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#映画感想文185『警官の血』(2022)

映画『警官の血(原題:The Policeman’s Lineage)』を映画館で観てきた。

監督はイ・ギュマン、主演はチョ・ジヌン、チェ・ウシク。2022年製作、119分の韓国映画である。原作は2007年に出版された佐々木譲の同名小説だという。

主人公のチェ・ミンジェ(チェ・ウシク)は、気弱でなよっとしているが、無意味な暴力などを嫌う警察官である。冒頭から、彼はちょっと頼りないが信頼に値する主人公として登場する。同僚は彼の正直さを認めてくれているわけではない。「自分だけが正しいのか」と周囲の反応はそっけない。「部署にいられると迷惑だから外で時間を潰してきてね」とたびたび言われ、社内ニート寸前である。

そんな職場に居場所のない彼は、ある任務を依頼される。違法捜査を行い、私腹を肥やしている敏腕刑事のパク・ガンユンの内偵調査である。はじめは断ろうとしたものの、この任務を遂行できれば、殉職した父親の内部資料を見せてやると言われ、彼は承諾する。

パク・ガンユンの班に配属されたチェ・ミンジェは、彼の右腕となり、彼の一挙手一投足を観察していく。パク・ガンユンは何とチェ・ミンジェの父親の部下であったことも明らかになる。パク・ガンユンがチェ・ミンジェには心を許してしまうだろう、という本部の目論見もあったのだ。

と、こんな感じで、スパイものなので、ドキドキわくわくする。パク・ガンユンは、「同僚の揚げ足取りをする官僚になるのか。事件を解決する警官になるのか」とチェ・ミンジェに揺さぶりをかけたりもする。

ただ、正直なことを言うと、韓国のおじさんが多すぎて、見分けがつかなくなったりする。登場人物が多くて「キムさんって何した人だっけ?」みたいなことにもなった。

あと効果音でシーンを盛り上げる手法が多用されており、段々観ているこちらが音に慣れてしまい、驚かなくなってしまった。

警察組織の闇が好きな人は心躍るのではないか。

あと、年を取ると、若いアイドルの顔の見分けがつかなくなると言ったりするが、おじさんたちの顔の見分けもつかなくなることを実感した。

見渡す限りのおじさん。それも韓国の警察組織、男社会の実態なのだろう。

原作のあらすじを読むと、全然違うストーリーのようなのだが、骨格だけシナリオに使われたのだろうか。

主人公のチェ・ミンジェも、ラストでは、清濁併せ呑む、物事の複雑さを理解した警官になっていた。この映画は、若者の成長譚でもある。

ただ、麻薬組織、後援会を作っての裏金作り、警察組織などが絡み合うので、混乱したのも事実である。配信されたら、もう一度観よう、と思う。チェ・ミンジェは頭がいいから、すぐに矛盾点に気づくんだけど、何がわかったのだろう、と追いかけてしまうので、十二分には楽しめていないと思う。

チェ・ウシクは『パラサイト 半地下の家族』のインチキ家庭教師から、ひ弱ながらもアクションも、こなせるスターになっていくのかもしれないな、と思った。

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