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【詩】棘

異国の音楽が鳴って、私の肌の色、髪の色、話す言葉、持ち物すべてがあっけなく受け入れられる。どうして、そんなに簡単に私を受け入れられるのだろう。どうして、そんなに優しい瞳で私を見てくるのだろう。この人には勝てない、そう思った。もっと突き放して侮蔑して欲しかった。そうでないと私が用意していた剣の意味がない。あれほど寝る間を惜しんで研ぎ澄ませた感覚も、燃えたぎる命も意味がなくなってしまう。こわい。やってきたことが台無しになって私が私である意味さえもどこかにいくのではないか。震えて、涙がでてしまう。情けない、なんて情けないのだろう。無条件の愛。母親の羊水のような温もり。振りほどこうにも光の強さが邪魔をする。私はずっとこうやって守られたかった。認められたかった。用意すべきものは、剣ではなく欠けていく月のような冷静さ。もしくは誰もを受け入れる朝日。頷くことしかできない優しさが、体内を痺れさせて身動きが取れない。こんなにも痛い愛がこわい。こわいのに、嬉しい。人を信じたい。信じてみたいと素直に思った。


最後までありがとうございます。
またお会いしましょう💐

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