ジョブ・クラフティングの具体例:職場におけるJCとは一体どんな行動?
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ジョブ・クラフティングの具体例:職場におけるJCとは一体どんな行動?

Megumi IKEDA | 池田めぐみ

 最近、何人かの方から「ジョブ・クラフティング(JC)」がどうやら重要だということはわかったんだけど、具体的には、職場でどのような行動をすることなの?という質問を頂きました。今回の記事では、ジョブ・クラフティングの具体的な事例について、私が見聞きしたことを中心にまとめていきたいと思います(論文ベースの具体例の紹介は塩川さんのnoteにもまとめられているので、ご関心のある方はこちらもどうぞ)。

事例に入る前に、そもそもジョブ・クラフティングとは?

 ジョブ・クラフティングとは、Amy Wrzesniewski博士とJane E. Dutton博士が2001年に提唱した概念であり、ひらたく言うと働く個人が「自発的」に仕事のやり方や人との関わり方、仕事の意味付けの仕方を変えることを意味します。高尾先生の文献の中では、JCの概念の新しさや特徴がまとめられています。JCが提唱される以前は、労働者を受け身な存在として捉え、マネジャーが内発的動機が高まるような職務をデザインして部下をアサインしていました。それに対し、労働者を能動的な存在と捉え、個々の労働者が自発的に仕事をデザインしていることに注目した点がJCの特徴の1つです。

ジョブ・クラフティングの3つの要素とその紅葉

 ジョブ・クラフティングは、①仕事のやり方の変更(タスク次元JC)、②人との関わり方の変更(人間関係次元JC)、③仕事の捉え方の変更(認知次元JC)、の3つからなります。

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 そして、JCをしている人は、いきいきと働いている傾向にある、幸福度が高い、パフォーマンスが高いなどのことが、先行研究により、明らかにされています。


ジョブ・クラフティングの事例集

以下では、各次元のJCについて、具体的な事例をまとめていきます。

タスク次元JC事例

・必要な手順を自発的に調べて共有する
 新商品の開発を任されたAさん。「新商品を考えてね」と上司に言われたものの、「新商品はどうしたら考えつくのか」も「どうやって収益を上げるのか」も、全くわかりません。会社でもどうやら、ノウハウは蓄積されていないようでした。そこで、Aさんは新商品の開発に関する本を読んだり、社外の勉強会に参加するなどして、新サービスの考え方や収益モデルのパターンを調べ、新サービスづくりに関わる知識を職場の仲間に共有しました。その結果、「新商品を考えるのは依然として難しいけど、どのような点を抑える必要があるのかわかった気がして、前よりもアイデアを生みやすくなった」とAさんは語ります。

人間関係次元JC事例

・顧客との関わり方を変える
 アパレル店に勤めるBさん。与えられたノルマは、月にXX万円の売り上げを上げることです。Bさんの営業成績は、XX万円に届くか届かないかのギリギリのところでした。また、時に売り上げのために、お客さんに似合わない服を勧めていることに嫌気がさしてきました。そこで、Bさんはお客さんとの関わり方を変えてみることにしました。今までは、お客さんが興味を持った商品について「売れていますよ」「似合っていますよ」と、言うだけでしたが、もっとお客さんがどんな服を望んでるか、知りたいと思うようになり、お客さんが普段着ている服やなりたいイメージ、服のケアにどれくらい時間を割けるかなどを、聞くようにしました。すると、お客さんが心から満足して商品を買っていくようになったと言います。この取り組みが営業成績の向上につながったかどうかは、まだわかりませんが、Bさんは以前より、楽しそうに仕事の話を語っていました。

・同僚との関わり方を変える
 Cさんの職場の人間関係は、決して良好と言えるものではありませんでした。キツい物言いをする人や、他人のミスを大声で指摘するような人..。このような職場で働くのは辛すぎると凹んでいたCさんですが、すぐには異動できないから少しでも良好な関係を築こうと、関係性の改善を試みました。Cさんは、前の職場にいた憧れのPさんのことを思い出しました。Pさんは、いつも他の人の業務状況を配慮し、お願いをするタイミングを測ったり、常に感謝することを忘れない姿勢で働いていて、Pさんのいる職場では、みんながイキイキと働いていました。CさんはPさんの真似をし、他の人のスケジュールを考慮して、忙しくないタイミングで仕事の確認依頼をする、どんなに小さなことでもやってくれたことには感謝するなどの行動を取りました。その結果、とても怖かった職場の人が前よりも少し優しく接してくれるようになったと言います。

認知次元JC事例

・エンドユーザーと関わることで仕事の重要性を捉え直す
 急な人事異動で、居心地の良かった広報部からB to B営業の部署へと異動になったDさん。新しい部署の仕事は、Dさんにとってあまり興味を持てないものでした。先輩や営業先の年配の方からスパイシーなフィードバックを受けてばかりで、すっかりやる気をなくしています。ある日、営業先に訪れた時、自社商品を嬉しそうに利用するエンドユーザーに出会いました。「このトリートメントを使うと、髪がつるつるになって、すごく嬉しいんだ。」とニコニコの女の子。Dさんにとって、今の営業はつまらなく、少し辛いことでしたが、女の子の嬉しさに貢献しているのだと思うと、大事な仕事に思えてきました。それ以降Dさんは、仕事に退屈さを感じるたびに、自社商品を使用して喜ぶ人を思い浮かべるようにしているそうです。

 ジョブ・クラフティングを促すために

 上記が、具体的な職場でのJC事例ですが、このようなJCを職場で促す際に、気をつけたいことが1つあります。それは、JCを盛んに行っている人が、JC疲れをする可能性もあるということです。話を聞く中で、「新しい業務を取り入れたり、人との関わり方を変えると、仕事は楽しくなるんだけど、ちょっと疲れちゃうんだよね..」という声も耳にしました。

(2021年8月11日リライト)
 高尾先生にコメントいただいたように、疲れない程度に自分で調整できるのが望ましいジョブ・クラフティングであるため、それを超えて促さてれているとすれば違う概念で取り上げるべき現象かもしれません。
 先行研究において、JCはイキイキ働くことや高いパフォーマンスを発揮することにつながる可能性が指摘されているのも事実です。

 よって、JCを超えて、たくさんの仕事をするように促してしまうようなことが起きているとすれば、それを促すマネジャーや人事はそのことに自覚的になる必要があるかもしれません。


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Megumi IKEDA | 池田めぐみ
働くに関わるレジリエンスについて研究をしています🕊 東京大学 社会科学研究所(CSRDA)助教 / 東京大学大学院 学際情報学府(山内研)出身 / 研究テーマ:①大学生の正課外活動×キャリアレジリエンス、②20代の社会人の職場での学び、③職場のレジリエンス研究。