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【フェムテック⑦通信】イノベーション創出に不可欠な「ジェンダード・イノベーションズ」とフェムテック

筆者の母親は、身長が147センチと女性の中でも小柄だが、筆者が小さいころ「自動車のシートベルトが苦しい」と言っていた。

ただ、これは母親だけが感じているのではなく、企業などの研究開発現場に女性リーダーが少ないため、男性を前提に設計された自動車のシートベルトが大半だったという背景があることを知った。

「シートベルトが苦しい」以外にも、男性中心に設計されたシートベルトでは女性を十分に守れず、交通事故で女性が重傷を負う比率が高かった。
そこで、性差を分析したうえで技術革新させる「ジェンダード・イノベーションズ」には、女性エンジニアの活躍が不可欠である。

今回は、「ジェンダード・イノベーションズ」について、さまざまな記事を参考にしながら、感じたことをまとめてみた。

【政府】女性版骨太の方針(2022年6月)

科学技術・学術分野 科学技術・学術分野において男女共同参画を進め、研究・技術開発に多様な視点を取り入れていくことは、ジェンダード・イノベーションの創出にもつながり、重要である。このため、大学の理工系の教員(講師以上)に占める女性の割合や大学の研究者の採用に占める女性の割合を令和7年までに引き上げる目標を分野別に掲げるとともに、大学(学部) の理工系の学生に占める女性の割合を毎年度高めるとの目標を定めている。

母親のシートベルトの話しにもつながるが、理工系の学生に占める女性の割合を高めていかないと、女性エンジニアも増えていかない。
筆者の知り合いの女性エンジニアは、男性職場のため女性トイレが少なく、大変苦労しているし、別の女性エンジニアも男性に囲まれていて自身の考えが「おじさん化」していると話していた。

日本では、理系分野に進学する女性の比率が低位にとどまっているとのことで、身近なロールモデルを増やしていくことや、「理系は男性」という無意識の偏見をなくしていくことが求められている。

【研究】「性差」の研究がもたらすイノベーションとジェンダーギャップ指数

 例えば、薬の臨床試験では妊娠や出産への影響を危惧し、女性の被験者が非常に少ない。女性への副作用が見過ごされやすい傾向があります。工学分野でもシートベルト開発では男性のダミー人形だけで検証され、妊婦が考慮されていなかったため交通事故で胎児が流産するリスクが増大していました。(お茶の水女子大学 佐々木成江特任教授)

医療分野では性差が見過ごされやすい傾向とも言われていたり、amazonでは過去10年分の履歴書の内訳の大半が男性で、女性に対して好意的な評価をしないAIになり、AI採用が打ち切りになった事例もある。

また、2022年7月にグローバル・ジェンダーギャップ指数が発表になり、日本は116位とG7最下位。特に注目すべきなのは、教育と健康はトップクラスだが、政治と経済で男女差が大きい。同じく女性研究者の数も日本はまだまだ少ないため、どのように女性研究者を増やしていくのかが課題となっている。

https://www.weforum.org/reports/global-gender-gap-report-2022/
上記リンクをもとに筆者が作成

【医療】性差を知って健康管理

男女で病気のかかりやすさや症状の出方、治療法などが異なることがある。このような性差に配慮した医療を「性差医療」と呼ぶ。

身近な例は、新型コロナウイルス感染症。女性より男性のほうが重症化率や死亡率が高いことが、各国で報告されている。
さらに、女性は免疫反応が強いゆえに、新型コロナのワクチン接種によって体内に作られる抗体量が男性より多い傾向にあり、副反応も出やすいことが分かっている。

筆者の周りをみても、新型コロナのワクチン接種による副作用は、女性の方が出やすかったように感じる。
性差医療は日本ではまだ新しい分野だが、医療現場に広がるためには、男女の違いを理解し、データを取得してエビデンスを蓄積していくことが必要。

【まとめ】日本での研究は、はじまったばかり

事業創出の4つのステージ

ジェンダード・イノベーションズは、日本で研究がはじまったばかり。ここから性差を考慮した製品やサービスの開発が進められ、事業化・産業化するにあたり、産学官の連携が重要になってくる。

今年7月には、お茶の水女子大学と日立コンサルティングがジェンダード・イノベーションに関する共同研究を開始。

冒頭に紹介した母親のシートベルトもそうだが、本当は不便なのに、不便なことに気づいていないのは、ジェンダード・イノベーションズが関係しているのかもしれない。
まずは概念を理解して、世の中の性差に関する「不」を解消していけたらと思う。

【イベント案内】7/29(金)開催:「性差」を捉えるジェンダード・イノベーションズとフェムテック

フェムテックの広がり、そして健康課題解決において欠かせないのがデータに基づく研究です。
ジェンダード・イノベーションズとは、性差・生物学的な性別(sex)と、社会・文化的に構築された性別(gender)を考慮することで、より質の高い研究、技術革新を目指す概念で、2005年より米スタンフォード大学ロンダ・シービンガー博士が提唱しています。

これまで科学技術分野における研究や製品開発の多くは男性を対象として進められてきた歴史があります。性差を考慮することでどのようなイノベーションがもたらされるのでしょうか。
お茶の水女子大学で研究を続ける佐々木成江特任教授をお招きして、お話しを伺います。

渋谷のリアル会場とオンラインのハイブリット開催で、当日は司会&ファシリテーターをしています。ぜひ会場orオンラインでお会いしましょう!