備忘録5.婚約したころの話
当時、仕事を始めた私でしたが、興味のあったジャンルだったということもあって、アルバイトからそのまま社員という形に昇格させてもらって働いていました。アルバイトの時には気づかなかった、会社のワンマンぶりや社員の適当さが露呈してきていて、半年とたたず辛くなっている時期でした。
毎日、誰かしらが休みだったり遅刻をしてきたりと、朝から全員が揃っているようなことは稀。タイムカードで管理をされているけれど、残業代のためにダラダラと残る人が多く、しかも会社は会社にいる時間の長い人ほど働いているという評価をするようなところでした。そして優秀な人ほど早く辞めていく。
運よく、現在まで交友のある人が何人も残りましたが、その人たちがいなければもっと酷かったかもしれないなと感じています。
とにかく、この環境から出たいという気持ちも後押しし、指輪はまだかー?と話に挙げることも多くなっていました。会話のたびにネタとして挙がってくる程度に緩い話でした。そんな折、電話で話をしていた時に「家族寮に決めてきたから」。独身寮を選択するということもできたけれど、もう申し込んでしまった、と。
心の準備も何もなく、慌ただしくなる我が家。
全ての準備がバタバタで、あちらのご両親も急に話が飛んできて、それはそれはバタバタでした。結納の日のことは、長い机のある和室だったこと以外、何も記憶に残っていません。どこのお店だったのか、何時間いたのか、どんな話をしたのかも、何もかも。
決心も準備もできていなかった私は、家から出る、ということに抵抗ができてしまい、予定よりも1か月遅く、その寮に入りました。実家暮らしからそのまま、知らない家に住むことに慣れるまでしばらくかかりました。
まだ、婚約の期間中の事。久しぶりに実家に戻った私は、当日中に戻る予定だったところを、「泊まって行けばいいじゃないか」という両親の言葉に甘え、その旨を電話で連絡しました。「今日中に戻ってくると言ったじゃないか」と激怒する彼。親戚付き合いで、そういう流れというのはどこにでもあるものだと思って、当たり前だと思っていた私とのズレが発生した瞬間でした。
怒りの収まらない彼は、一緒に暮らしていけそうもない、婚約は解消する、と伝えてきたのです。よくわからないままに、私は実家を飛び出し、家へと戻ったことだけは覚えています。
今でも、この件については何が正しいのか、考えてはみるものの、答えが出ません。
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