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#映画感想文270『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』(2019)

映画『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男(原題:QT8: The First Eight)』を映画館で観てきた。

監督はタラ・ウッド、出演はサミュエル・L・ジャクソン、ジェイミー・フォックス、ダイアン・クルーガー。

2019年製作、101分、アメリカ映画。

正直に告白すると、わたしはタランティーノの作品を一作もきちんと見たことがない。暴力的で血まみれの、チンピラ不良映画だろうと思っていたし、今も思っている。一時期はカルト的に人気があり、崇拝もされていた人なので、勉強として観に行った。

三部構成でタランティーノの初期三作品、中期、後期の作品が俳優やスタッフにより、解説されていく。ファンにしてみれば垂涎ものの作品解説なのかもしれない。証言と映画のシーン、メイキング映像、一部はアニメで再現され、テンポよく進んでいく。

ただ、ミラマックスのワインスタインとの蜜月の25年があり、タランティーノはワインスタインがやっていたことを知らなかったと主張している声明が引用され、このドキュメンタリー映画は終わる。

監督がタランティーノを擁護しようとしているのか、おためごかしを言うなとを非難しているのかが、いまいちよくわからない。どちらにも解釈できるように作られていて、監督もまあちょっと及び腰。そんなら、その話題は出さなければいいのにと思ってしまった。そして、ユマ・サーマンの不在はあまりにも強烈だ。タランティーノ映画におけるミューズ、中心人物がいないのは、あまりにも不自然で、その穴はどうにも埋まらない。

サミュエル・L・ジャクソンとジェイミー・フォックスがタランティーノの盛り立て役をさせられてしまっているのも、ちょっと切ない。

もちろん、レンタルビデオショップで働いていた映画オタクが、スター監督になった事実には夢がある。しかし、ワインスタインがやっていたことを知らなくて自分も傷ついているなんてコメントは、ダサすぎやしないかとも思うのだ。

巨漢で権力と金を持ったワインスタインがみんな怖かった。でも、勇気をもって告発する女性たちが現れた。本当に知らなかったのか、見てみぬふりをしたのか、傍観者だったのか。ただ、ワインスタインの存在抜きにして、タランティーノ作品の成功を語ることもできなかったのだろう。

本作の監督のタラ・ウッドは馬鹿ではないけれども賢くもないし、真摯でもない。ただ、黙って見過ごして、タランティーノを神格化させることもできなかったのだろう。歯切れの悪さ、それが本作の一番の見所であるような気がしている。

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