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無敵にかっこいいきやつ。

異性への目覚め。それは、幼馴染だったり、運動神経抜群な同級生だったり、人によってそのきっかけは様々だと思う。けれど、マンガ好きの私にとっては、そのきっかけももちろんマンガだった。

一番古い記憶は小学校1年生の時に出会った『カードキャプターさくら』の小狼くんだった。シンプルに"かっこいい"という感情を抱いたこと、そしてもっと知りたい!模写したい!と熱狂した「異性への目覚め」はこれが初めてだった。

その次は『NARUTO』のうちはサスケくん。そして、人生で最も夢中になった『鋼の錬金術師』のエドワード・エルリックを経て大人になった。

けれど、年を重ねて色々な人間関係に揉まれるうちに、当たり前のようにマンガよりも現実世界にいる人間にときめくことの方が圧倒的に多くなった。

...マンガの登場人物にときめき、瞳を輝かせたあの頃を懐かしく思っていた時、なんと当時の情熱が蘇るほど無敵にかっこいいきやつが私の前に現れたのだ。

大人になってから、ヤンキーにハマる

その名も東京卍リベンジャーズ』の佐野万次郎ことマイキーだ。

本作は、不良とSFを掛け合わせたサスペンス作品。中学時代に不良だった主人公・花垣武道は、かつての恋人が暴走族東京卍會の抗争に巻き込まれて死亡したというニュースを目にする。その後、何者かに電車のホームに突き落とされた結果、中学時代にタイムリープする能力に目覚める...。そんな花垣武道が中学時代にタイムリープして、恋人が死亡する元凶となる東京卍會で成り上がろうと奔走する物語だ。

タイムリープするごとに解き明かされる謎、そして大迫力のヤンキー同士の抗争にアツい友情。一つの枠に留まらない怒涛のストーリー展開に私は夢中になった。

何もかもが"無敵"

本作には個性豊かなヤンキーたちが登場するのだが、その中でも佐野万次郎の存在がとにかく圧倒的だ。

東京卍會の総長で通称「マイキー」と呼ばれる男。類稀なるカリスマ性と喧嘩の強さで"無敵のマイキー"と称されている。(なぜ彼がマイキーと呼ばれるようになった背景には美しい兄妹愛が隠されているので、ぜひ本作で確かめてほしい。)

そして、暴走族やヤンキーと言うとマイナスのイメージを抱く方が多いことだろう。けれど、マイキーは違うのだ。

今って不良がダセーって言われる時代だろ?兄貴の世代はさこの辺りもすっげー数の暴走族がいてさその辺をチョッカンコール鳴らして走ってた。みんな肩肘張ってさ喧嘩ばっかしてでも自分のケツは自分で拭いてそんな奴らがなんでダセーんだ?だからオレが不良の時代を創ってやる。『東京卍リベンジャーズ』1巻より

不良の時代を創りたいと言うマイキーが総長を務める東京卍會には「誰かが傷ついたらみんなで守る」という教訓があるなど、一般的な暴走族やヤンキー像とは一番遠いところに彼はいるのだ。

普段は、圧倒的なオーラで近付きづらい雰囲気のマイキーであるが、とにかく仲間思い。仲間を傷付けた相手には容赦しない性格だ。そして、副総長である龍宮寺堅こと通称・ドラけんとは仲が良く、こんな子どもらしい一面を見せることがある。

強さもさることながら、総長としての振る舞い、考え方。そしてたまに見せる可愛らしい一面。そう、何もかもが無敵なのだ。

喧嘩の強さと許す強さ

マイキーの魅力的なエピソードを上げたらキリがない。

けれど、マイキーが私たちを魅了してやまない一番の理由は「許す強さ」を持っていることだろう。マイキーは仲間の脱退や裏切りはもちろん、大切な人の死を一番経験してきた人物だ。圧倒的な喧嘩の強さとカリスマ性を持つマイキーなら、相手に報復することなんて造作もないことだろう。

けれど、彼は許すのだ。もちろん、武道や周りの仲間の支えがあってこそだが、悲しみや怒りを自分の中で噛み砕いて消化する...。決してそれらは消えることのない感情だけれど、東京卍會を信じて付いてきた仲間たちのために「許す」のだ。

インド独立の父・ガンジーの言葉でこんな言葉がある。

弱い者ほど相手を許すことができない。 許すということは、強さの証だ(マハトマ・ガンジー)

マイキーの「許す」と言う行為には、喧嘩の強さだけではなくこの本来の強さがそこにあるのではないかと思う。

無敵にかっこいいきやつ

男子に少しの粗雑さと親しみを込めた時に「あいつ」ではなく「きやつ」ということがある。

...大人になった私がまさかヤンキーに心ときめくと思わなかった。よくある恋愛系メディアに書いてある、女性は少し危険な香りがする男性に惹かれるとはこのことかなんて思いながらも、誰よりも強くて無敵のマイキーのことを人に伝えるなら「あいつ」じゃなくて「きやつ」と呼びたい。

きっと、マイキーが作る不良の時代ではその呼び方の方が似合ってるはず。

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