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電動車椅子に乗っている日常

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もぐら会で書くエッセイをまとめるマガジンです。 ただの雑記とも言います。
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#エッセイ

キャッチボールをしてみたい

人と接するとき、どこかでいつも予防線を張っている。嫌われても傷つかないように。
こんな風に思っていたのはいつからなのか、もう思い出せない。

車椅子で生活をしていると様々な悪意に出会う。悪意とまではいかなくても、無意識に世界に私が想定されていないことを意識する。入り口が階段だけの飲食店やお店、狭くて他の人に気を遣う電車やバスなど。私が子どもだった20年ほど前はまだ乗車拒否もあって、公共交通機関を使

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10年前の私に伝えたい、ありがとうとごめんなさい

あなたへの手紙に何を書けばいいのか、たくさん考えたけど、いまいち判然としません。過去から未来に手紙を託すことはいくらでもできるけれど、未来から過去に向けて手紙を託すことはある意味過去へのお説教みたいになってしまってそれ自体が暴力的であり、私もあなたもそういう言葉が大の苦手だからです。それでも久しぶりにこうして文章を書いているのは、今しかあなたに伝えられないことがあるのではないか、と感じているからで

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障害とともに生きる私の、魂と肉体

魂と肉体、どちらを優先して生きてきたかと言われると、肉体と答える。
もちろんそうではないこともあったけれど、私はほとんど無意識に私の身体を常に気にしている。車いすでも行けそうなところ、脳機能に障害があり手足や体幹に麻痺があって、マルチタスクと整理整頓が絶望的で、人より体力が少なくてもできそうなこと。
こんな発想になるのはある程度仕方ないような気がしてくる。現実問題としてできることには限りがあるし、

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終わりのことばかり考えていた私が、終わりに思いを馳せなくなった。

私は、始まりとともに終わりを考えてしまう少しめんどくさい生き物だ。楽しみにしているイベントがあって、あと何日!とカウントダウンしている時ですら、それと同時にそのイベントが終わるときや終わった後のことを考えている。イベントなら、ああ終わっちゃう。卒業なら、もうすぐこの生活も終わりだな。友人たちとの食事でさえ、いつかみんなでご飯を食べなくなってしまうかもしれない、と考えていた時期もあった。ここまで行く

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私が彼女を連れていく

ファンタジーと聞いて、最初に思い浮かんだのは、「ドラえもん」だった。とはいえ、私は小さい頃からドラえもんを観ていたわけではないため、秘密道具もそんなに数を知っている、ということもない。パッとイメージできるのは歌に出てくるタケコプター、どこでもドアとかタイムマシン、あと数個連想できたらいい方である。そのくらい見たことがない。

このテーマをもらったとき、ふと、今の私の生活を就職したてのときの私が知っ

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高校の夏スカートを着続けられなかった私との決別

いたずら心と聞いたとき、私が一番持ち合わせていないものだと思った。

自分で言うのもおかしいが、私は真面目だ。

決められたルールからはみ出るとそわそわするし、これくらいいいや、という考え方があまりできない。

だから、高校時代、校則に違反して先生に怒られてまで髪を染めたり、地味な冬服とは異なるチェック柄の夏服のスカートを、指定期間外の冬もはいてみたりすることを、私はしなかった。

夏服のスカート

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不自由な中で見つけた、私の自由

自由と聞いたとき、私には同時に不自由が思い浮かぶ。
車椅子で生活している私にとって、なにも気にすることなく、本当に自由に選べることはめったにない。私の自由にはいつだって条件が付いている。車椅子でも不自由なくアクセスができる立地だとか、建物のつくり、介助者がいなくても問題ないかどうかなどなど。そういう類のことを気にするのは私にとってはもはや日常で、そういう確認を取ることも当たり前だ。
時々面倒になっ

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電動車いすに乗って生活する私が「一人暮らし」を見つけるまで

私は12月初旬に生まれて初めての一人暮らしを始めたばかりだ。電動車椅子で生活しているため、家事援助や身体介護など、ヘルパーさんを毎日夜に2時間頼みながら生活している。初めてに囲まれた暮らしはとても楽しい。当たり前だが、ヘルパーさんを頼んでいる時間帯以外はすべて一人の時間である。今まで実家や施設にいて、人と過ごしている状態が当たり前だった私にとってはそれだけでとても嬉しい。

でも、一人暮らしを始め

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