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素晴らしき哉、サントラ2:『L.A.Confidential』

今日のサントラは『L.A.Confidential』。知ってる人と好きな人、知らない人と好きじゃない人、がパッキリ分かれるであろう、1950年代のロス警察の腐敗の話…なのですが、なんと!改めて見たら1997年公開の映画だったのか。23年も前じゃないですか…。

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と、気を取り直して、1曲目の『血塗られたクリスマス(BLOODY CHIRISTMAS)』がもう内容にぴったり合ってて素晴らしい。このタイトルは、話の中でもふたりの主役がからむ最初のきっかけとなる事件のことなのだけど、スウィングジャズっぽいようなテンポで奏でられるバイオリン(かな?)のメロディーが狂ってる。

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11曲入っている曲のすべての隅から隅までを完全に記憶しているわけではないけれど、全体に緊張感がキープされていて、2曲目の『ナイト・アウルの虐殺(THE CAFE)』、9曲目の『撃ち合い(SHOOTOUT)』、ラストの『勝利者(VICTOR)』に、共通して流れる、物悲しいトランペット(じゃない物もあると思うけど)のメロディーは、何度も繰り返し流れるのでこの映画のイメージと完全に結びついてしまってる。これ、チェット・ベイカーのナンバーを基本としているらしい。私はジャズ方面にはまったくうといので、そう思って聞いていなかったけど、その選び方、使い方、アレンジの仕方が上手すぎるんだと思う。

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そもそもこの映画は、アメリカの作家、ジェームズ・エルロイの原作が先にあり、「L.A.4部作」と呼ばれる連作(というか)の3番目の物語。4つともものすごく複雑で登場人物も多い話で、『L.A.Confidential』もよく映画化できたなと思う内容。

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当然映画は原作とは違う展開になっている点も多いし、あ、そこはそうなっちゃうんだ、あ、この話の中で解決しちゃうんだ、みたいな点もあるにはある、のだけど! それだけ違う点がありながらも、原作の持っている雰囲気、空気は同じ(私には)、に感じられる点がホントにスゴイ、良く作れた映画だと思う。その「同じ」感を、音楽がより高めていると思う。

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色々違う点がありながらも、ラストの場面は小説も映画も同じ。ふたりの刑事のうちひとりは女を連れて去り、ひとりはさらに闘うためにとどまる。そこに11曲目の『勝利者(VICTOR)』が流れていて、泣ける。

映画を見てからは、小説の最後の最後の1行を読んでても、このメロディーが脳内再生される。

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そんなレベルの高い音楽を作ったのは、ジェリー・ゴールドスミス。映画ファンにはおなじみというか、有名なお方、巨匠ですが、『オーメン』でアカデミー賞を受賞。『パピヨン』から『ランボー』から『氷の微笑』から『スタートレック ファーストコンタクト』から、と大作映画をたくさん手掛けた人。SFものとかアクションものも多いけれど、サスペンス、スリラー系の音楽にも強かったお方。こんなに作品の世界観をふくらませる音楽を作るなんて、プロフェッショナルの仕事だなーと感心する。

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この作品は一般的には、キム・ベイシンガーが初めてアカデミー賞助演女優賞を受賞した作品として知られていたり(完璧に美しくてよかったです)、ラッセル・クロウとガイ・ピアースの出世作として知られているけれど(アメリカの50年代の話なのに、主要な二人がオーストラリア人の俳優という妙)、音楽にも賞をあげたかったなー、音響賞とかはもらってるけど。音楽賞、作曲賞にノミネートはされてるけども。こんな素晴らしい腕前は正当に評価してあげたい。

このnote.では、あえて特にストーリーの概要などは詳しくは入れないので、興味がわいた方は映画と小説、どちらでも試してみてくださいませ。

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