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映画『精神0』(2020)の感想

想田和弘監督の『精神0』を見てきた。

想田監督の映画は『選挙』を見ねば、とずっと思っている。先日、『精神0』が公開中であることに気が付き、タイミングがよかったので、7月某日見に行ってきた。

観察映画というだけあって、演出的なBGMもない。

情報量が少ないからなのか、映画を見つつ、自分の気持ちの動きを観察する余白が生まれる。

山本昌知先生が想田監督を家に招き、アクエリアスをコップに注いだり、茶菓子の準備をする場面があるのだが、そこで私は、その手際の悪さにひどくイライラしていた。なんと、段取りの悪いことか、と。想田監督は、山本先生の厚意をただ映しているだけなのだが、そこで私は「老い」をまったく理解できていない自分に気が付く。

また、山本先生は診療の際、ひたすら患者の話を聞く。聞いて、ただ受け止める。そして、否定することも解釈することもなく、返答をする。それができる人は少ないと思う。私には到底できない芸当である。私は「あなたの言いたいことはつまり〜」とやってしまっている。山本先生の姿勢や佇まいを見ていると、自分がひどく下世話な人間に思えてくる。

終盤は、足元が不安定な老夫婦の墓参りで、十分にスリリングであった。山本先生の息づかいを聞きながら、映画が終わる。

夫婦愛の映画というより、私にとっては「老い」が主題のように感じられた。いずれ、私にもやってくるのだが、まだリアリティはない。ただ、気になるということは、加齢を気にしているのだと思う。焦るばかりでなく、余裕が持てるようになりたい、とつくづく思った。

チップをいただけたら、さらに頑張れそうな気がします(笑)とはいえ、読んでいただけるだけで、ありがたいです。またのご来店をお待ちしております!