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映画『エターナルズ』(2021)の感想

映画『エターナルズ』を映画館で観てきた。マーベルのファンではないのだが、監督がクロエ・ジャオなので、どうしても観ておきたかった。

いやはや、素晴らしかった。

構成としては、『エターナルズ』とは何者なのか、という話から始まり、これまでの『エターナルズ』の経緯が語られ、一度解散し、再集合、そんで、あれ? 裏切者がいる! となり、最後の戦いがあり、大団円となる。

この映画の主人公であるセルシは、ジェンマ・チャン(中国系イギリス人)の女性である。現代のロンドンが、冒頭では舞台になっている。

この段階で、いわゆるマッチョなヒーローものでないことがわかる。

こんな感じなのだが、興味深い人物設定も多かった。

以下、雑感

・主人公のセルシは、物質を変えられる能力を持っている。いわゆる、パワー系の攻撃力を持っていない。彼女は控えめで一歩引いてしまうところがある。女性がリーダーになることの難しさ、リーダーとしてふるまうことへのためらいがある。しかし、周りの協力を仰ぎながら、目標を達成していく。おそらく、アメリカで映画を撮るときに、クロエ・ジャオ自身がアジア人の女性監督としてチームをまとめていく過程で感じていた戸惑いなどが反映されているのではないだろうか。

・セナ(アンジェリーナ・ジョリー)は、ある種の精神疾患を患っている。そのケアとサポートをするのが、ギルガメッシュ(マ・ドンソク)だ。アンジェリーナ・ジョリーは、もちろん、主演のできる女優ではあるがキャリアのピークではない。だからこそ、できた役柄だと思われる。そして、アンジェリーナ・ジョリーはパワー系の戦士である。しかし、そのパワー(攻撃)が仲間に向けられてしまうこともある。もし、彼女が主演だったら、パワーで闘う女性の主人公の映画になったかもしれない。しかし、本作では強い女であることがそれほど強調して描かれることはない。これも時代の流れ、という感じがする。そして、マ・ドンソクのような肉体的にはマッチョな男性がサポートにまわり、弱っている女性のケアをする。母性的なふるまいをするのも、監督の意図を感じる。

・マインドコントロールの力を持っているドルイグは、バリー・コーガンが演じているのだが、もう絶対『聖なる鹿殺し』からインスピレーションを受けていると思う。『聖なる鹿殺し』で、彼は他人に介入はさせず、他者をコントールする少年を演じていて超不気味なのだが、そのキャラクターと地続きだと思えば、特に違和感はなかった。

・イカリス(リチャード・マッデン)は白人男性でパワーを持っており、リーダーとして前に出ようとする。それをエイジャック(サルマ・ハエック)に「あんたの意見は聞いていない」とばっさりやられる。メキシコ系の女性であるサルマ・ハエックが諫めるのも、また時代、そしてアメリカの転換期であることを思わせる。

・『FF Ⅶ』みたいな溶鉱炉が出てきたなと思っていたら、脚本家の一人であるカズ・フィルポが影響されたと言っているので、FF風溶鉱炉といっても間違いないと思う。

Newsweekには、「最初から「失敗」が決まっていたクロエ・ジャオ監督のマーベル映画『エターナルズ』」なんて記事もある。

パワーゲームやドンパチの戦いがメインではないので、不満な人々は多いようだが、わたしはいろんな人たちが、それぞれの能力を生かして、協力して仕事をする様子は、見ていてとても気持ちよかった。競争や相手を屈服させることに重点を置いていないのだ。

北村紗衣さんは「戦う相手は“有害な男性性”? マーベル映画『エターナルズ』を、現代のリアルな人間ドラマとして読み解く」という記事を書かれている。見るか見ないかを決めかねている人にとっては参考になると思う。

『エターナルズ2』も、クロエ・ジャオが監督だったら、必ず行く。

あと、英語がほぼネイティブでないとハリウッドでは活躍できないのだなと改めて思った。

しかし、サルマ・ハエックはスペイン語訛りが残っていても、キャラクターで押し通せてしまっているので、ネイティブ並みであることは絶対条件ではないのかもしれない。やはり、大事なのはチャンスを掴み、その仕事を続けることなのかもしれない。

チップをいただけたら、さらに頑張れそうな気がします(笑)とはいえ、読んでいただけるだけで、ありがたいです。またのご来店をお待ちしております!