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#映画感想文191『ザ・メニュー』(2022)

映画『ザ・メニュー(The Menu)』を映画館で観てきた。

監督はマーク・マイロッド、脚本はセス・リース、ウィル・トレイシー、製作にアダム・マッケイ、主演はレイフ・ファインズ、アニヤ・テイラー=ジョイである。

2022年製作、107分のアメリカ映画である。

孤島にある高級レストランに招待された面々は、いけ好かない感じの奴ばかり。レストランのスタッフもどこか不気味で…、というところから物語はスタートする。

この映画を観た理由は、プロデューサーがアダム・マッケイだったからである。アダム・マッケイは『ドント・ルック・アップ』で、気候変動に何もしない政府や世界に怒っている。『マネー・ショート』では、サブプライムローンでリーマンショックを引き起こし、世界恐慌を招いたにも関わらず、救済されたゴールドマンサックスなどに激怒していた。彼の創作の動機付けには、常に「怒り」と「嫌悪感」が漂っている。アダム・マッケイは、今、何に対して怒りを感じているのだろう、という興味があった。

今回の怒りは、資本家、資本主義、市場原理主義者に対する怒りであったように思う。賃金を得るために労働力を差し出さなければならない人々には雇用主がいる。雇用主である資本家は賃金を与えることで労働者を搾取することができる。

「おまえは、giverなのか、takerなのか」とシェフがマーゴに問うシーンがある。わたしたちは与えたり、奪ったりすることを当然のことのように思っているが、別にそれは自然なことではないのかもしれない。

本作では、奪われる側(搾取される労働者側)が、奪う側(搾取する資本家)に一矢報いる、というのが趣旨であったのだと思うのだが、結局、死なば諸共で、誰も救われなかった。

本来的には部外者であったマーゴは逃げて、海上でチーズバーガーを貪り食うのだが、生きるとは食べることなのだ。生きる人間は食べなければならない。味わう(taste)のではなく、食べる(eat)のだ。

レイフ・ファインズ演じるシェフが「緊張」と「緩和」を繰り返すことで、客の側もしまいには洗脳され、動けなくなってしまう。そこも、まあ、怖いところである。この映画のジャンルは「ホラー/コメディ」とある。「恐怖」と「笑い」は常に表裏一体なのだ。

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