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おそろしく、お口に合わなかったチョコの記憶

小学4年生だった。


スーパーのバレンタイン特設コーナーにて

おともだちと吟味に吟味を重ね、


当時の私のセンスで

包装が最も美しい一品を選んだ。

ワインレッドの正方形の箱だった。


友達が選んだのは

こう言っちゃなんだが、

すごく子どもっぽい

ファンシーなパッケージのチョコ。


わたしは自分の大人びたチョイスに

ふふふふふ、と

思っていた。


ふたりがそれぞれに選び抜いたチョコ。

2月14日

それは結局、

渡すべき相手に渡せなかった。



放課後の校庭の中庭で

ふたりでチョコを頬張った。



ワインレッドの箱から取り出したそれは

ゔっっ、となるくらい美味しくなかった。

好きな子に渡せなくてせつなくて、悲しくてとかそういう事では全くなくて、

ただただマズかった。


なぜならば、

そのチョコにはリキュールが入っていて

わたしが欲しかった甘さが

ことごとく抑えられた、

ビターな味だったから。

それに対して、

ともだちのファンシーなそれは

パッケージどおりにチョコチョコしてて

とてもいけた。


その日わたしは

文字どおり

酸いも甘いも噛み分けた。

あのチョコを選んだわたしを褒めてあげたい。

あの頃も今もこれからも、

わたしはいつだって

年相応のものを選ぶつもりなんて

さらさら無い。








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