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「伝わり方の濃縮還元ジュース」 - あなたが本当にその言葉を伝えたい人は、誰ですか? -

時は遡って4月ごろ。
所属するコミュニティの勉強会にて、
とあるカメラマンさんの書いているブログの話を聞いた。

そのブログは世界でたった2人しか見られない、
お子さんの成長記録を綴った非公開のブログ。
見られるのは彼と、その奥さんだけ。

「いつか、自分の子供たちにそれを見せてあげたくて」と
彼は言っていた。

私はその頃自分に起こった出来事を書いたnoteが偶然にもバズって、
世の中から見たら誰でもない私のnoteを
5万人近いの方が読んでくださって、
メディアの方から取材依頼なども来て驚いていた頃。

だからこそ、たった二人しか見られないそのブログが
なんだか逆に宝物のように思えて
あらためて、私は
「一体誰のために文章を書いているんだっけ?」
と、実はあれからずっともにゃもにゃと考え込んでいた。

そしてほんの少しだけ整理された気がしたので、
こうやってまたnoteに書いてみる。

▽素敵な素敵なブログのおはなし



私にとっての「ブログ」

私がブログを書き残し始めたのは、結婚し、長男の妊娠がわかった頃の2012年の4月。自分の人生が新しいフェーズに移行し、暮らしが一変するであろう前に、その記録をなんとなく残したくなったということと、多分、Nikonの一眼レフを買ってちょっとウキウキしていたんだろうということが写真を見るとわかる。(一眼レフの機能で色抜きされているそこらの野草が写ってる)

このブログは公開されてはいるものの、当時流行していたMixiの延長線上にあり、本当にただただつらつらと日々の日記をつけているものだった。まあ、書いても誰も読まない(笑) SEOなんて知らないし、そもそも読まれようと思って書いていない。本当になんとなく、自分の日記をただ、オンライン上で、公開した状態で書いていただけ。そう。私にとってのブログとは、本当にただの「記録のための公開された独り言」がスタートだった。

ささいな日常の出来事を記録する。自分でふと自分のブログを見返しては、ああ、こんなことあったなあと懐かしむためのもの。でもたまに友人が見ていてくれると嬉しい。

それは自分との対話の場所でもあったのかもしれない。



"誰かの役に立つかもしれない" 記録

ほぼただの日記だったものが、少しずつ私にとって違う意味を持ち始めてきたのは、デンマークに移住してからだった。

デンマークでは息子が幼稚園に入園したこともあり、私は日中に自由な時間(しかも朝8時〜夕方5時まで!)を得ることができた。それまでテキサスではとにかく毎日子供とどう遊ぼうとか、どこに連れて行ってあげようとか子供のことを考える毎日だったのが、一気に自分のエネルギーの矢印が外向きに向かい始め、さらにそれが今まで正直意識したこともなかった「北欧・デンマーク」という国だったものだから、それはそれは興味が爆発。あちこちどこへ行っても面白いことばかりで、それまでただの海外育児ブログみたいだった私の日記は、段々と「デンマーク探求ブログ」みたいになっていった。

さらにこの頃から、お仕事で、外向けの「記事」を書く機会が増えてきたこともあり、

「あれ?もしかして今私が体験していることは、ものすごく貴重な体験なんじゃないかな。これ、もしかして誰かの役に立つこともあるんじゃないかな」

と、見ず知らずの誰かを意識し始めた。もちろんそうやってデンマークを探究することが日常にもなっていたので、相変わらず日記がわりではあるものの、この頃から「あ、これは誰かの役にきっとたつエピソードかも」「あ、この発見はメモしておきたい」とことさら【自分の中での新しい発見や気づき】があったときに記録としてのブログを残すようになる。

以降、私が書くブログ的文章は、

・基本的には自分の暮らしの中での気づきや学び、想いを客観的に観察し、書き残しておくための自分との対話の場所

であり、かつ

・そんな文章でも、もしかしたら"誰か"の役に立つこともあるかもしれない

というそんんな気持ちでこのnoteなんかも書き続けていた。

そんなときに、とある勉強会で、こんな言葉を聞いた。



「濃縮還元ジュース」

団体や個人での活動の広報・PRのあり方について学んだ「HEROSHOW vol.5 - その告知は、本当に必要か - 」の会にて、日本初のソーシャルグッド専門のPRエージェンシー・ひとしずく株式会社の代表・こくぼひろしさんが、熱量の伝わり方についてこんな表現をされていて、私の中にその言葉がピンポイントでずっと残り続けた。

濃縮還元ジュースに例えているのですが、中心の方々の濃縮(熱量)が100%じゃなく20%だと、告知で届くのは1%くらいになります。」

つまり、熱量の伝わり方は濃縮還元ジュースのようなもので、もともとの熱量が高ければ、SNSやウェブなどを媒介して薄まってもしっかり濃度を保つことができるが、内側の濃度がすでに薄まっていればさらに媒介した先ではもっと薄まってしまう。そんな濃縮還元ジュースみたいなものなんですよ、ということ。

さらに、もちろんそれは伝えるべき相手を意識することでまた薄まり方は異なり、相手がその情報を必要としている人だったりした場合には濃度を保つことができたりもする。

広報とは、ただただ広く伝えればいいというものではなく、届けるべき相手に適切に届けることが大切。

一見当たり前のように見えて、実現するのが実はとっても難しい。実際自分が何かを伝えたいと思ったとき、どうしてもなんだか広く広く伝えようとしてしまって結局届かない!なんていうことは起こってしまいがちだったこともあって、心に留めておかなければ!と思った言葉だった。


さらにこの言葉が印象に強く残ったきっかけとして、同じくこの勉強会に参加していた、個展を控えていたカメラマンの友人がこの言葉を聞いて、

「個展のお知らせを、広く広く知らせたいと思ってそのためにどうしたらいいか悩んでいたけど、この勉強会を経て、私が一番伝えるべき人たち、伝えたい人たちに直接葉書を送ることを決めた!」

と言って、実際に100枚近く葉書を書いてそれまで応援してくれた人、また感謝を伝えたい人に届け、結果個展にはたくさん自分の作品を見て欲しかった人たちに来てもらったというエピソードがあったことも大きい。

全く関係のない人たちが来てくれて、1%を受け取って帰ってくれることも嬉しい。でも、もっと自分をずっと見守っていてくれた人たち、自分がお世話になって人たちが見てくれたら、20%も30%も、もしかしたらもっと自分の想いを受け取って帰ってくれるかもしれない。じゃあそのとき、自分は誰に向かって今限りあるリソースでコミュニケーションを取るべきだろうか?そこで、思いっきり舵取りをして実行しきった友人は本当にすごいし、最高だと思った。



私は、誰に、何を残したいんだろう。
私は、誰に、何を伝えたいんだろう。


そして、冒頭で紹介したこちらのnote。
つぼけんさんが書き続けているという、子供の成長を記録した、夫婦にしか見られないブログの話を聞いたときに咄嗟に思ったこと。それは

なんて贅沢で愛情にあふれたブログなんだろう!!

っていうこと。
そしてもしこれを濃縮還元ジュースに例えるならば、きっとまずそのブログそのものに込められた想いは純度100%だが、長い年月公開されずにただただ二人の間でだけ綴り続けている間に熟成して時が立てば立つほど醸成し、200%にも300%にもなりそう。

さらにこれを受けとったときのお子さんは、その熟成された想いを受け取ったとき、薄まるどころかそのまんま、あるいはさらに大きな想いを受け取ってくれるんじゃないかって。

こんなに想いが伝わるブログ、ほんとにないな。ってその瞬間に思って、なんだかもうため息しか出なくて、何回もとにかく「すごい」とか「やばい」みたいな語彙力のない感想を言ってしまっていた気がする。笑


私は特に、外へ外へとエネルギーを使う傾向があって、結果noteが少しバズってありがたいことに何万人という方に届いたとき、でもそれは私が一番何かを残すべき子供たちにとって何か意味のあるものだったんだろうか?とか考えてしまった。

私は何のためにブログを書き続けるんだろうか?誰に何を伝えたいんだろう?私が残したいものって何だっけ?

細々とブログを書いていたときにはこんな迷いはなかったんだけれど、noteという媒体を通して今まで以上にたくさんの方に見ていただく機会をいただいたからこそ向き合うことになった問いに、本当に1ヶ月以上筆が止まるくらい色々もにゃもにゃ考えた。


そしてもにゃもにゃ考えた上で辿り着いた結論は、私にとってやはりこういったエッセイの執筆は、自分の思考をクリアにし、次のステージに思考を持っていくために重要なプロセスであるということ。自分が自分らしくいるために、こうした公共の場という心地よいプレッシャー下で考えをまとめるということがやっぱり必要なんだと再認識。結果それがもしたくさんの方に届いて、ほんの1%でも0.1%でも、その方にとって良き時間となったならば素直に嬉しい。

ただ一方で、濃厚なメッセージもたくさんたくさん書きたいし、私が大切に思う全ての人に、その想いを伝えなければということにも気付いた。コロナ禍においてコミュニケーションが遠隔化しソーシャル化したことで一時見失ってしまった、私がずっとずっと大切にしてきたこと、

自分の手に届く範囲の人たちを全力で大切にすること。


これをもう一度見直して、最愛の人たちに特濃のラブレターを届け続けなければ!ととっても強く強く思った。


色々と環境が変わっていく中で、自分のあり方を見失ってしまうことがあるけれど、でもかならずこの人素敵だよな、と思っている人たちが自分を本質にたちかえらせてくれる。感謝の気持ちを全力で伝えつつ、私もできる恩返しをどんどんしていこう。そんなここ数ヶ月の思考のおはなしでした。


こんな文章を最後まで読んでくださって、ありがとうございました!


読んでくださったみなさまも、あなたの想いの濃縮還元ジュース、濃いめで受け取ってくれる人に届けられますように!


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