見出し画像

映画感想011『落下の解剖学』〜真実はいつもひとつ!じゃない!!!! ※ネタバレあり

2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で最高賞のパルムドールを受賞したサスペンス映画

フランスのオリジナルはこちらがポスターイメージみたい。。つまり、夫婦の解剖学ってこと!?

転落死した夫は自殺なのか?事故なのか?
はたまた妻による殺人なのか?

事件の真実が法廷で明らかになるミステリー映画

かと思っていたが、、

見てみたら全然違う映画でした!!!!!!

映像として、ひとつも神目線のシーンが無く
事実は全く分からない。。。

あったのは音声を部分的に映像で再現したシーンのみ
(これだって、法廷の人が音声を聞いて想像した
映像のようにも思える。。。)

殺人容疑にかかった妻も
殺してない、、と言ってはいたが

どっちとも取れる様な気がしないでもない。。。
てゆうか、、分からない。。。

なんなら、演出の際の話で、妻を演じたサンドラヒューは
殺したのか殺してないのか教えてもらえなかったそうだ

撮影スタッフもどちらなのか分からないまま
撮影したとかしないとか。。。

そりゃあ、見てるこっちは分かるわけない!

では、この映画、一体何をしたかったのか

私は考えた。。。

つまるところ、、
『真実はいつもひとつ、、、じゃない!!!』
ということだと思ったのです。

何が起こったかは正直どうだか分からんけど
妻から見て、何が起きたのか
息子から見て、何が起こったのか
弁護士にとっては、、、
検事にとっては、、、
フランス国民にとっては、、、

それぞれにとっての真実があるわけで
真実はいつもひとつ、、、じゃない!!!のですね!!!

きら~~~~~ん!真実というか、限りなく客観的な事実がひとつ。ということですかね?


ということで、映画を観た人は
結局事実はどうだったのか?
をみんなで議論してワイワイできるわけですね。。

私がポイントだと思ったシーン
ひとつ目は
①音声の映像再現から分かる事実
・妻は売れっ子小説家、夫は小説家希望だけど一作も書けてない
・息子の視力障碍の原因である事故は、夫が迎えに行かなかったから?
・夫は小説のネタのために会話を録音していた
・まるでわざと妻を怒らせて喧嘩にしむけた様にも思える

⇒夫はそうとう自身の失敗と妻の成功によって精神を参らせていた
 自身のわがままで母国フランスに来たが猶更書けない状況に陥っていた
 つまり、自殺してもおかしくない状況に思える。。。

⇒くず発言を連発する夫に最初は優しい妻だったが、夫からの発言次第で
 キレて暴力をふるう可能性が妻にはある
 つまり、妻が夫を偶発的に殺してしまう可能性はある。。。

⇒夫は妻への復讐(勝手にそう思い込んで)のために
 妻を窮地に陥れるために、録音を残して自殺した
 つまり、夫は自殺した。。。

などなど可能性は考えられる

はじめは純真だと思ったのに。。。結構したたかね。。。

更にポイント
②息子の供述
・自殺した父が数日前にアスピリンを大量に飲み吐いてしまった
・そのゲロを飼い犬が食べたら、体調をおかしくしたことがある
・その時言った父の発言、、『いずれ死ぬから、覚悟しとけ』
・自身の自殺を暗示していたのでは。。。
・帰ってきた母をまるで守るように抱きしめるラストカット

⇒一見、息子は過去にあった事を頑張って思い出し
 現実に起きた事件に対しての解釈を頑張ってした結果
 母を護ることにつながった。。
 か弱い息子が成長して母を護ることができた。。。
 様にも見える。。。。。

⇒息子は父の自殺を暗に主張したことにより、母は無罪となったわけだが
 かなり、息子にとっての真実、、というより事実を造った様に感じさせる
 
 そう、、、

事実を造った様に感じさせるというのが大きなポイントなんです!

なぜそう感じたのか。。
それは息子が父の発言を供述するカットの演出にある

息子が法廷で父の過去の発言を供述している際に
父が車を運転しながら息子に語る時の映像が映し出される
しかし、そこに音声は無く
息子の供述の声が、その映像に載せられている
しかし、その喋る父親の映像は
法廷で供述する息子の声にぴったり口が合っているのだ!!

過去本当にそんな発言を父親がしたという事実があるのなら
◆普通にその台詞を父親役が喋っているシーンを撮る

◆その台詞を息子が法廷で発言するシーンを撮る
という順番になる

がしかし。。。
そこまでピッタリ合うということは
①父が喋るシーンに息子がアフレコをする
②息子が法廷で喋った音声を流しながら父が車で喋るシーンを撮る
のどちらかで撮影したことになる
実際どのように撮影したのかは分からないが
結構めんどくさい方法ではある。

では、なぜそんなめんどくさいことをしてまでも
父の映像と息子の声をぴったり合わせる必要があったのか

そこで考えたのは

≪その発言、映像は息子の創作だから≫

という結論に至ったのであります!!!

つまり、息子は母親を無罪にするために
その様な事実がありましたと供述したわけです。

演技上手すぎて、逆にずっと嘘言ってるように見えてしまう

この映画を見て
裁判というのは事実を突き止めて
公平な判決を下す
と思っていたが

こんな証拠もないような事件でだって
人によっては、夫の自殺にも見えるし、妻の殺人にもみえるしで
真実なんて、ほんとにひとつじゃないんだなぁと痛感しましたですね。。。
こんなんで判決下されるのは溜まったもんじゃないですね。。。
冤罪だったら猶更ですよ。。。

あーいえばこーゆーばっかりのフランス法廷。逆にフランス人てアホなんかなと思えてしまう

最近、日本の芸能界でも色々と裁判で決着。。
なんてことがありますが
あくまでも裁判の勝ち負けも事実があったかどうかでなく
論点になった部分において、どちらの主張が優位かどうかを
争っているだけであって、その辺も判定する人やら
判決を報道する人によって、人の印象が全然違ってくる

ほんと、、真実はいつもひとつじゃない!!!

ちなみに、事実はどうだったのだろうか。。。

ラストに明らかになるのかな?なんて思っていたけど
案の定わからないままエンドクレジットになる

たしかに、描いたら野暮だよね。。。

自殺か、事故か、殺人か。。。

もし事故だったら、、、
めちゃくちゃ滑稽な映像になる

屋根裏で作業していた夫は
窓を開けながらの作業中、顔にまとわりつく虫を払いのけようとする
すると足元のバランスを崩してあぁ~~~~~~!落下。。。

もしくは、金づちで釘を打っていたら、自分の指を叩いてしまう!
いってぇ~~~~!
大きくのけぞったら、、、あぁ~~~~~!落下。

めちゃくちゃアホじゃん。。
小説も書けないし、仕事ないし、、、悲惨。。。

もしくは、、、

小説のネタ作りのために
自分が転落した時の家族の反応を見ることにした夫
わざと屋根裏から雪の上に落ちたが
落ちる瞬間、雪に反射した光に目が眩み
足が窓枠にひっかかる
落ちる場所の目測を誤り、あぁ~~~~~!下の小屋に激突。。。

事実は大概しょうもない。。。
しょうもないのに結果が悲惨なことは良くある

夫の死により妻が殺人犯に疑われたのは
彼が鈍くさかったから。。。

ということになってしまう。。。

そりゃ事実を描かない方がいいよね

この重厚なミステリーの最後に
コメディシーンがぶち込まれたら
それはそれで名作になったかもしれないが!!!

ちなみに、、
妻が仮釈放された夜の弁護士とビールを飲むシーンと
判決後、中華で飲むシーン
いずれも、これってキスとかしちゃうの???
したらやばい!!やめて~~~!
と思ったけど
しなくて良かった。。。
キスとかしたらなんか、あるある過ぎてゲンナリしちゃうもんね!
ほんとこの2つのシーンが暗転した時はホッとしましたよ

二人の親密具合にハラハラさせられる。ここがむしろサスペンス!


おわり!














この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?