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高揚する買い物

それはある日のこと

母親とふたりで久しぶりにショッピングモールへ出かけ、今まで入ったことのなかったお店にふらっと寄ったのです。

ひとりではきっと訪れないであろう、私が好きなジャンルではないテイストのファッション。

お値段もそこら辺のものとは明らかに一線を画してる。

一通り店内を眺めてから母が手にしたのは薄緑色のニットでした。

素人目にもわかりました、それはユニクロやファストファッション系では決して見つけることができない類のハンドメイドの逸品だと。

店員さんの接客も心地よく、早速試着してみることに。



むむむ、似合ってる!

これを母が買わずして誰が買うんだろうってくらいキマッてたのです。

「お母さんのカラダにハマっちゃってるね」


ショッピングしていると
こういう出会いは何度か訪れます。

そして問題はそこからです。

“買うのか、買わないのか”

この、いっけん簡単な問いに見せかけて、実はとても複雑かつ労力を要する難問。

タイミングってあるじゃないですか。

よし!今日はお気に入りを絶対みつけてやるぞと意気込んで出掛けた先でお眼鏡に叶うモノに何ひとつ出会えなかったり、

かと思えば

ある時ふと、ちょいと、ふらっと、しれっと寄ってみたお店で「なぜ今!?」というタイミングで一着に出くわしてしまったり。

慎重な母のこと、即決しないだろうなとは思ってたら予想どおり。

一旦検討しようと店を離れ、ひとしきり用事を済ませた様子を見て、ああ今日は買わないなと思いました。

それでも、なぜか、私のほうがあのニットを纏った母の姿を消し去れなくて、先に帰る母と別れた時、そうだプレゼントしようと決めました。

お店に戻るとそこには先ほど対応してくれた方はもうおらず、常連さんと親しげにお話する別の店員さんの姿が。

私に気づき、それはそれは自然に、なんとも気持ちよく迎えてくれました。

「さっき母が試着したニット、やっぱり私が忘れられないのでこっそりプレゼントしようと思ってまた来ました」そう伝えると、とても素敵な笑顔で感謝されました。

私を気遣ってテキパキ且つ丁寧にラッピングしてくれたのであります。

出来上がりがこちらです

愛だ

ラッピングを見た瞬間、心躍りました。

この包み方、愛がこもってる。

完璧だ。

得も言われぬわくわく感。

この買い物は「ニットを手に入れる」以上の経験をもたらしてくれたなとその時思いました。

スタッフさんは勿論そんな仰々しいことなんて微塵も考えてなかったかもしれませんが、お客にそう思わせてしまったらもう勝ちなのです。

素晴らしい接客だった

一度目の入店時から購入に至るまで、こんなにも買い物の歓びに高揚したのはおそらくはじめてかもしれない。 
ましてや自分の買い物ではなく、誰かのためのプレゼントでなんて。


年々思います
「安い」を買い物の最優先事項にしたくないと。

母はとても喜んでくれました。
私も感激です。

服の価値と接客の価値

お金を支払うという行為にはいろんなレイヤーの価値が交わり合っているよなあと改めて認識。

そしてこういう経験を重ねる度に問われてる気がする。

「あなたが提供できる価値はなに?」

ってね。





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