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【映画食】『感心領域』×りんごと、洋梨と、ポップコーン


映画は花がたくさん出る。深淵っぽい

前から気になっていた「関心領域」を見に行った。先に見た友だちから音響がとても大事な映画と聞いたし、実際見てみたらここまで音にこだわり、音で伝える映画はなかなかないんだろうな思えた。

そこでポップコーンを持った人たちがたくさん現れた。映画をみた後、Twitterで「関心領域」・「ポップコーン」で検索したらさまざまなtweetが見られて興味深かった。


映画館では瞬間的にホロコースト映画を見に来るのにポップコーンと炭酸飲料か…と思ってしまったし、坂本龍一のopusみたいに「映画館に音を聞きにくる」場合もポップコーンを持ち込む観客はどれくらいの割合でいるんだろうかなと考えてしまった。

聞こえてくる咀嚼音を気にしないことにして、映画の音に耳を澄ませた。収容所のすぐ外、家の中にいる人の視点と聴覚でいて、何か燃える音、銃声、悲鳴が聞こえてきた。中にいる人たちはそれに気づいているようでないようで曖昧な行動と反応を見せていて余計に不安で怖かった。その中、ポップコーンの音がした。

その瞬間、唖然としたが、ネットフリックスなどあらゆる動画サービスでホロコースト関連の膨大なコンテンツリストのことを考えた。どんな形であれ、程度の問題であれ、私たちは人類の悲劇を消費してきた。大義名分もあるし、重要なことであるが、娯楽の面が完全排除できた状態で、「お客さま」として消費した側面は、少なからずあると思う。私も同じ。そう思った。他の人について何か判断したり、断定してはいけないと自分に言い聞かせた。


映画では案外食べ物がたくさん出てくる。<シンドラーのリスト>にも案外食べ物がたくさん出てくるけど、ゲットーと収容所の粗末で悲惨な食べ物亜ばかりで、<関心領域>の食べ物は、華やかで本当に美味しそうな食べ物ばかりだった。エンドロールを見るとケータリングサービスがいくつか出てくるのを見ると、そこそこ気を使ったようだ。収容所長のお宅の食べ物は全部美味しそうだけど、食べたい気はしない。特に朝ごはんのじゃがいも、ソーセージ、バターとパンが並ぶ食卓はなんだか気持ち悪かった。戦争映画で一番美味しそうに見えて食べてみたいなと思うのは、いつもソーセージだったはずなのに。

数多い食べ物の中で一番簡素だったのは、りんごと西洋なしだった。豪華な食卓シーンではなく、ただの果物が出てくるシーンがこの映画の中で一番の人間の善意と勇気が見られるところだった。

映画を見た後、終電に急ぐ若者たちの間を歩き、横断報道でぼっと立ち尽くしていた。信号灯に「Free Palestine」ステッカーがたくさんついてあった。

恥ずかしかった。怖かった。


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