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映画『否定と肯定』(2016)の感想

映画『否定と肯定』を観た。

監督はミック・ジャクソン、脚本はデビッド・ヘア、主演はレイチェル・ワイズ、110分、イギリス・アメリカ合作、2016年製作だ。

原題は『Denial(否定)』なので、日本公開当時は、原題の意味を薄めるようなことをなぜするのか、ということで少し問題になっていたと記憶している。

この映画は端的に言えば「歴史修正主義者」といかに戦わないか、といったものである。専門家は決して同じ土俵に上がってはいけない。

ホロコーストは存在しなかった、という荒唐無稽な主義・主張は嘲笑されるどころか、熱狂的に支持されたりする現実がある。

そして、これは他人事ではない。歴史修正主義はインターネット上にあふれている。反知性主義者が跋扈する。学術書、専門書を一冊も読まず、ネットの与太話をソースに話がどんどん展開していく。これは恐ろしいが、どこの国でも、誰にでも起こり得ることだ。

謙虚に体系的に学ぶこと。入門書の選び方、専門家は誰なのか。そういったことを含めた勉強のやり方の勉強が必要なのだと思う。知性や知識は、自然と育まれるものではなく、意識的に、意図的に、育てなければならない。それがなければ、消えてしまう人々が出てきてしまう。存在が消失するのは、自分である可能性も、ゼロではない。

ただ、教養というものが、今は何が何だか全然わからない。インテリジェンスも、信用ならない、きな臭いものを感じたりする。まあ、それをことさらに強調し始めたら、歴史修正主義者のはじまりなのかもしれない。


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