見出し画像

ラグジュアリーと消費者のあいだにあるもの

今日はラグジュアリーブランドについて思うところを書こうと思います。

現在のラグジュアリーブランドにはほぼ興味がありません。なぜなら本来の価値の一つであるブランドの背景と歴史をインフルエンサーを始めとするマーケティングが上回ってしまって、ラグジュアリー=ラグジュアリービジネスという印象しか今は覚えないから。でもビジネスはそういうものと思っています。食うか食われるかの世界。

わたしは数年前、某日本橋高島屋の某ラグジュアリーブランドで一年半程働いていました。日本橋高島屋という百貨店は都内にある百貨店の中でも、独自だと思います。何が独自かというと、建物の歴史的価値はもちろんなのですが、観光客はほぼおらず、本当の金持ち(言い方w)の顧客が代々この百貨店を贔屓にされているのと、皇族の方がお忍びで来られることでしょう。

ここにいた間、普段は何をされているのですか?と容易く聞けない(もちろん先方から教えてくれる方もいます)ガチな富裕層の方々は今のラグジュアリーブランドに対し、シビアな目を持っていると感じました。もてなされることにも慣れてらっしゃるので、外商(百貨店の専任担当者がついてご自宅で商品を販売したり専用のサロンがあったりする百貨店のサービス)の顧客だけが受けられる割引やポイントアップを、意外と楽しみにしてらっしゃったりします。それでお店にいらした際、外商の担当者を呼んで、「商品券400万円分ちょうだい」と言ったりする。良いと思わないものはくつ下一つ買わないけど、よいと思ったものや大切なものや人には惜しみなくお金を出す。

京都服飾文化研究財団より

それまで、わたしの中に富裕層に対する偏見があったのかなかったのか分かりません。しかし少なくとも、日本橋で出会った方々の殆どは思いやりと、品性を備えてらっしゃいました。いわゆる成金(失礼)にありがちな、見せるための富ではない。

かわいいメモ帳が上の催事で売ってたからお土産に買ってきたよとか、とても親身にしてくれたからこれお菓子どうぞ、とかそんなささやかな心遣いをいただくことも、わたしは嬉しかったです。

そしてたまに、ヘルプで銀座や新宿の百貨店に行くと、ブランド品を買い漁る(言い方)外国人観光客の接客をすることになります。彼らは在庫があるかないかが解ればいいという感じで、求めているのはブランドがもたらしてくれるステータスやロゴなのだと特にアジアの観光客と接していて強く感じました。それが良いとか良くないとかは置いておくとして、在庫さえあれば売れるというインバウンド需要に、会社も人も甘んじていたのは否めません。

しかし会社としてつまるところ、売れればいいのか?

答えはもちろん、YES。

わたしがそのラグジュアリーブランドに転職したのも収入アップの為でした。そのブランドが好きだったかといえば、決してそうではありません。ただ、それまで働いてきた日本企業とは比にならない程働き易い会社でした。

社員を大切にしていることがトップから(本国の)直に伝わってくる風通しの良さ、年末にホテルの会場を貸し切って行われるパーティや毎月送られてくるお菓子、何よりも休みの多さがほんとうに有り難かった。そしてそんな仕組みをつくれるのは会社がきちんと利益を生んでいるからです。なので観光客がブランド品を爆買いするのをわたしは否定も肯定もしませんし、出来ません。

名の知れたブランドは力を持っている。
お金もですし、その影響力は言わずもがなで、わたしもこの某ラグジュアリーブランドに在籍していたことがある種の免罪符になっているところがあり、人が勝手に(言い方)よき受け取り方をしてくれます。転職ばかり繰り返すジョブホッパーにも関わらず・・・

よく「まさかあの人が・・・」とか、「まさかあの先生がそんなこと・・・」などと聞いたりするのは、人がいかに肩書や世間の評判に惑わされやすいかってことで、わたしはそういった"世間一般フィルター"を自ら積極的に叩き割るようにしています。金もちが腹黒いわけでもないし、清貧を貫いてる人が立派なわけでもなく、世間のイメージはあくまでも世間のものであって、わたしのものではない。

人生は選択の連続とよく言われますが、目の前にあるものとどう向き合ってどうしたら自分は幸せを感じられるのだろう?という、日々の問いに、ショートカットせず自分の答えを出していく。めんどくさいけど、そのめんどくささが楽しいし、人生は大抵めんどくさい。

自分で服をつくる時、そこにわたしなりのアンチノーゼを込めます。それは今の資本主義、消費社会に対するものであると同時に、コマーシャリズムに踊らされがちな現代人への皮肉に近いかもしれません。

売れなければ続けることができない。
わたしはこのことを知っています。

常に、揺らいでいます。
それがわたしにとって生きることです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?