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山田智恵(2021)『新版 ミーニング・ノート』の読書感想文

山田智恵著『新版 ミーニング・ノート 1日3つ、チャンスを書くと進む道が見えてくる』を読んだ。2021年に金風舎より出版された本である。

わたしは、人間がどうすれば幸福になれるのか、といった本などはわりとよく読むので、「その日にあったいいことを3つ書きましょう」という日記の存在は以前から知っていた。

著者の山田さんは、それをさらに展開させて、チャンスを3つに大別している。

キラキラ・チャンス ポジティブなチャンス
わらしべ・チャンス 日常のチャンス
スパイシーチャンス ネガティブなチャンス
『新版 ミーニングノート』p.69

確かに「よかったこと」しかメモを取らないでいると大事なことを見逃してしまうかもしれない。だから、著者のように出来事のすべてをチャンスとして捉える、という考え方には、「なるほど!」と膝を打った。

彼女は、大きな会社の社長のお嬢様で贅沢三昧でコネ入社をした。ところが、ある日、会社の経営が傾き、社内で内紛が起き、一族全員が会社から追放されてしまう。豪邸から、小さなアパートに引っ越す羽目に陥る。これだけでも神話やお伽話のようだ。彼女は、一度地獄に落ち、這い上がった。その過程で、してきたことがこの『ミーニング・ノート』なのだという。

わたしも、運悪く失業することになり、混乱する頭を整理したいと、藁にもすがる思いで、この本を読んだ。普段、自己啓発本は読まないのだけれど、何としても、糸口が欲しかった。

一読して思ったことは、自分で自分の人生に意味付けをしていくことの重要性である。

わたしたちは、忙しくても暇でも、良くも悪くも、日々をこなしてしまう。一日一日を振り返らずとも、日々は容赦なく過ぎていく。その流れを止め、立ち止まり、振り返り、自分の一日の出来事に意味付けをしていく。それは自分の行動を可視化することを意味し、次の行動を自分で認識しやすくなる。自分の書いたことから、関連性を探し、次の行動を見つけるまでがタスクなのである。

その日の心の動き、些細な出来事を翌日まで明瞭に覚えていられる人は、それほど多くないだろう。著者は、ノートを常時携帯し、その場でメモをすることを推奨している。SNSではなく、個人のノートに書いたほうがいい、と言っている。それはわかる。おそらく、知り合いの親切とかをちゃんと書いていたら、個人が特定されるうえに個人情報が駄々洩れになってしまうだろうから。

というわけで、わたしも『ミーニング・ノート』を始めてみた。ちょうど1カ月が経過したところで、24日分書いてあった。おやおや、6日はサボっている。

やはり、「立ち止まって考える」ということを習慣化するまでが勝負なのだろう。

この『ミーニング・ノート』の厳しさは「チャンスを見つけられるかどうかはあなたの観察力次第」というところにある。自分の身に起きたことを流さずに、その出来事に感謝したり、反省したりして、次の行動に繋げなければならない。非常に主体的で、また自分の人生を軽んじない、ということがポイントになる。自己決定権を信じる、という側面もある。

ともすると、わたしたちは、自分を過小評価し、蔑ろにしてしまいがちだ。取るに足らない日常の中に潜んでいる喜びや悲しみ、苛立ちをいともたやすく忘れてしまう。

著者は、個人の実力ではなく、「運」によって、人生は左右されるのだとあとがきで述べている。そう言えてしまうことが著者の強みでもある。生存者バイアスの罠に陥っていない。

新自由主義的な自己責任論から、わたしたちを解放してくれる。わたしたちは、日々のチャンスを探しながら生き、時にはチャンスを掴み、時にはチャンスを逃す。チャンスを掴めなかったのは、準備不足だったから、能力が足りなかったからだと落ち込むより、「運がなかった」と潔くあきらめるほうが健全だし、前に進むときも心持ちが楽になる。もっと軽やかに生きていける。

なんでもない日を尊ぶことの大事さもわかる。でも、もしかしたら、「なんでもない日にも、いろいろあるから、見逃すなよ」と注意を払うことで、毎日の密度が上がっていくのかもしれない。

ちなみに、わたしの『ミーニング・ノート』は、基本わらしべ・チャンスで構成されている。(横にWと書いている。)

追記。著者からコメントをいただけました。ありがたや。

著者の山田智恵さんのnoteはこちらです。



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