板がなければ看板娘もおらず台将こと親爺ひとりで切り盛りするのが中年オヤジたちのオアシスことオヤジスたるおでん屋台

去年と同じ私鉄沿線の去年と同じではない駅前に暖簾をかけりゃ、今宵も名無しの呑兵衛が集まること集まること、寒さで丸まった猫背が長椅子にずらり、大こんにゃくこんぶちくわちくわぶアッチアッチャ猫舌で煽る熱燗、連作とあっちゃ去年と同じ展開でいらっしゃいませ。

話題も例年のごとくお上の政治にかぶせて世相を切るか、お下の性事をかまして節操をなくすか、あるいは薩摩揚げを見て鹿児島出身の「大迫はんぺんないって!」と流行語でオヤジギャグかの三択、嫁と娘に出血大サービスのクリスマスプレゼントを渡す真っ赤っ赤サンタクロース役は真ん真ん中に「苦行」入りの「家族行事」、ってのも去年と相変わらず。

かわいらしいアツカンベーだった娘のも今や憎たらしい舌打ちの乱れ打ち、それでもインスタ映エーション目当ての運転手を頼まれるうちが、父親はイルミネーションイル意味ネーションとなったら乳離れに次ぐ父離れ、大人は去年と変わり映えなくとも子供は年々と大人びてくもの。

「今年も終わっちまいますなぁ」

ですねぇ、終わっちまいますなぁ、と親爺の詠嘆調に賛同する声がぽつぽつ、おでんのタネにゃ出汁のコンブが染みてるおいどんのムネにゃ親爺のコトバが染みるわ、と懲りずに流行りの西郷どんネタで独りごち、今年も名無しの呑兵衛たちが家では狭い肩身を寄せ合い熱燗一合一会

おやおや同じ沿線とはいえ駅は変わったはずなのに、結局アンサーソングのごとく去年と客層も展開も変わらずじまいで店じまい。
なんのこれしき、おでん屋台だけに噺のタネも仕掛けも寄って集まる名無しの呑兵衛たちも煮たもの同志

えー、「一字千金」という故事ことわざもありますが、【まくら✖ざぶとん】を〈①⓪⓪⓪文字前後の最も面白い読み物〉にするべく取り敢えず①⓪⓪⓪作を目指して積み上げていく所存、これぞ「千字千金」!以後、お見知りおきを!!