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【連載小説】螢惑守心の煌仙子【完結】

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十七年前、国に忠誠を誓い、命を懸けて護国のために戦ってきた常勝軍が、一夜にして壊滅した。  戦場はあまりに悲惨で、何かに食い散らかされた兵士たちの残骸だけが残っていた。  遺体は… もっと読む
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第〇集:登場人物用語紹介(随時更新予定)

※こちらは小説【螢惑守心の煌仙子】の用語集です。 ※歴史上、実際にあった官職も書いてあり…

第零集:嚆矢濫觴

 花丹国には聖軍大二柱と呼ばれる軍があった。  皇長子の義父が率いる『瑞泉軍』。  武人、…

第一集:奇々怪々

 春麗らかな午後の日差し。  木陰には小動物たちが集まり、心地よさそうに昼寝をしている。 …

第二集:一朝之患

「なんか……もらった……けども」  百年前に移設する前は憧温将軍の墓地だった旧憧林に派遣…

第三集:暗中模索

「さっきの女の子……、大丈夫かな」 「ねぇ、さっきの男の子だよ? 見てわかんなかったの?…

第四集:春和景明

「こちらに着替えてください!」  朝十時、新しい仕事先である蒐集屋敷『銀耀』へと出勤し、…

第五集:安穏無事

 舞慈山の麓にある樹海にそれはあった。  色彩豊かな布地が川の流れのように風に揺れ、家々からは煮炊きする湯気が立ち昇る。  山を切り開いて作られた壮大な棚田は、風が吹き抜け、とても見晴らしがいい。  一見するととても平和な、牧歌的な村だ。  わたしは村から少し離れた場所に降り立つと、依頼者である長老へ会うために村へと向かった。 「わぁ、きれい……」  このあたりは染料に適した植物や虫が多く生息しているらしく、染色が伝統産業になっているらしい。  スペンサーからは、暁星とは別に

第六集:畏怖嫌厭

「ここもなかなか……」  樹海の奥に聳え建つ青銅色の建物。  さきほどの村の家とは打って変…

第七集:凡聖一如

――誰ぞ、わしの聖域にズカズカと入りよるのは……。許さん……。許さん……。 ――あの女の…

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第八集:羞月閉花

 わたしは後方に飛びのき、斬撃を躱すと、すぐに前方へ飛び出し、大剣めがけて太刀を振り降ろ…

第九集:異国情緒

「おおお……、なんという栄え方をしているんだ……」  花丹国一の港町、長海。  現代語では…

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第十集:適材適所

「懐かしい、この感じ……」  第一階層は緑豊かな地下大熱帯森林だった。 「なるほど……。龍…

第十一集:因果応報

 灰が散り、声を持たない魔神蚕たちが、枝や葉と一緒に燃え落ちていく。  子供たちを救おう…

第十二集:按甲休兵

「もう明け方かぁ……」  紫にさす朱は黎明の色。  魔窟から出て最初に見た空は、昨夜見た炎よりも優しく、世界を照らす準備を始めていた。  港町の朝は早い。それでも、まだ生鮮食品店以外の店は開いていない。 「マックスさんのところに届けるにはまだ早いかな……。あれ?」  魔窟の目の前にある酒屋の前に十人ほど人が集まっていた。 「あいつら、まだ帰ってこないぞ」 「もしかしたら野宿でもしてるんじゃ……」 「いや、それはないだろう。行ったのは第一階層。それも、ただ蚕を取りに行っただけだ