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ジュヌゥ・フィジィさん

お仕事で事務をされる方は、細やかな点まで気が回る人が多いように思う。

以前私が勤めていた会社にも、総務のAさんがいらした。

Aさんは、非常に穏やかな方だった。
怒ったところなど見たことがなかったし、いつでも丁寧にきちんと仕事をするしっかり者であった。

社員の多くが彼女を頼る。
Aさんは大変利発で素敵な人だった。

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ある日、同じ部署に新メンバーが入ることになった。
フジイジュンさんという方で、私はこの方のお世話を担当することになったのだった。

まずは彼の初出社までにネームを準備が必要だ。
社員管理となれば、Aさんの出番だ。早速Aさんに諸々の書類とネームの発行を依頼した。

さすがはAさん。やはり仕事が早く、かつ、丁寧だ。
早々に私のデスクまでネームを渡しに来てくださり、ニコニコしながら去っていった。

隣の席の同僚とは思わず、
「Aさん、すごいな、やっぱりデキる人よなぁ〜。」
などと感動を分かち合った。

後ろ姿を見送ったあとは、
「さぁて、どれどれ。どんな方が入ってくるんやろうなぁ〜」
と妄想の準備をしながらネームを眺めた。


・・・あれ?

フッ…と一瞬の違和感を感じた。何かが変だ。
名前の漢字は合っていた。Aさんがそんな凡ミスをしでかすわけがない。


改めて、文字をひとつずつ追っていく。

目を凝らして見た結果、


「JNU FIJI」


と書かれていた。
思わず同僚と顔を見合わせ「・・・ジュ…?ジュ(ン)ヌゥ・フィじぃー」と発音した。

0.5秒後、吹き出したことは言うまでもない。

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何度読んでも、「ジュ(ん)ヌゥ・フィジィ」だった。

同僚は、フランス語風に言い直して、さらに自爆していた。


Aさんだって、タイプミスくらいある。
きっと忙しい日だったのだろう。
だけれども、こんな笑いをお届けしてくるとは、やはりAさんはやり手だと思う。

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