急な腹痛こそ読書のチャンスかもしれない。
急な腹痛のときも人生は楽しいってことを覚えていたい、そんな願望を持っています。
腹痛は時を選ばない。重要な仕事が控えているとき、あるいは家で最高にのんびり過ごしたいとき、そんなときにも腹痛は襲ってくる。腹痛だけでもシンドいのに「こんなときに腹痛になってしまうなんて」という自責の念がストレスになって腹痛がもっと激しくなりそう。新しくできたドーナツ屋さんで買い食いしたのがよくなかったのかとか、高頻度で急にお腹が痛くなるこんな不便な身体では周囲に迷惑かけるとか、楽しもうと願った昨日を後悔するような時間を過ごすのはスキじゃない。
腹痛で苦しいところに、追い討ちかけるなって。こんなときこそ親身になろうぜ、我が身に。腹痛があっても人生は楽しいし、むしろ腹痛があるからこそ出会える楽しさだってあり得るんじゃないの? そうやって自分を励ましてみる。結果、腹痛の発生頻度を減らすアプローチは今のところ確立できていないけど、腹痛時の苦しさを飼いならすことには時々成功しています。
腹痛のことを考えれば考えるほど痛みが増す。世界には、痛みと痛みを感じている自分だけ、そんな勘違いをする。ふっ。勘違いそれ自体は別に悪くもないけど、1mgの得も無いなんてイヤですわ。
まずは基本的対策を。次の区切り線まで書いてみます。
リラックスしたほうがよい。電車のエアコンが寒いなら何か羽織る。お腹からの緊急通報が来てるのにトイレまで遠いときはゆっくりとカウントしながら深呼吸したほうが落ち着く。緊張をゆるめられそうな部位をゆるめてみるのもいい、肘とか。自宅でトイレに何度も行くなら日頃から快適な空間に整えておくとよい。
もちろん、それだけでは済まないケースもある。そんなとき、私だったら読書に頼ってみる。何かしら面白いもの、驚くもの、引き込まれるもの。
読書はストレス緩和に使えるのでしょうか。
小学生の頃に読んだ、好きだった作家さんの短編集のあとがきに、彼女が親知らずの痛みに襲われた夜のことが書いてあった。「なんでこんな怖い思いをさせるの? 決着つくところまで行かないと自分の日常も怖さの色で染まっちゃうに決まってるから宿題あるけど最後まで読まないと」と怖がりなのに一人で入ってしまったお化け屋敷をひたむきに突き進むように読んだ不気味な短編は、彼女の歯痛体験から来たものらしかった。確かに、自分のパーツが自分が思考停止するほどの痛みを与えてくるって、怖い。
彼女が痛みを創作に昇華したのには前日譚がある。それより前の歯痛に苦しんだ夜に、朝が来て病院が開くまでの時間を、マンガを夢中で読んでいたら痛みを忘れていたという体験があった。マンガが痛みを直してくれた訳じゃないけど、痛みを忘れることができて本当に助かった、と。世の中の役に立つ発明とかは発表できない私でも、あのとき歯痛を忘れさせてくれた作品のように痛みをやり過ごす夜に寄り添える作品を書けるんじゃないか、と書いてあった。実際のところ記憶は曖昧なのですが、そういうストーリーとして思い出します。
今度、歯が痛くなったら、作家さんと同じように本を読もう。小学生のわたしはそう誓ったのですが、あいにく歯は丈夫で痛くならない。痛むのはお腹ばかり。よし、私は腹痛のときに読む!
腹痛緩和に役に立つ本を最近読んだ本の中から挙げてみます。
まずトイレで読む本。
トイレは滞在時間が長くなるとは限らないので、短いエピソードが積み重なるタイプのものをおすすめしたい。
・『きょう、ゴリラをうえたよ』。子どもの言い間違いが見開きで紹介されている。ほほえましい。
・ポケット四字熟語辞典。大げさな表現に驚いたり、四字熟語同士を闘わせてみたり。そういう意味では単語帳も、見逃してた細かいところを読むようになってよいかも。
・断片的に読んでも楽しい作品。漫画だったら『ひらばのひと』みたいな1話完結型の連載もの。ダレ場のないもの。
移動中に聴く本。
せっかくなのでnote経由で知った本(Audible)から選んでみます。
・『お嬢様ことば速習講座(Audible版)』。これは文章だけでも面白そうなのですが、読み手の方の話芸(読み芸?)が楽しい。可憐な少女にも、ふてぶてしいオバサンにも一瞬で変幻自在に入れ替わって演じ分けていく。同じような言い回しを、上品にも残念にも語り分ける。「ごきげんよう」を溌剌としながらも可憐で上品な印象で言えるなんて、これを聴くまで知らなかった。
『ハリー・ポッターシリーズ(Audible版)』。ベストセラーなのだから読んでみたいと思いながらも、重量ゆえ手を出せなかった高嶺の花だった。風間杜夫さんという俳優さんによる朗読。セリフ部分は、声に登場人物それぞれの性質が乗るので、カタカナ名前が苦手なひとにも識別しやすいかもしれません。情景描写も目に浮かんでくるようで、引き込まれます。ハリーの髪が切っても切ってもすぐ伸びてしまう説明など、薄ら怖い雰囲気が養父の戸惑いを連想させる。複雑なのにイメージしやすいって不思議です。
朗読してくれる方の話芸に感動しているあいだに、腹痛に気をとられていたことを忘れていきます。腹痛とともにあろうがなかろうが、楽しい時間は取り戻せるのです。そう確信できると腹痛の怖さが減ります。
今回はN=1の事例でしたが、腹痛などの緊急事態におすすめの本をお持ちの方がいらっしゃいましたら、コメントで教えていただけると幸いです。スキ・フォロー・サポート、お待ちしております。