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《日記》名曲喫茶をめぐる

ジャズが好きだ。
ということは以前、「ジャズを好きになった日」で深掘りして執筆した。

同時にこのエッセイで、両親はクラシック好きだったのでクラシックも好きなことに少し触れている。ジャズはクラシックの文化を通ってきたジャンルでもあるので、ジャズ好きがクラシックも愛するのは当然のことなのかもしれない。

数年前、偶然吉祥寺の名曲喫茶「バロック」の前を通りかかったことがあった。

そのときは気分がかなり落ち込んでいて、陽気な音楽が流れていたり開放感のある窓があったりするカフェなどに行ける状態ではなく……
「バロック」の「私語厳禁」の文字や、クラシック音楽を聴くための場所、というポイントがとても魅力的に見えた。

結局その日は通りかかっただけで入らなかったものの、そういえば中央線沿いは名曲喫茶が多かったような?と思い出すきっかけになり、その日からひとりクラシック喫茶めぐりをはじめることになった。

【ヴィオロン/阿佐谷】

原田マハさんの新刊「リボルバー」が発売された日。

本を購入した後に駆け込んだ名曲喫茶が、阿佐ヶ谷の「ヴィオロン」だった。閉店時間まで1時間ちょっとしかなかったものの、コーヒーを1杯頼み、スピーカーに耳を傾けながら読書に没入。

店内はほぼ満席で、他のお客さんも名曲に耳をやったり、読書をしたり書き物をしたりと思い思いに過ごしていて、絶妙に落ち着く空間を演出している。閉店時間が近づくとそれぞれお会計をして去っていき、店内にはお姉さんとおじいさまと私だけが残った。

そろそろ行こうかなとお会計をして出ようとしたところ、おじいさまが「最後まで聴いていたいですよね……」とこぼしたので、私もつい終わるまで聴き入ってしまう。外に出るとおじいさまは喫煙所で煙草を吸いながら、「もう少し待ったら面白い方がいらっしゃると思いますよ」と言う。

どうやら最後の一人のお姉さんはダンサーらしく「この間喫煙所で話しただけの仲なんですけどね、そこのチラシに載っている舞台に出るらしいですよ」と教えてくれた。

出てきたダンサーのお姉さんは「阿佐ヶ谷が稽古場なんです。よかったら公演に来てください」とチラシを渡してくれて、颯爽と稽古に向かっていった。

不思議な邂逅にこころがゆるみ、おじいさまに「名曲喫茶めぐりをしようと思っているんですけど、ここが初めてなんです」と伝えると、中央線沿いのクラシック喫茶のあれこれについてとても丁寧に教えてくれた。

「それではお疲れ様です、さようなら」と言って去っていくおじいさまの姿はジブリさながらで、これからの名曲喫茶めぐりに胸が高鳴る。

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