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さようなら。もう会えないね。

晴れているにも関わらず、黄砂で空は汚れている。
黄砂は明日ぐらいになると収まるそうだ。
モヤモヤした空と私の心はまるでシンクロしているようで気分が晴れなかった。
きっと最近あった「別れ」を消化できずにいるからだろう。
転院先での診察が終わり、早めに大学に着き、持て余した時間で気持ちを消化するかのようにこの文章を書いている。

3月30日

その日、私は二人の人とお別れした。

一人は彼氏だ。
今まで許せていたことが急に全て嫌になった。
生理的に無理になってしまったといったところだろうか。
翌日の31日に会う約束をしていた。
私はそのときに会ってちゃんと話をしようと思っていた。
ところが彼氏は「楓華ちゃんに会うの楽しみ♡」と浮かれた様子だった。
私は前に「大切な話をしたい」といっておいたのにも関わらずこの様だ。

そのことを親友に話すと、「もう別れな。会わなくていいよ。」と言った。
私が躊躇っていると、彼女は「そうやって話すだけ話して何もしなかったら、仕事辞めたいって言いながら辞めない人と一緒だよ。」と言った。

この一言は私の背中を押した。
LINEで「お別れしましょう」と送って軽く動いた指で画面を叩きブロックした。

これが一人目のお別れだ。

さようなら。愛してくれた人。
さようなら。もう二度会いませんように。

もう一人は入院したときに好きになった女性の方だ。

しかし、彼女と私の距離が近くなればなるほど同じ病棟内の人たちは「離れた方がいい」と強く反対された。

実際そうだったのかもしれない。

彼女から手を出してきたのに、いざ私が好きになってしまうとほっとかれてしまった。

繋がっていたTwitterもブロ解されてしまった。
すごくショックだった。

そのことも親友に話した。すると彼女は「それは楓華のことを弄んでいただけだよ。周りが反対するぐらいの人だったらお別れした方がいいと思う。」と言った。

またしても親友の言葉は私の背中を押した。

「あなたのことが大好きでした」と送った。
既読がついて「ありがとう」と返ってきた。

胸の奥がきゅっと痛くなったが指はブロックと書かれているスマホの画面を叩いていた。

さようなら、愛した人。

4月16日

この日は転院前の病院へ行く最後の日だった。

受付を終えて番号札を持って椅子に腰掛ける。
今日の番号はゾロ目だった。

すると、受付の人が私を呼んだ。
「すみません、お伝えするのを忘れたのですが、本日急遽○○先生がお休みでして…それでもよろしいでしょうか?」

嫌な予感が当たった。
もう転院の日まで時間がない。というか主治医が次に外来に出向く日は私が転院する日だ。

渋々「大丈夫です」と返事をした。

しばらく待った後、私の番号が呼ばれた。
担当医は以前、私が入院した時に主治医の代わりに担当医になった先生だった。

「お久しぶりです。」
私も先生も挨拶を交わした。

その後、診察は淡々と進んだ。

担当医は「じゃあ、お薬出しておきますね」と言い診察を終えようとしたので慌てて私は「すみません、今日○○先生から紹介状をいただく予定だったのですが…」と伝えた。

「あ!そうなんですね!今、パソコンのデータを見るのでしばらくお待ちください!」
そう言ってパソコンのWordを開き、紹介状らしきものを開く。そしてコピー機から音が聞こえた。

「最後に○○先生に伝えておきたいことはありますか?」
この質問に私は何も答えることができなかった。
手紙を用意していたのに、「受け取れません」と言われるのが怖くて。
せめて「今までありがとうございました」ぐらい言えばよかったのに。
私は弱虫だった。逃げたのだ。

○○先生も私も何も告げずにお別れした。

ここでこうして文章を書くのは罪滅ぼしにはならないと思っている。でも、少しは救われる気がして。

さようなら、2年間ありがとうございました。
私は転院したし、先生も転勤するのでもう会えませんね。さようなら。

4月19日


転院の日だ。
自立支援やその他諸々の手続きを終えた。
まるで引越しが終わったような感覚だった。

別れは春を告げる。
桜はすっかり葉桜になっていた。
桜が散った頃に私は本当の春を感じていた。

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