映画『ウルフウォーカー WolfWalkers』(2020)の感想

トム・ムーア監督のアニメーション映画『ウルフウォーカー WolfWalkers』(2020)を映画館で観てきた。製作は、アイルランド、ルクセンブルグ、フランスで、言語は英語である。私は日本語吹き替え版を観た。

1650年のアイルランドのキルケニーという町が舞台である。主人公のロビンは、父親のオオカミ退治の仕事の都合で、イングランドから、アイルランドに移住したところから物語が始まる。

イギリス人であるロビンと父親は、アイルランド人にとっては、外部の人間であり、支配者であり、そもそも歓迎されていない。ちょうど清教徒革命の時期にあたる。

プロテスタントの人々は経済合理性、つまり資本主義と相性がよく、カトリックは合理性はなくとも道徳的であると、私はざっくりと理解している。

支配者、文明側、経済合理性を優先させるイギリス人と自然崇拝的な要素を持つカトリック教徒であるアイルランド人を対比的に描くという狙いもあったのだと思われる。

キルケニーの町の壁の向こう側には森があり、オオカミたちが住んでいる。ときに家畜である羊が襲われたり、町にオオカミが下りてくることもあり、人間側は脅えており、民衆のオオカミを退治しようという機運が高まっている。

ただ、アイルランド人の羊飼いは、オオカミに困っているが、絶滅させようとか、駆逐しようとか、そこまでの気迫はない。彼らは、自然と共生する側の人間として描かれている。

父親と一緒にオオカミ退治をしようと意気揚々とロビンは、オオカミの森に入っていく。そこで、ウルフウォーカーであるメーヴと出会う。

文明と自然の対立から、友情が生まれ…、とここまで読んで、どこかで聞いたことがあるような話だと思われた方、正解! ヨーロッパ版の『もののけ姫』で間違いない。

女の子同士の友情、母子のきずな、という要素が、今日的な印象を与えるが、アシタカが出てきてもおかしくないと思ってしまった。

アニメーションとしての美しさ、楽しさも十二分に堪能できる。親子で楽しめる映画なので、ご家族での観賞をおすすめしたい。

ただ、結末はちょいと雑だったなと思う。

あと序盤で、マリーン(鳥)に謝れよ! とつっこんでしまった。


チップをいただけたら、さらに頑張れそうな気がします(笑)とはいえ、読んでいただけるだけで、ありがたいです。またのご来店をお待ちしております!