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◼️ほおずきの思い出作り

先週末、雨上がりの夕方の魚藍坂を歩いていたら、ほおずきを両手に抱えて歩く小さな女の子がいた。なんだかとても惹かれたので、近くのお花屋さんをのぞいてみた。五つほど連なった1本のほおずきがあったが飾り方が思いつかず、それを手に取ることはなかった。

数日後、浅草で毎年行われている「ほおずき市」が、例によって中止になったというニュースを見て、頭の中を魚藍坂で見たほおずきと女の子の姿がよぎった。行き場を失ったほおずきが呼んでいるような気がして、何かに取り憑かれたように、気がつくと鉢植えのほおずきの購入決済画面でカード番号を入力していた。

鉢植えのほおずきは、今週中に届くようだ。

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90年代当時。インターネットのなかった時代だからなのか、子供だったからなのか、時間の流れが遅く感じた。退屈なくらいに、時間が本当にゆっくり流れていた。

ママの本棚には料理のレシピ本や、新聞の切り抜きが乱雑に挟まったファイルなどが並べてあって、その中に『家庭の医学』だとか『生活の大辞典』のような分厚い本もあった。

ママは、だいたい困ったことが起こると、『家庭の医学』を引っ張り出してきた。例えば、汗疹が出てきたら、本の後ろのページのキーワード検索的なページ(何て言うんだったっけ?手引き?そんな機能さえ使わないから名称も忘れてる)から「あ行」・・・「あせも【汗疹】」を該当のページを探し出して、怪しい民間療法を試し出すということをしていた。

だいたい、きゅうりの切り口に塩をつけて汗疹にこすり付けるとか書いてあるのだ。怪しさマックスである。その実験台はいつも私と弟。

家にある大辞典で解決できない問題は、図書館へ行く。
ほぼ毎週末、図書館へ行っていた。週末まで待てる問題や疑問は保留とするが、時間が解決してしまうことがほとんどである。

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ほおずき 育て方
ほおずき 楽しみ方
ほおずき 飾り方

そんなものはネットで検索すれば秒で解決する。

でも、私があの時代の、ママが民間療法を試していた時代だったら?週末まで、ほおずきはどう育てるのか時々気にしながら、お家のどの場所に置こうかなと考えてみたり。近所のママ友に聞いてみたり。

いざ、週末に図書館でほおずきに関する本を借り、(もしかしたらほおずきだけ紹介するマニアックな本に出会えるかもしれない)ほおずきをテーマにした絵本なんかにも偶然出会ったりして。娘と一緒にほおずきの観察日記なんて書いたりして。

こんな風にゆっくりと一週間かけてほおずきについて考えたら、おばあちゃんになっても、ほおずきを見るたびにこの一週間を思い出すことができるだろうか?

私たちは、検索して知ったつもりになって、写真撮って、SNSに上げて、終わり。便利すぎて、思い出が一瞬一瞬で消費されてしまって、ちゃんと記憶に残っているのか不安になることがある。

ほおずきと一緒に今年の夏もたくさん思い出が作れますように。

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