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映画『ホモ・サピエンスの涙 About Endlessness』(2019)の感想

ロイ・アンダーソン監督・脚本の『ホモ・サピエンスの涙 原題:About Endlessness』の映画館で観てきた。スウェーデン、ドイツ、ノルウェーの合作で、第76回ヴェネツィア国際映画祭の監督は銀獅子賞を獲得したそうな。76分で、短めの作品だった。

この映画は、『異端の鳥』とは、別バージョンの人類の行いやふるまいが描かれている。

私たちは、ときにぶっきらぼうになり、ときにぼんやりしたり、喧嘩腰になったり、泣きわめいたり、途方に暮れたり、悔恨に苦しんだり、突然の雨に降られたり、人気のない道で立ち往生したりする。

その瞬間は必ずしも楽しめるものではない。それは、ただそこに存在する。

この映画はどこから観ても問題がない。時間感覚が狂うような不思議な感覚に襲われた。ハリウッド映画には三幕構成という脚本の書き方があり、観客である私はそれに慣れきっているため、今どのあたりなんだろう、と浮遊しているような感覚があった。画面は、終始青白い。

「ただ、時だけが過ぎて、何も成し遂げていない」

という中年男性の言葉は刺さった。ただ、生きるだけでも大変なのだが、何かはっきりとした手触りのあるものを残したいという欲望が人間にはある。

近頃、過去の他人の悪意がフラッシュバックして、憂鬱に襲われることがある。しかし、それと同時に、無償の優しさをくれた人の横顔を思い出して、涙がにじむこともある。人生を肯定するには至らないのだが、愛をもらえたことは忘れないようにしたいと思う。

(あと、全然関係ないのだが、スウェーデン語って、こんなに英語に似ているのかと驚いた。ドイツ人もスウェーデン人も英語ができるのなんて当たり前だ。自慢するなよ、アジア人を馬鹿にすんなよ、と思った)

チップをいただけたら、さらに頑張れそうな気がします(笑)とはいえ、読んでいただけるだけで、ありがたいです。またのご来店をお待ちしております!