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#映画感想文231『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023)

映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(原題:The Super Mario Bros. Movie)』(2023)を映画館で観てきた。

監督はアーロン・ホーバスとマイケル・ジェレニック、脚本はマシュー・フォーゲル、イルミネーションと任天堂の共同製作の作品。

2023年製作、94分、アメリカ・日本合作。

ちなみに批評家の評価はすこぶる低く、観客は満足しているようである。(Rotten Tomatoesでご確認ください)

わたしは公開初日である4月28日の金曜日の夜に観に行った。2日前に予約したときは、席の1割も埋まっていなくて、すわオオコケかと心配したが、当日は8割方は埋まっていて、親子連れも多く、館内にわくわくした雰囲気が漂っており、とてもよかった。吹替版を観たが、字幕版も観に行きたいと思っている。(キノピオを演じたキーガン=マイケル・キーの芸達者ぶりに感動してしまったので、是非とも観たいのだ)

本作は全世界のノスタルジーを搔き立てる作品であり、映画単体で評価することなど不可能だ。懐かしさに付け込んできて、ある人は孤独な子ども時代を思い出して涙したりしているのだから、映画館に行く前からすでに結構満足しちゃってる映画だと思う。単なる「ファンムービー」だという批評家は正しい。というか、ファンムービーじゃないマリオの映画なんて誰が観たいのだろう。(マリオが碇シンジくんみたいに「逃げちゃだめだ」とか言い始めても困るよ)

ただ、肉付けされたエピソードが気にならないといったら噓になる。マリオは会社を辞めて、ルイージと一緒に配管修理の会社を起業する。そのことを前職の上司になじられたり、家に帰るとお父さんに「せっかく入れた会社を辞めて自分で会社を作るなんて馬鹿なことをしたな。そのうえ弟を巻き込むなんて。おまえにはどうせできないよ」みたいなモラハラを受ける。自己肯定感を削られまくるマリオは見たくなかった。イタリア系の大家族なのだが、2018年公開作品の『グリーンブック』の家族のような感じ。差別的なことをポロッと言ってしまうような、危うさがある。(マリオはお父さんに認められたいという気持ちを抱えており、若干碇シンジくんっぽいところはある)

父親のモラハラに意気消沈したマリオがテレビを見ていると、地元ブルックリンの街で、水道管破裂の事故のニュースを目にする。自分たちの出番だと現場に駆け付け、マンホールの蓋をあけ、下水道に入ると、土管があるではないか。その土管が、あちらの世界に繋がっていたのである。土管だけで、もう感動しちゃったよ。(村上春樹の世界だって井戸と満州が繋がっている)

土管に入ると、マリオはピーチ姫がいるキノコ王国へ、ルイージはクッパのいる世界へ飛ばされてしまう。クッパは無敵になるスターを手に入れ、ピーチ姫との結婚を目論み、それがご破算になればキノコ王国を侵略するという計画を立てている。ルイージは囚人として監獄に入れられてしまう。

マリオはルイージを救うため、ピーチ姫は自分の国を守るため、ドンキーコングに協力を要請に行く。それが最初のミッションだ。「あれ、マリオってピーチ姫がクッパにさらわれるゲームじゃなかったっけ?」というあなた、正解。

本作のピーチ姫は、ナウシカばりに大活躍する姫様だ。(運動神経の良さもナウシカに負けていない。)市民であるキノピオたちは「わたしたちはかわいいんだから、戦えません。戦うなんて、とんでもない。姫はわたしたちのかわいさを守るために頑張ってください」とピーチ姫に国防を丸投げするのである。協力してくれるキノピオが一人だけいて、その子だけがピーチ姫のそばにいて、マリオに案内などをしてくれる。

しかし、かわいいことを理由に戦わないキノピオのかわいさにわたしはメロメロである。ユニクロのUTも買おうかと思っていたのだが、バックプリントだったので、買うのをやめた。わたしの目に入らないんじゃ、意味ないじゃん。

「ポリ○レに屈しなかった日本の作品が大ヒット!」みたいな、ウ○っぽい書き込みもSNSに散見されるのだが、か弱いはずのピーチ姫(主体性がなく単なるお飾りだったはずの彼女)が八面六臂の活躍をして、マリオが戦線から離脱しても、情を見せることもなく自分の役割を優先させ、国の長として戦うところなんて、女性の社会進出を思わせるもので、政治的にものすごく正しいのだが、彼らは一体何を観てきたのだろう。

ただ、アメリカ版のキャストが、イタリア系でないことは確かに少し違和感を覚える。だってイタリア系アメリカ人ってめちゃくちゃいるじゃん。マリオをディカプリオ、モラハラのお父さんをデニーロがやるとか。でも、二人ともスタッフの指示を聞かなさそうだし、ギャラも高いから面倒だったのではないだろうか。

クリス・プラットのマリオは、クリス・プラット過ぎると批判されているが、あの人、プロモーションも滅茶苦茶やってくれているし、多分、一緒に働きやすい人なんだろう。結局、頼みやすい人のところに仕事って集まるのよね。

アトラクションムービーで、常に画面が動いていて、情報量がとても多かった。マリオとピーチ姫の関係も、恋愛っぽくならなくてよかったし、マリオが何度も立ち上がり、あきらめないで戦う人として描かれていてよかった。

そして、ゲーム内のドーピング的なアイテムを活用しまくって、マリオはちゃんとクッパを退治する。我々が子どもの頃から、ゲーム内でやってきたことではないか。

あと『マリオカート』のレインボーロードも出てくるのだが、キノピオが乗っている車や、マリオが車を奪うところが『マッドマックス 怒りのデスロード』っぽくってよかった。

音楽については、この記事に詳しく書かれている。

エンディングで「SATORU IWATA」と出てきたところで、わたしは泣いちゃった。仲間だと思える人たちと同じ会社で働き続けられるって、本当に素晴らしい。(宮本さんと岩田さんの任天堂物語も映画化してほしい)

エンドロールで子どもたちがノリノリで踊っていたから、子どもも楽しめたのだろう。そして、最後にあの緑の恐竜の卵も出てきたから、続編もあるのではないだろうか。

やっぱり、ファンムービーなので、「この赤いおじさんと緑のおじさん、誰?」って人には、おすすめできない。

わたしは幼少時より、任天堂に洗脳(毒)されているファンなので、大満足だった。

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