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「駐妻になりたくてなったわけじゃない」と言う心理

駐在妻が「駐妻になりたくてなったわけじゃない」と言う心理について考えてみた

唐突だが駐在妻は
・なりたくてなった人
・なりたくてなったわけじゃない人
という分け方ができると思う。
私は後者なので前者の考えにそもそも思い当たらなかった。

個人的な話になるが、私は小さい頃から日本の漫画が好きで、海外旅行に連れて行ってもらっても
「あーしばらく漫画もアニメも見れないな」
などと考える親不孝者だった。

そして高校生の時に「なんだか『海外』ってカッコいい!」と思い立ち、
『海外=白人・英語』という実に安直なイメージをもって北米ホームステイに参加してみたが、現実は不味い飯と日本の常識では考えられない乱れた生活リズムに打ちのめされ、もう海外は非日常を味わうための旅行で十分などと思っていた。

駐在妻になった時も、引越からしばらくして生活が落ち着き、悩み事で悩む余裕ができてから、「自分と同じように夫の転勤で海外に来ている女性が世の中にいないか」とネットで検索するまで、『駐在妻』という言葉をちゃんと知らなかったレベルである。

そもそもアメリカ転勤が決まったのは第1子妊娠中だったので、「どうせ産後で働けないし子供の学校などの制約もないし、家族一緒が良いしついていくか」くらいの気持ちだった。
仕事が大嫌いだったこともあり、夫の報告を受けて「良い退職理由ができた」と作成中だった産休届を破り捨て、退職届をしたためたくらいである。


専業主婦、それは子どもの頃からの夢。
(ただし海外で主婦をしたいと思っていたわけではない)
私は生来労働が嫌いな質な上に、民〇党政権時代の短期就職氷河期で貴重な「新卒という身分」をブラック業界に使ってしまったため、自分のキャリアにすでに投げやりだった。夫に寄生する気満々である。専業主婦で何が悪い。夫が仕事で帰ってこない分家のこと全部やってるんだぞ。ただの役割分担だ。
うちは外で稼ぐ役と家を回す役が完全分業制なだけなので専業主婦批判はちょっとおいといていただきたい…おっと話が逸れた。

では他の駐在妻の方はというと、リアルでもネットの世界でも
「ずっと駐在妻になりたかったんだー!やっとなれた!嬉しい!!」
と言っているような人を見かけたことがない。
Twitterで独身女性に上から目線でアドバイスを垂れ流す自称恋愛カウンセラーや婚活先生みたいなアカウントが「駐妻はステータス」みたいなことをつぶやいているのを見たくらいだろうか。


なぜだろう。
私が陰キャだからだからか。


もしくは、「なりたくて なった!!」と言えるような前向きな人はわざわざ口に出したりネットで不満を書き散らしたりしないのかもしれない。

そもそも、「なりたくてなった人の方が少ない」というのはある意味当然だ。
「駐在『妻』」という言葉の通り、駐在妻は夫の仕事による分類の結果である。

夫側の仕事にも
①高い確率で海外転勤がある
②もしかしたら海外転勤がある
③海外勤務なんて無いと思ってたのにまさかの転勤
くらい色々ある。
結婚した時点で「将来絶対海外転勤があるぞ」とわかっていた人など一握りであろう。

それゆえ、「駐在妻になりたくてなった人」より、
思いがけずなった人やしぶしぶなった人の方が結果として多くなるのだ、と私は考えている。

それなのに、駐在妻になると
「海外できらびやかな生活をしてるんでしょう?」
「会社の手当がたくさん出るんでしょう?」
と言われることがグッと増える。

うるせえ。

他国はどうだか知らないが、アメリカに限って言わせてもらえば、
物価は高いしサービスや物の質は基本悪い。

良いものが欲しければ日本よりずっと多くの金を出さないといけない。
教育費と医療費はケタ違いである。
日本並の快適な生活をしたかったら金を出さなければいけないので、金を払うかストレス(日本とかけ離れた生活)をとるかの選択が常についてまわる。

よくご指摘をいただく「駐在手当」は安全な地域での高額な家賃や学校代に消えるし、さらに言えばそもそも少ない。
「駐在で家が建った」?少なくとも、それは近年先進国に派遣された1馬力家庭には当てはまらないと思う。

さらに、異文化への適応や常に外国語で各種サービスを利用しなければならないというストレスが加わるので、きらびやかどころか
「髪振り乱してもがいているのを必死で取り繕っている状態」
である。
また、まわりの米国人からあまり浮きたくなかったり、周りがおしゃれでないと日本人的な服装や化粧も鳴りを潜める。
いったいどこがキラキラしているんだか。というかどうしたら輝けるんだろうか。汗と涙で輝けるんだったら多分輝けている。


こんな状態なのに外野から「駐在妻」について豪奢な想像をされたり、あまつさえ想像(妄想)上の煌びやかな生活から生じたやっかみなどをぶつけられたりしていると「なりたくてなったわけじゃない」などという言い方もしたくなるというものだ。
ただ家族揃って暮らしたかっただけなのに。

駐在妻になりたくてなったわけじゃない。

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