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#映画感想文302『ダム・マネー ウォール街を狙え!』(2023)

映画『ダム・マネー ウォール街を狙え!(原題:Dumb Money)』(2023)を映画館で観てきた。

監督はクレイグ・ギレスピー、脚本はローレン・シューカー・ブラムとレベッカ・アンジェロ、出演はポール・ダノ、ピート・デビッドソン、アメリカ・フェレーラ、アンソニー・ラモス、セス・ローゲン。

2023年製作、105分、アメリカ映画。

タイトルのダムマネーの意味は、「愚かな投資」を意味する。機関投資家が個人投資家を馬鹿にする表現なのだという。さすが、投資の国、アメリカである。一般的に愚かな投資は、強欲なウォール街に吸い取られてしまう。

キース・ギル(ポール・ダノ)は、コロナ禍のアメリカで「ゲームストップというゲーム販売店に投資しよう」とSNSで呼びかける。彼の主張はいたってシンプルなもので「個人投資家が価値ある企業に投資をする。ウォール街の意向なんて関係ない」と言う。ハンドルネームは、ローリングキティ。

ローリングキティは、店舗で売られているゲームの市場は大きく、それと同時に中古市場も大きい。ダウンロードしている消費者ばかりではない。ゲーム店でゲームを購入する楽しみを失ってはいけない、と考えている。しかも、コロナ禍では接触が悪であったから、ダウンロード販売に勢いがあり、実店舗が潰れてしまうおそれがあった。ゲームストップのピンチに立ち上がったのがローリングキティなのだ。そして、ウォール街の投資家に挑戦を企てる。

ローリングキティが大学を卒業したのは、リーマンショックの直後で、ろくな就職口がなく、彼は四年間投資を一人で学び、その後、小さな投資会社にやっと就職することができる。

投資宣教師であるローリングキティに導かれ、エッセンシャルワーカーの看護師、ゲームストップの店員、投資家の空売りが原因で父親の借金を背負ってしまった大学生が、少額ながらも、ゲームストップの株を買い始めると、株価はどんどん上がっていく。個人投資家を馬鹿にしていたメルヴィンは空売りを仕掛けるが、株価はどんどん上がっていくので、損失が加速度的に増えていく。投資会社社長のメルヴィンは毎日の損失に青ざめ、ほかの投資家たちに泣きつく。

そのうえ、ウォール街は狡猾な手を使い、レディットのローリングキティの掲示板を見られなくして、動画配信ができなくなったりもする。個人投資家のアプリをダウンさせたりして株を買わせないようにしたりする。そこまでやるか、という感じ。

そのことが大問題となり、政府の公聴会まで開かれることになる。実際のAOC(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス)の映像も使われており、現実の出来事なのだとあらためて理解できる。

実際のローリング・キティは、こんな感じの人。現在はオンライン上での活動はやめているらしい。

キースはローリング・キティの活動がバレて、会社から電話がかかってくる。奥さんが電話の内容を問いただすと、「辞職か解雇か選べって言われた」と静かに語る彼は、やはり大物だと思う。

また、ローリング・キティは、コロナによって姉を失っており、そのことで家族のメンタルはまいっている。マスクをつけなさい、と注意するシーンが何度も出てくる。そのような描写もあり、つい数年前のことがつぶさに描かれている映画でもあった。

公式には投資用語のキーワード集もあるのだが、これが頭の芯から理解できている人は、わたしの数十倍、楽しめただろうと思う。

ただ、アダム・マッケイの『マネー・ショート』よりは、全然わかりやすかったと思う。『マネー・ショート』は好きで何度も観ているのだが、まだよくわからない。

本作は、ポール・ダノとセス・ローゲンが出演している。同じシーンで登場することはないのだが、『フェイブルマンズ』の二人が出ているとちょっと嬉しくなった。しかし、セス・ローゲンって本当はかっこいいのに、毎度、かっこよくない感じに戻すのは、なぜなのだろう。

チップをいただけたら、さらに頑張れそうな気がします(笑)とはいえ、読んでいただけるだけで、ありがたいです。またのご来店をお待ちしております!