目的放棄の先にあったもの/愛おしき日常(第10回)
集中するときの方法、あなたはどんなことをしているだろうか?
私は特にデザイン仕事の時、音楽をかけておく派である。
YouTubeを利用するのだが、これには連続再生用のリストを自動で作ってくれる機能があるのは、ご存じの方も多いだろう。
ひとつ選曲すれば、「あぁた、コレもお好きでしょう?」と言わんばかりに好みの曲を並べてくるのである。実に気が利いている。
ある時は、納期が迫っていた。
もちろん”音楽集中法”に決まっている。
毎回自分のテンションを上げるものをかけるのだが、この日はユーミンを無性に聴きたかった。
YouTubeも空気を読んだのか、ユーミン祭りをスタートさせたのだった。
ユーミンなら、当然アノ名曲「春よ、来い」を外すわけにはいかない。
もちろんYouTubeもツボは押さえているようだった。
切ない前奏が流れ出す。
それなら私も歌うというのが礼儀であろう。
仕事で手を動かしながらも、前奏から歌い出しへと集中する自分。
気分は松任谷うっちーである。
歌詞の切なさや曲の盛り上がりを感じながら丁寧に歌いこんでいたら、たまらずに号泣をした。
しかし、号泣をしながらも、歌だけは諦めなかった。
集中力を向ける先は歌一本となっていた。
「はて、私は何をしていたのか…」
ぶぶーっとひとつ鼻をかみ、徐々に現実へと戻りながら窓の外を見てみれば、花がふわふわ〜っと風になびいているのが見えた。
春はすっかり来ていたのだった。
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