医療スタッフとhospitalityの話。
唐突ですが、
目の前に迷子になって大泣きしている子供がいたとしたら、
あなたはどうしますか?
杖をついたおじいさんが立っている満員電車で、
優先座席にどかりと座り、
席を変わる気配もない若者をみた時、
あなたはどうしますか?
この問いに対しての、
道徳的な回答は誰もが答えられるでしょう。
ですが、実際にそれを行動に移せる人はどのくらいいるのでしょうか。
あなたが見知らぬ他人に対して、
何かの行動をなす時にはなんらかの心の動きが伴っています。
医療の世界において考えてみるとどうでしょう。
医療スタッフは患者さんに関わる時、
どんな心をもって接しているでしょうか。
もちろん医療スタッフが患者さんの健康、体調を第一に考えていることは紛れもない事実で、
どのスタッフも患者さんにとって最善の処置をするでしょう。
しかしその処置の内容が
よくある日常的なものであればあるほど、
業務化してしまったり、作業化してしまう場面もないとは言えないと思います。
私たち医療スタッフの「こころ」は
患者さんになによりもよく伝わります。
怠惰な態度で接すると
すぐに見透かされてしまいます。
病院というのは、
医療というサービスを提供する場ではありますが、
医療スタッフが患者さんに対して提供すべきはそれだけではないと私は思っています。
医療サービスを受けられる場所というだけでは
病院は成り立たないのです。
また、医療サービスという処置を実施するだけの場所なら、
ロボットのスタッフによる病院が生まれてきてもおかしくはないということです。
ではなぜそんなことにならないのか。
人間にしかできないことだからです。
医療スタッフと患者さんの間に生まれる
人間同士の関わりが病院の中で大きな役割を果たしているからです。
それは何か。
『ホスピタリティー』です。
ホスピタリティーとは、
思いやり、心からのおもてなしという意味です。
相手を敬い、最低限の礼儀をもって接する「マナー」に、「心」が加わったものが「ホスピタリティー」です。
この言葉は、
疲れた異国の旅人を、見ず知らずの人が無償でもてなしたところから生まれたんだそうです。
他者との関係の間に主従関係はなく、
「何かをしてあげる」というような
奢った気持ちはここにはありません。
相手に喜びを与え、その姿を通じて喜びを感じるのです。
相手の喜びを嬉しいと感じるのは、
「親身になる」ということです。
それが本当の「ホスピタリティーマインド」です。
病院においては、
患者さんの心情、気持ちに寄り添い、
親身になりQOLの向上に努め、
症状の快方を共に喜びあえる関係を築くということです。
医療スタッフと患者さんの間に
縦の関係性はなく、
同じ人間として、
生を喜びあう姿ということです。
たとえ意思疎通が取れない状態の患者さんであっても、「こころ」は通じます。
むしろ、そんな状態の患者さんだからこそ、
私たち医療スタッフの「こころ」を感じ取っています。
生かされている。という苦しみではなく、
生きている。という喜びを
感じられる場所でありたいと思うのです。
それにはやはり、親身になって、
あなたを大切に思っていますよ。と
「こころ」で伝えることが何よりも大切だと感じます。
これは医療スタッフと患者間だけでなく、
医療スタッフ同士の交流においてもいえることです。
スタッフ同士の連携においても、
互いが互いを思いやり、
相手の立場になって関わることで、
対人関係が円滑になり仕事が効率的にすすむ潤滑油になるでしょう。
慌ただしい病院内で働くスタッフ同士だからこそ、お互いの抱えるストレスや不安、
不満も理解し合えるはずです。
自分の伝えたい思いを押し出すだけでなく、
その思いに相手を慮る「こころ」を載せて伝達することができると思います。
たったそれだけでも、
互いを思いやるホスピタリティーの風によって、スタッフ間の連携が円滑に進むと思います。
普通の生活以上に、
慌ただしい環境であり、
病める人たちに接する場所である病院だからこそ、ホスピタリティーマインドが重要視されるべきです。
この『ホスピタリティーマインド』こそが
医療スタッフにとって必要不可欠であり、
他者との交流の中で最も重要視すべき「こころ」だと私は思います。
多忙な医療スタッフですから、
イライラしてしまう時、
自分の仕事でいっぱいいっぱいな時ももちろんあります。当たり前です。
ですが、1人が変われば少しずつその温もりは伝わります。
スタッフ同士の関わりであっても、
患者さんに接する態度でも、
あたたかいこころというのは伝わります。
私自身も、
日々心がけていますし、
1人でも多くの人があたたかい気持ちで他者と接することで、病院内だけでなく、自分を取り巻く周りの環境も少しずつ変化すると思います。
この記事を読んでくださった方には是非、
この「ホスピタリティーマインド」を持って生活してもらえたらと思っています。
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