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日々のこと

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春にみた夢【流産の記録】

夜の診察を終えた帰り、夫とふたりで近所の神社に立ち寄った。 神に縋りつく以外に成す術がなかったのだ。 私も、夫も、到底普通の状態ではなかった。 満開の桜のトンネルをくぐる足取りは重い。 まだ4月に入ったばかり。 気候は安定せず、その日も花冷えで、そっと絡ませた夫の指先は白く冷たかった。 夜空は高く、遠く、星はまばらで飲み込まれそうな闇が渦巻いていて。 風が吹くと花びらが宙を舞う。 「連れていかないで」 願いはたったひとつしかなかった。 心から待ち望んだ日 2023年3月

    • 自己紹介【不妊治療と仕事】

      ご覧いただきありがとうございます。 はじめまして、めぐると申します。 作業療法士として10年以上リハビリの仕事に従事しつつ、約2年間不妊治療のクリニックに通い、体外受精にて第1子を授かることができました。(現在妊娠16週目に入りました) 悩み、もがきながら歩んできた時間を忘れてしまわないように、その時々に感じた心の温度をありのまま思い出せるように、記憶を手繰り寄せながらここに記していきたいと思っています。 具体的な治療経過はこちら 2019.7 結婚 2021.9 自

      • あかんたれ

        「あかんたれやなー」 祖母を思い出す時、真っ先に浮かぶのは、幾度となく聞いたその言葉、とろりと垂れた目元。 笑う声は鈴を転がすよう。 自転車に乗って5分。 日に焼けてぼろぼろになった立て付けの悪い扉を開けると今じゃ珍しい土間の台所があって、祖母はいつもそこに立って迎えてくれた。 お味噌汁やカレー、炊き込みご飯、さつまいもの天ぷら。 いつも美味しい匂いで満ちていた。 手をつくとがたつく年季の入ったダイニングテーブルには椅子が5脚置かれていて、その奥には灯油ストーブ。 祖父は

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