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【読書メモ】BAD BLOOD

「一滴の血液ですべての病気を診断する」という壮大な理想を掲げたヘルステック・スタートアップのセラノス。

シリコンバレー最大の捏造スキャンダル!
セラノスの巨大詐欺事件の全貌を暴く!
というキャッチコピーに惹かれ、恥ずかしながらセラノスもCEOのエリザベス・ホームズのことも知らなかったのですが、どれだけの犯罪だったのかと期待して本書を手に取りました。


読み進めるうちに、この事件は巧妙な組織的犯罪というものではなく、CEOエリザベス・ホームズがパワハラと秘密主義で会社を統治し、嘘で塗り固めて資金調達を行った先にあったということがわかりました。

人が騙されていく状況を細かく丁寧に追えるという点で、この本はとても興味深かったです。
冷静に見れば怪しい点も目を瞑って無視してしまうという、いかに客観的に物事を見れないかということも学びでした。

その一方で、怪しさに気付いた人から船を降りていく。沈みゆく船に乗り続けるのか、どんなタイミングで降りるのか。

セラノスで働いていた人の心の機敏を感じることができました。

カリスマ性と話術だけでこれだけ多くの投資家や専門家が魅了され資金提供したりセラノスに参画したりしたかと思うと、恐ろしさを通り越して感心してしまいます。まるで小説を読んでいるかのような手に汗握るドキドキ感がありました。

指先に無痛の針をちょこっとさすだけで数百もの血液検査を行える、自宅で気軽に検査ができるという謳い文句は、どこまで本気で社会を変えるためであったのだろうかと感じました。

本書の最後に「第二のスティーブ・ジョブズになりたいと願うあまりに、いつのまにか健全な助言に耳を傾けることをやめ、ずるをし始めてしまった」と締め括られていますが、果たして本当にそうだったのだろうか?と考えさせられます。カリスマ経営者の心のうちは…?


最後に欲を言えば、登場人物一覧が欲しかったです。
出てくる人物が多く、似たような名前の人もいるので、長いけど一気に読むのをおすすめします!

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