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【漫画原作アイデア】『Code of the Gods-神々の暗号-』シナリオ・設定まとめ

1タイトル
『Code of the Gods-神々の暗号-』

2ジャンル
歴史ミステリー

3あらすじ
歴史好きの女子高生日美子は、ある日神話学者の照彦という男性に出会う。神話に対して懐疑的だった日美子は、照彦から神話について学んでいくうちに、神話の魅力に惹かれていくようになる。しかしある日、照彦は何者かに殺害される。日美子は、事件現場に残された謎のメッセージを読み解くことで、事件の裏で謎の組織がうごめいていることに気づく。事件の捜査をしていた公安警察で照彦の息子である天馬は、事件の証人である日美子と共に、事件の犯人とその裏にいる謎の組織を追うことになる。

4登場人物
■織田日美子(おだひみこ)
本作の主人公。歴史好きの女子高生。神話や伝承は古代の人類による創作だと考え、オカルトが大嫌い。ある日神話学者の及川照彦に出会い、神話について学び始める。真面目な性格で普段は大人しいが、歴史が絡むと饒舌になる。歴史のためなら命を懸ける覚悟があると豪語するほど歴史が好き。

■及川照彦(おいかわてるひこ)
神話学者。日本神話と海外の神話の共通点を見つけ、歴史と神話の関係性について研究している。昔は教員だったが、研究に集中するため教師を辞めている。しかし教えることが好きであるところは変わらず、日美子に出会ってからは彼女に神話を教えることが楽しみになった。ある日突然何者かに殺害されてしまう。

■及川天馬(おいかわてんま)
照彦の息子で、公安の刑事。常に金欠に悩まされており、借金も抱えている。ボロボロのアパートに住んでおり、自堕落な生活を送っている。父親である照彦が殺害されてからは、日美子と共に事件の裏にうごめく謎の組織を追うことになる。

5脚本
第一話

・主人公は歴史好きの女子高生、日美子・日美子は歴史が大好きだったが、根拠のない噂話や都市伝説は大嫌いだった・実際に現存する文献や遺物、科学的な証拠がある話しか信じないタチだった・普段は真面目で大人しい性格だが、歴史が絡むと饒舌になる・普段は歴史本を読み漁ることが趣味・日美子が歴史に興味を持ったきっかけは彼女の父親の影響だった・日美子の父親は大の旅行好きで、日美子が小さい頃から彼女を日本を含む世界中のあらゆる場所に連れていってあげていた・旅先は主に遺跡や神社、教会などの歴史が絡む場所だった・日美子は父との旅行が大好きだった・小さい頃は勉強が大の苦手だった日美子だが、父に歴史について教えてもらったおかげで、学校の授業では歴史が一番の得意科目になっていた・だが、中学2年の頃に、日美子の父親は事故に遭い命を落とした・日美子が家族の死に直面するのはそれが初めてだった・しかし日美子は、歴史の勉強をやめることはしなかった・日美子は歴史の勉強をやめてしまえば、今までの父との楽しかった思い出が全て消えてしまう気がしていた・旅行に行くことはなくなったが、大好きな父のことを忘れないためにも、日美子は歴史について学び続けることを決してやめなかった・高校生になった日美子は、ある時学校から家に帰る途中で、道に迷っている中年男性に出会う・日美子はその男に道を案内した・その男は、お礼に食事をご馳走すると言い出した・日美子は今日は母の帰りが遅いことを思い出し、男の言葉に甘えることにした・男の名前は及川照彦・元々高校教師をしていたが、今は教師を辞めて神話学者をしているらしい・神話と聞いて日美子は少し警戒した・世界中の神話のストーリーについては父から何度も聞かされていたが、神話のストーリーは現実離れしたものばかりで日美子はなかなか好きになれずにいた・「ノアの方舟」や「バベルの塔」や「アダムとイブの楽園追放」の話が、実際に起きた出来事と考えている人は少ないだろう・日美子は照彦の機嫌を壊したくなかったため、自分の神話に対する意見は話さないでおいた・一方で照彦は、楽しそうに神話について語り始めていた・照彦は、日本を含む世界中の神話にはいくつもの共通点が見つかっており、その謎を解けば人類の真の歴史を解き明かすことができると熱弁した・日美子はその話を聞きながら、心の中で胡散臭いとつぶやいた・しかし、そんなことお構いなしに照彦は神話について語り続けた・日美子には照彦のことが、根拠のない話ばかりを本気で信じているおかしなおっさんにしか見えなかった・日美子はこれ以上は付き合ってられないと思い、家に帰ることにした・別れ際に照彦は、自分の現在の職場の住所が書かれた紙を日美子に渡した・神話の話に興味が湧いたらいつでも来ていいとのことだった・正直日美子は、神話の勉強にはちっとも興味がなかった・日美子にとっては、神が人間を創造したとか世界の終わりにキリストが再臨して最後の審判を下すとか、そんなぶっ飛び話を信じる気には到底なれなかった・世界の神話の謎を解き明かせば真の歴史が明らかになる?・そんなこと、あるはずがない・神話なんて所詮、昔の人々が考えたただの妄想だ・日美子はそう考えていた・それからしばらくして、日美子が通っている高校は夏休みに入った・日美子は、この夏休みの間にどこかに旅行に行こうと計画を立てていた・正直、父が死んだ日から旅行に行く気力がなかなか湧いてこなかった・しかし、照彦とレストランで会話したあの日から、もう一度旅がしたいと思うようになっていた・今思えば、照彦の容姿と神話に対する熱意は、父とどこか似通う部分があった気がする・しかし、日美子はその考えをすぐに頭から振り払った・父は照彦とは違う・父は迷信や根拠のない話が好きではなかった・照彦は全く父とは似ていない・彼はただのおかしな都市伝説オタクだ・日美子はそう考えを改めた・適当にネットで検索して、目に止まった場所に新幹線に乗ってやってきた日美子・そこには日本の昔ながらの風景が広がっていた・果てしなく続く田園・巨大な山脈・セミの鳴き声・都市部と違い、コンビニやスーパーのような建物はどこにも見当たらなかった・その代わりに、小さな木造の民家が遠くの方にいくつか見えていた・こういう田舎に来るのもたまにはいいと思う日美子・旅を楽しんでいる間は、日美子は照彦のことをすっかり忘れていた・日美子は、子供の頃に何度も経験した、知らない土地に行った時のワクワク感を次第に思い出していた・その土地の観光スポットについて全く知らなかった日美子は、とりあえず駅の近くにある小さな観光案内所で聞いてみることにした・観光案内所にいたのは年老いた小柄の女性だった・彼女の話によると、山の頂上に神社があるらしい・千年以上前から存在する古い神社で、今でもコアなファンが多く訪れる場所だという・この地域では昔から聖地として神聖視されている場所らしい・(神社か……)・正直あまり気が進まなかった・日美子の脳内に、再び照彦の顔が浮かぶ・しかし神社まで歩いていくのに1時間ほどしかかからないと聞き、仕方ないから行ってみることにした・どうせ当てのない旅だった・夏のサンサンと照る太陽の光を浴びながら、山道を歩いて登る日美子・その時、彼女の頭にある考えが浮かんだ・(自分は照彦の意見を、勝手に間違えて解釈していたのではないだろうか?)・彼が言いたかったことは、神話のストーリーが全て実際に起きた出来事ということではなく、昔の人類の信仰心と歴史の繋がりのことだったのではないだろうか?・日美子は歩きながら考えた・確かに、人類がここまで文明を発展させられたのは、宗教や神話の神々を信じる人々の心に起因している・ローマ帝国の皇帝は、人々のキリスト教に対する信仰心を利用して帝国を繁栄させた・大日本帝国時代の日本人は、神道に対する強い信仰心のもとに団結して欧米列強と戦い、そのおかげで欧米に植民地にされていたアジア諸国は解放された・神社もそうだ・日本で一番多いと言われている稲荷神社と八幡神社を作ったのは、大陸から渡ってきた渡来人という説がある・神話と人類の歴史は密接に繋がりがある・日美子はそのことをすっかり忘れていた・日美子はただ、都市伝説や根拠のない噂話を頭ごなしに否定していただけで、神話が作られた理由や歴史への影響などの本質的な部分を見落としていた・日美子はようやくそのことに気がついた・山頂にある神社にたどり着いた日美子は、その荘厳な社殿を見て思わず息を呑む・昔の日本人は、本気で神話を信じ、この神社を造ったのかもしれない・しかしその信仰心は、決して妄想や作り話を信じていたわけではなく、愛する家族の健康や、争いのない平和な世界の実現を願うという、高尚な願いからくるものだったのだ・日美子は神社の前で手を合わせ、神に祈りを捧げた・そんなことをしたのは生まれて初めての経験だった・しかし、今はなぜか祈りたい気分だった・日美子は神々に、亡き父の魂の安寧を祈った・すると、自然に目から涙がこぼれ落ちてきた・(ありがとう、お父さん)・日美子はそう心の中でつぶやいた・旅行から帰ってきた日美子は、照彦からもらった住所を訪ねてみることにした・照彦のオフィスはとても大きいとは言えない場所だったが、中はとても整理されていて清潔感があった・照彦や彼の同僚たちは、日美子を歓迎してくれた・日美子は少し気恥ずかしさを感じたが、神話について少し興味が出てきたことを、正直に照彦に伝えた・それから日美子は、夏休みの間ずっと、照彦のオフィスに通い、彼から神話について学び始めた・最初の方は、神話についての基本的な知識から学んでいた・照彦は、日美子が思っていたよりも合理主義者だった・間違っていることははっきりそう言うし、合理的じゃない説を無理矢理妄信している様子もなかった・彼と交流していくうちに、次第に神話の魅力に惹かれていく日美子・照彦との神話の授業は、子供の頃の父と過ごした日々を思い起こさせた・気づけば日美子は、照彦のことを恩師のように慕うようになっていた・そして授業の内容が進んでいくと、ついに日本の神話と世界の神話の共通点の話になった・照彦の話を聞いているうちに、彼が、この謎を解けば隠された歴史の真実が見えてくると考えるようになった理由を理解できるようになっていた・しかしそれと同時に、照彦の授業が次第に、日本の歴史のタブーに近づきつつあることを日美子は予感していた・ある日、日美子はいつものように照彦のオフィスを訪れるが、そこに照彦の姿はなかった・出勤時間はとっくに過ぎていた・オフィスの職員に照彦の自宅の住所を聞き、そこに向かう日美子・(寝坊でもしたのかな?)・照彦の家はとても年季の入った家だった・インターホンを押したが、誰も出ない・不審に思った日美子は、玄関が空いていることに気づく・忍び足で家の中に入り、照彦の名前を呼ぶ・返事はない・居間と思われる部屋の引き戸を開けてみると、日美子は衝撃を受けて膝から床に崩れ落ちた・そこには、血まみれになった照彦の冷たくなった遺体が横たわっていた

第二話
・その後、日美子は事件のことを警察に通報した・不思議と涙は出てこなかった・むしろ、涙が出ないほど大きなショックを受けていた・(あぁ、また大切な人を失った……)・すると、日美子の視界にあるものが映った・照彦の遺体の近くに、烏の羽が落ちていた・日美子にはそれが何を表すのか、その時はまだ気づいていなかった・遺体の第一発見者である日美子は警察の事情聴取を受けるが、犯人に心当たりはなかった・だが日美子は、照彦がたびたび誰かに見張られていたり、帰宅時に何者かにあとをつけられていたことを不安に思っていることを知っていた・日美子はそのことに加え、先程遺体のそばで見つけた烏の羽のことを警察に伝えた・事情聴取を終え、家に向かう道中、日美子の中に沸々と怒りが湧いてきた・(何としても私の手で、先生を殺した犯人を見つけてみせる!)・帰宅後に日美子は、照彦のこれまでの発言や、照彦から受けた神話の授業の内容をできるだけ詳細に思い出してみることにした・もしかしたら照彦のこれまでの言動の中に、犯人に繋がる手掛かりが見つかるかもしれない・そうして1週間が過ぎ、夏休みの終わりが近づいてきた・できれば学校の授業が再開される前に犯人を見つけたい・焦る日美子・すると突然、日美子の頭にある仮説が生まれた・事件現場に残されていた烏の羽・照彦が大好きな日本神話のエピソードの中に、神武の東征の話があった・そのエピソードの中で、神武は「八咫烏」という名の三本足の巨大な烏に助けてもらっている・日美子の直感が、この事件は八咫烏と関係していると告げていた・日美子は、八咫烏についてインターネットで検索してみた・日美子はてっきり神話に関する記事が出てくると思ったら、検索にヒットしたのは神話のストーリーとはかけ離れた内容だった・秘密結社「八咫烏」・日本に古来より存在する世界最古の秘密結社・日美子は無意識に身を引いた・そこには、日美子の大嫌いな都市伝説や陰謀論に関する記事が延々と書き綴られていた・こんな秘密結社、存在するわけがない・日美子はそう頭の中で否定した・しかし以前も自分は、照彦の話をまともに聞こうとしないで彼の研究内容を頭ごなしに否定していた・「あなたの意見は間違っている、私の意見は正しい」・これではまるで、かつてナチスが研究していた優生学とやっていることが同じだ・日美子は無意識にそういう思考回路になっていたことを改めて恥じた・照彦との授業を通して日美子は、世の中にはまだ人間には分からないことがたくさんあることにようやく気づいた・この際、今までに培った常識は全て捨てよう・そう考えた日美子は、自分の見解を警察に伝えることにした・この前、事情聴取を担当した警官から教えてもらった連絡先に電話を入れると、事情聴取の時の警官とは別の男性の声が耳に入ってきた・優しそうな年配の男性の声だった・自分の発見を話すと、電話の相手は詳しく話が聞きたいと言い、翌日に警察署で会うことになった・その翌日、言われた時間に警察署に着くように早めに家を出た日美子・しかし家の玄関を出た途端、目の前には謎の男性が仁王立ちしていた・ぱっと見はスーツ姿の若い男性だったが、よく見ると髪は金髪で耳にはピアスを、腕には高そうなロレックスを身につけていた・明らかにチャラ男だった・それも相当プレイボーイの・日美子は警戒した・そしてその男の発言にさらに驚かされた・彼の正体は公安の警官だった・(こんなチャラ男が刑事?)・とても信じられない日美子・それに、公安なんてドラマや漫画の中でしか聞いたことがなかった・公安が一体私に何の用なのか?・まさか、先生の事件と何か関係が?・そのチャラ男は、今すぐ自分についてくるように日美子に告げる・日美子はますます警戒した・もしかしたらこいつは警官のふりをした偽物の可能性がある・「あなたが本物の警官であることを今すぐ証明して!」・日美子は力強い口調でそう要求した・するとチャラ男は、うっかり忘れていたという様子で、自分の名前と所属を告げた・彼の名前は及川天馬・そして彼は、胸ポケットから警察手帳を取り出し、手帳を開いて中の写真を日美子に見せつけた・偽物なら警察手帳の中身を見せたりはしない・どうやらこいつは本物の警官のようだ・しかし、彼の外見を見てどうしてもそれが信じられないでいる日美子・念には念をだ・日美子は警察署に天馬のことについて確認するため、ポケットからスマホを取り出した・その瞬間、天馬は驚くべきスピードで日美子の腕を掴み、日美子が電話をかけるのを阻止した・そして天馬は、さっきまでのダルそうな表情からは一変して、鋭い視線でこう告げた・「やめておけ、敵は警察内部にすでに入り込んでいる」・(は?)・日美子は耳を疑った・これは何かのドッキリか?・しかし天馬の表情は真剣そのものだった・その時、日美子はあることに気づいた・(及川天馬……確か先生の苗字って……)・日美子は目を見開いて天馬を見つめた・「まさかあなたって……」・それに対して天馬は、再びダルそうな表情に戻ってこう告げた・「あぁ、俺は殺された神話学者、及川照彦の一人息子だ」・とても信じられない日美子・あんなに真面目な性格の先生の息子がこんなチャラ男だなんて・「親父を殺した犯人について何か知ってるな?知っていることを全て話せ!だが警察には一切連絡するな」・彼の言葉を黙って聞く日美子・「奴らは警察どころか……この国を支配するほどの巨大な組織かもしれないんだ!」・日美子の頭に、先日調べたあの秘密結社の名前が浮かんだ・「八咫烏……!」

第三話
・天馬は日美子を派手な赤い車体のスポーツカーに乗せて自分のアパートに向かった・その道中で、天馬は事件の捜査の進捗状況について簡単に説明した・天馬によると、警視庁捜査一課は、何者かからの圧力により事件の捜査から手を引いたという・そして代わりに、天馬たち公安警察が事件の捜査を受け継いだ・天馬は日美子に、照彦の遺体発見後に事情聴取を担当した刑事のことを覚えているかと質問してきた・日美子は、自分の事情聴取を担当した優しそうな若い女性刑事の顔を思い出した・すると天馬は、驚くべき事実を告げる・その女性刑事は、数日前に自宅のマンションから飛び降り自殺をしたのだという・日美子の体に寒気が走った・警察はこれを自殺と断定したが、天馬はそうじゃなかった・その女性刑事は天馬の後輩だった・彼女が照彦殺害事件の真相を真剣に追っていたことを天馬はよく知っていた・そんな彼女が、あんな簡単に自殺なんかするはずがない!・天馬は、この事件の裏には何か得体の知れない力が働いていると予感していた・もしかしたら警察も信用できないかもしれない・日美子は、事件について気づいたことを警察に伝えようとしていたが、あのまま警察署に行っていたら一体どうなっていたのだろうか?・その考えを日美子は頭から振り払った・一方で日美子は、天馬が思っていたほどチャラチャラしているふざけた男ではなく、ちゃんと芯の通った真面目な刑事であることに気づいた・そうこうしているうちに、二人が乗る派手なスポーツカーは、天馬の住んでいるアパートに到着した・そのアパートを見て、目が点になる日美子・目の前のアパートは見るからにボロボロで年季の入った風体をしていた・地震が起きたら一気にペシャンコになってしまいそうなほどだ・天馬は平然とした様子で日美子をアパートの中に案内した・中に入ってさらに驚愕する日美子・天馬の部屋の中はアパートの外見に負けないほど汚くて、しかも散らかり放題だった・空になったコンビニ弁当やカップラーメンの入れ物、ボロボロの漫画本、最後に洗ったのが何日前か分からないような服や下着が部屋のあちこちに散乱していた・すると突然、部屋のドアをドンドンと叩く音が響いた・天馬は「またか」と一言言うと、ドアに向かって大声で怒鳴りちらした・「何度も同じこと言わせんな!まとまった金が入ったらちゃんと返してやるよ!!」・日美子はそんな彼を見てドン引きしていた・さっきは少し見直したが、借金取りに追われながら自堕落な生活をしているただのダメ男じゃないか・そんな日美子の気持ちに一切気づいていない天馬は、日美子と照彦の関係について彼女に質問した・日美子は呆れ顔になるのを我慢しながら、照彦との出会いと彼から受けた神話の授業についてありのままのことを天馬に伝えた・その話を表情を一切変えずに聞き続ける天馬・そして、日美子が事件のことで気づいたことについて質問する・日美子は、事件現場で見つけた烏の羽と、日本神話に出てくる八咫烏について簡潔に説明した・八咫烏の話を聞き、天馬の表情がわずかに曇った・驚くべきことに、天馬には神話に関する知識がほぼゼロだった・「神話学者の息子なのに!?」と驚きを隠せない日美子・その言葉を聞き、出会ってから初めて感情を表に出す天馬・天馬と父である照彦は仲が悪かった・天馬は父が神話について研究していることは知っていたが、そんな古代の人間が作った作り話を研究するなんて馬鹿げていると、ずっと照彦を批判してきたという・その話を聞いて、今度は日美子が怒り出した・「先生は世界の神話のストーリーが実話だと証明したかったわけじゃない!古代の人々の神話に対する想いを知りたかっただけよ!」・そう言いながら、日美子は自分の考えがこの夏の間に180度変わっていることに内心驚いた・以前までは、天馬のように神話のような胡散臭い話には全く興味がなかった・しかし照彦と過ごした日々の中で、神話の世界に対して着実に理解を深めていた日美子・そんな日美子には、目の前の天馬が以前の自分と重なって滑稽に見えた・気を取り直した天馬は、日美子にある提案をする・それは、天馬の言うことに黙って従えば、日美子を公安の協力者として、事件の捜査に加わらせてやるというものだった・天馬の上から目線の物言いに不快感を感じた日美子・「自分には神話の知識がないから力を貸してください」となぜ素直に言えないのだろうか?・しかし、事件の捜査に自分も加わりたいと思っていたのもまた事実だった・恩師である照彦を殺害した犯人を捕まえたい・そう思っていた日美子は、天馬の提案に乗ることにした・天馬はしばらく事件についての情報を独自で集め、事件の証人になりそうな人物を探すという・その証人が見つかったら、日美子に改めて連絡し、捜査に協力してもらうと言った・連絡先を交換した日美子は天馬の車で自宅まで送り届けてもらう・家の中に入ると、目の前に母親が立っていた・母に言われて、今日が父の命日だったことを思い出す日美子・日美子は、リビングの隅っこに設置されていた小さな仏壇の前で手を合わせる・そこには父の笑った顔が映った遺影が飾られていた・日美子の脳裏に、突然照彦の顔が浮かぶ・天馬と話していた時は全く感じなかった感情が、日美子の心の中に湧き上がってきた・日美子の目から涙がこぼれ落ちた・いつの間にか照彦は、日美子にとって二人目の父親も同然の存在となっていた・すると、日美子の中に再び怒りが湧いてきた・(必ず犯人を見つけ出してやる!)日美子は改めてそう誓いを立てた・夏休みが終わり、学校が再開した・それからは平凡な日常に再び戻る日美子・天馬からはまだ連絡が来ない・学校の授業を受けていると、夏のあの照彦と過ごした日々がまるで遠い過去のように思えてきた日美子・天馬から連絡がないまま、何日も過ぎていった・次第に日美子は、警察は無事犯人を逮捕し、私の神話に関する知識は必要なくなったのではないかと考えるようになった・きっとそうだ・私のようなただの女子高生が、殺人事件の捜査で役に立つなんて、本来あり得ないことなんだ・そう考えた日美子は、事件のことは忘れて、普段の学校生活に専念することにした・しかしある日家に帰った日美子は、ニュースで流れている事件の報道を見て衝撃を受ける・それは、都内にある小さなオフィスビルが火災に遭い、中にいた従業員が全員死亡したという報道だった・火災に遭ったビルの住所を見て戦慄する日美子・そこは、夏休み中にずっと日美子が通っていた照彦の職場だった・これは偶然起きたことなのだろうか?照彦とその関係者が、こんな短期間で全員命を落とした・照彦の同僚たちの優しい笑顔を思い出す日美子・「そんな………」・突如、日美子のスマホの着信音が鳴り響く・電話に出ると、天馬の声が日美子の耳に入ってきた・「重要参考人を見つけた。お前の力が必要だ」・日美子が天馬と再会したのは、10月に入り紅葉が山を赤く染め始めた頃だった・二人は天馬のスポーツカーに乗り、京都を目指していた・天馬はネットの情報や専門家の知識を片っ端から集め、京都の下鴨神社に5万円支払えば八咫烏の秘密が聞けるという情報に辿り着いたという・日美子にはそんな話はとても信じられなかったが、今はそんなことを言っている場合ではない・事件の犯人を捕まえられる可能性がわずかでもあるなら、その可能性にすがるだけだ・天馬は、照彦のオフィスが火災に遭ったことも知っていた・天馬の知る限り、火災が何者かによる放火であると示す証拠は現場からは見つかっていない・しかしそれも、警察組織の誰かが隠蔽している可能性がある・いや、もしかしたら事件の黒幕は、警察よりもさらに上の存在かもしれない・日美子は照彦が主張する学説が、日本の歴史のタブーに触れる内容ではないかと予感したことを思い出す・「世界の神話の共通点に関する秘密を解けば、人類の真の歴史が明かされる」・照彦はそう主張していた・もしかしたらこの一連の事件は、世界の神話の秘密を隠し通したいと思う連中が起こしたものかもしれない・日美子は何となくそう推測した・その後、二人は京都の下鴨神社に到着する・神社での立ち振る舞いに困っていた天馬に対し、とりあえず境内で参拝を済ませてから社務所に向かおうと提案する日美子・境内に入ると、そこは紅葉によって景色全体が赤く染まり、とても厳かな空気が流れていた・平日の昼間だったため、参拝客は少なかった・拝殿の前で参拝する日美子と天馬・天馬は、下鴨神社の御祭神について日美子に質問する・日美子は京都に発つ前に、事前に下鴨神社についてネットで調べておいた・確か東本殿では神武天皇の母親タマヨリヒメを、西本殿では東征の際に神武天皇を助けたカモタケツノミノミコトという神様を祀っていたはずだ・すると日美子の頭の中に一つの疑問が生まれた・確か東征の際に神武天皇を助けたのは八咫烏のはずだ・つまりカモタケツノミノミコトと八咫烏は同一の存在?・(いや、待てよ……下鴨神社創建に関わったのは賀茂氏という古代の豪族。賀茂氏……カノタケツノミノミコト……秘密結社「八咫烏」……)・「まさか……!」・日美子がそう叫んだ直後、背後から一人の男性が二人に声をかけてきた・二人の目の前には、白装束に身を包む神職らしき男が立っていた・その神職は、二人に会ってほしい人物がいると言う・「探す手間が省けたな」・天馬はそう呟いて男の後をついていった・しかし日美子の足は動こうとしなかった・もしこの神社が本当に八咫烏とかいう秘密結社の本拠地なら、自分たちはいきなり敵のボスと垣間見えることになる・日美子の心の中に、わずかに恐怖心が生まれていた・天馬は照彦の息子で公安の刑事だが、本当に彼を信頼してもいいのだろうか?・もし天馬の手に負えない相手だったら、自分の命も危なくなる・ここには武器を所持した警官は他にはいない・すると日美子の気持ちを察したのか、天馬が振り返ってこう告げた・「俺は武道も剣術も格闘術も警察学校ではトップの成績だった。俺を信じろ。親父の仇は俺が必ず取ってやる!」・その言葉を聞いた日美子はようやく覚悟を決め、神職の後を追った・神職に連れられた二人は、西本殿の中にある内陣に招かれた・そこは普通の参拝客は決して入ることが許されない神社で最も神聖な領域のはず・なぜこんなところに招かれたのか不思議でならない日美子・すると日美子は、内陣の中心にある祭壇の前に誰かが座っていることに気づく・「父親とは全く似ても似つきませんな……久しぶりですね……天馬君」・そう言って振り向いた謎の人物の顔を見て、日美子は顔をしかめた・その人物は、狐のお面を顔につけて素顔を隠していた・天馬は「俺のことを知っているのか?」と驚いた表情で質問する・「あなたの父親と私は古い友人でね。彼があんなことになって本当に残念です」・悲しげにそう告げるお面の男に対し、日美子は意を決したように質問する・「あなた……秘密結社「八咫烏」って知ってる?」・するとお面の男はこう告げた・「照彦氏が神話について研究していたことはもちろん知っていますよ。しかし例の羽に関しては八咫烏とは何の関係もないかと」・その言葉を聞いて戦慄する天馬・「事件現場に烏の羽があったことはまだメディアに公表していない……お前、何者だ!?」・日美子の顔に冷や汗が流れ落ちる・「少しカマをかけただけですよ。やはりあなた方は何も知らないようだ……この国の秘密について」・何のことを言っているのかさっぱり理解できないでいる天馬だったが、日美子にとってはその発言だけで十分だった・「あなたが……あなたが先生を殺したのね!!?」・するとお面の男はこう告げた・「私ではなく、私たちですよ。照彦氏は真実に近づきすぎた。だから消されたんですよ。日本に存在する三人の烏によってね」・困惑する天馬・一方、日美子の顔は怒りで大きく歪んでいた・お面の男は二人に拳銃の銃口を向けた・「さぁ……あなた方にもここで消えてもらいましょう」

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