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第6回 回り道の最短ルート(後編)

上野純先生(東京都公立学校小学校教員)

明星大学通信教育課程正科生1年次 小学校教員コース卒業

前編からつづく



 「孤独」に学習を進めていた上野ではあったが、1年目の夏期に参加したスクーリングが、転機になる。必修科目の演習スクーリングで、”友人”と出会ったのだ。

 普段は全国各地で、自分と同じように「孤独」に学習をしている友人達と初めて顔を合わせた。年齢、地域、職業、そしてそれぞれのバックグラウンド。皆それぞれ全く異なる仲間達。「子育てをしながら学習している人もいたんです。凄く刺激になりました」とのこと。

 それ以降、普段の時でも仲間達と連絡を取り、励まし合い、またスクーリングの際には再会をして、近況を語り合い、「スクーリングで知り合った友人達が支えになった」と振り返る。ただ、それは、上野だけでなく、互いに感じていた事であろう。

 他方、高校時代の仲間達は通学制の大学に通っていたわけで、羨ましさのようなものはなかったのだろうか。

「確かに羨ましさみたいなものはありました。いわゆる“キャンパスライフ”の話を聞いたりすると」

素直な心情を教えてくれた。

 ただ高校時代の友人からは、「通常ならば15週かけて授業を受け、それでレポートにまとめるものを、自学自習でレポートをまとめている自分がやっていることに、“凄いな”と言ってもらえて、誇らしくも思った」とのことだった。

自分のやっている事に間違いはないという自信にもなった。

手帳に細かく学習の予定を書き、長いスパンで考えすぎず、毎日の事をコツコツと積み重ねていったことがうまくいった要因のひとつ。時に不安になることもあったが、その時は、「教員になる、4年間で卒業する」という強い気持ちで自らを鼓舞しつづけた。そして、全国の仲間の存在も。

 順調に単位を修得し、いよいよ卒業を迎えた上野に待っていた“大仕事”は、卒業生代表として、卒業式で答辞を述べることだった。上野の学習に対する姿勢や、教員に対する想いは事務局内でも知れ渡っていることだったのだ。

「ビックリしましたよ。留守電にいきなり“卒業式で~…”と入っていて。自分で良いのかなって」。

答辞を述べる上野さん(右側は大橋有弘学長※当時)

卒業式の中で、先述したような“最初は卒業まで気が遠くなったこと”や支えてくれた教員や事務局への感謝などが述べられる中で、最も時間を割いたのは、やはり仲間の存在についてだった。

答辞の中で上野はこのように語っている。


授業内でグループの人たちと話をすることで、皆が同じような思いや悩みを抱きながらも努力をしていることを知り、私も、 目標達成のために学習を一層頑張ろうという強い刺激を受けました。 また、この授業を皮切りに、私は、同じ目標を持つ、心強い友人達を 明星大学通信教育部の学生生活で得ることが出き、喜びでいっぱいでした。

(部報めいせい2015年5月号より 一部抜粋)

ただただ、「大学卒業資格」と「教員免許状」の取得だけを目指して入学した明星通信であったが、その目標に加えかけがえのない、友人達も出会えたこと。元々は「ひたすら孤独」と思って入学したからこそ、さらに喜びを感じたのではないだろうか。

2015年3月26日、上野は当初の目標通り4年間で明星大学教育学部教育学科を卒業した。

 教員採用試験の結果、初年度は東京都で、期限付き任用として働く事となった。

 「まずは、声がかかるのを待とう」と長期戦も覚悟していたが、タイミング良く4月の段階で小学校に勤務できることとなった。最初は、複数学年に教える算数少人数指導の担当として教員生活をスタートさせた。複数学年を担当することで、「例えば、3年生から学んだ事を4年生ではこうやって使って勉強しているんだ」という“つながり”を感じる事ができ、非常に勉強になったとのこと。

 しかし、2学期から急遽欠員が出てしまい、担任を持つことになったのである。最初は解らない事だらけで大変だったが、周りの先生方に支えられたことによって試行錯誤を重ねた。それよりも「教員になれた」という充実感の方がまさった。やはり、どこまで上野にとっては、「教員になりたい」という気持ちが大きかったのだ。

 現在では主任教諭として、後輩からの相談を受けることも増えてきた。「教員の仕事は魅力的」と語る。最近メディアなどで、教員の世界は大変と語られることが多い。「もちろん大変なことは多いけど、やりがいや楽しさを感じています。最近は“悪目立ち”みたいな部分もあるのかなと思います」と語る。

 「他の先生に“ここは負けない”や、“自分はどんな教員か”みたいなことってありますか?」と聞いてみた。

「まず、私の中で最も大きな自信になっているのは、明星通信を4年で終えられた事」と答えが返ってきた。

 自ら計画をたて、終わらないレポート達に苦しめられながらも、当初の目標通り卒業出来たことで「簡単に投げ出さない」や「諦めない」強みがあると気づいたという。

またこんな話も教えてくれた。

 「6年生の担任をすることもあり、キャリア教育じゃないですが“将来の事”の話とかするんです。その時に、自らの経験を話して、“回り道をしてでも自分のように夢を叶えることができるんだよ”という事を伝えるようにしているんです」

 “言葉の重み”という言葉があるがこれぞまさしくである。

 その話をしているときの「先生」の顔。そして、児童達の顔を見てみたいと思った。

きっと互いに目を輝かせて、話し、聞いているのだろうと想像した。

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<上野さんからこれから、教員を目指す皆さんへひと言>

メディアなどで、色々と取り上げられることの多い教員ですが、何よりも大事なことは、「目の前の子どもたちの笑顔」に触れ合えることがやりがいだと思います。私自身は教員になる夢を、通信教育で叶えることができました。他の人よりも回り道かもしれませんが、努力は報われる!と前向きに学んでいって欲しいと思います!みなさんのことを、先輩として微力ながら応援しています


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これからも、沢山の想いをもった、在学生卒業生を取材していきたいと想います。

(おわり)


『私』について:1981年東京都生まれ。某大学文学部卒業後、一般企業を経て明星大学に入職し16年、様々な部署を経験し、広報関係の業務に広く携わっている。業務の他に、趣味で某SNSにおいて文章や写真を配信しており、そのフォロワー数は11,000人を超える。