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悲しいと思う瞬間 〜感情について〜


 自分に辛いことがあって、「あぁ悲しい…」と感じた時、自分の中でいったい何が起こっているのか。昔、そんな事を考えた。

 頭にモヤがかかり、お腹の中が重苦しく、胸がチクチクと痛み、表情が曇り、涙が頬をつたう。

 物質一元論に立つならば、悲しみを生み出すのは「脳」である。肉体とは別に物質以外の「魂」というものが存在し、悲しみを作り出しているのではない。

 脳は悲しみの原因となる感覚刺激を受け取ると、情動を司る神経細胞が興奮して自律神経に作用し、発汗や心拍数増加、筋緊張等の生理的反応を引き起こす。

 また、詳しい仕組みは謎だが、脳内のニューラルネットワークの働きにより、「“悲しい”という主体的体験(クオリア)」が生み出される。

 感情と身体反応の順序性に関しては、「悲しいから泣く」のではなく「泣くから悲しい」とする“ジェームズ・ランゲ説”や、この二つが同時に発生するという“キャノン・バード説”がよく引き合いに出される。

 どちらが先かはさておき、「悲しみ」の刺激に対する反応の起点が「脳」であることは明らかである。そこでは、関係する神経細胞のシナプスから脳内伝達物質が放出されている。

 自分にとって、大き過ぎる悲しみが訪れたとしても、今、自分が「悲しい」と感じた瞬間、脳の中で、シナプスからミクロな化学分子がパッと飛び出した、ただそれだけのことなのだ。

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