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森とウイスキー
「もし僕らのことばがウィスキーであったなら、もちろん、これほど苦労することもなかったはずだ。僕は黙ってグラスを差し出し、あなたはそれを受け取って静かに喉に送り込む、それだけですんだはずだ。とてもシンプルで、とても親密で、とても正確だ」
「アイラウイスキーはひと口目飲んだ瞬間は『なんだこれ、こんなものもう2度と飲まない』って思うんだけど、1杯飲み終わるころには気になっていて、2杯飲むころには忘れられなくなっているんだよね」
20歳だったころ。吉祥寺のジャズバー「more」で、ストレートのラフロイグを慈しむように舐めながら、目の前のその人はつぶやいた。
ひと口試しに飲ませてもらった琥珀色の液体はひどく苦く、複雑で、舌の上がびりびりと痺れた。そしてこう思ったのだ。
「なんだこれ、こんなものもう2度と飲まない」と。
それが数年経ってみてどうだろう、私はすっかりウイスキーの虜になっている。苦手になっていくどころか、好きになる理由が多すぎたのだ。
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