『恋する二日酔い』ビールのように苦い感情を詰め込んだ短編集
お酒にまつわる思い出というと、楽しいことよりも切ない出来事を思い浮かべてしまうのは私だけだろうか?コナリミサト先生の『恋する二日酔い』では、まさにビールに纏わるほろ苦くて切ないエピソードを描いている。
物語のキーとなるのは巷で人気のビール「ピンクビールアワー」。本作は、このビールを巡る13人の彼女たちの人生の一幕が詰まった短編集である。
その中でも「11杯め」に登場する話が一番お気に入りだ。
登場人物は同棲中の若いカップル。一緒に夕飯の水餃子を作り「ピンクビールアワー」を飲みながらこたつで過ごす...そんな幸せそうな2人の姿が描かれている。けれど、最後まで読むとこれは、これからも続く2人の幸せな日常ではなくて「最後の晩餐」だということがわかる。
そんな最後の晩餐という切ないシーンで登場する「ピンクビールアワー」が、2人にとってどんな思い出を象徴するアイテムとなるのか。
ビールのようにどこかほろ苦いけれど、最後にくる爽快感のように新しい一歩を踏み出したくなる...そんな清々しい結末をぜひ読んでみてほしい。
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