【実録】義父と認知症・その時私たち #2境目は分からない

長年の趣味、毎年解禁になると1週間と日を開けず、
いそいそと通っていた鮎釣りからの帰り道に
自宅へ帰れなくなってしまった義父、
自宅のごく近くには来れているんだけど、ピンポイントでココ!と帰れないと言う状況だったようです。

と言うのも、家は45年ほど前に山を整備して作られた住宅街で、
メイン道路がズバッと通っていて、その左右に道が何本もあります。
大体区画割りも似たようなもので、家が建った年数も似たようなものです。
夫も越してきたばかりの頃、小学校の帰り道に迷ってしまってパトカーで送ってもらったという思い出があるそう。

義父は我が家に通じる道をうっかり間違えてしまい、
焦ってしまったのか、さらに間違えてしまい、
もっと焦ったのか、また間違えてしまい、、、と、
家を少し遠巻きにぐるぐると回ってしまったそうです。

うっかりしたり、疲れていたら、どの道も似ている住宅街なので間違えることがあってもおかしくないのかも、、、
私もたまに実家に行くと、曲がる道はどれだっけ(・_・?)と
1本手前で曲がり、アレ?アレ?となる時があります。
よく知っている道でも、いつもと見る方向が違うと、全く違う道に見えてしまって、あーこりゃイカンと元のメイン道路まで戻ってやり直しています。

だから大騒ぎするほどのことではないのかも、、、

でも、45年も住みなれた場所でこんなこと起きるのかな、、、

この時に私が気になったのは
義父が「迷ってない」と言い張ったことです。

義父は格好良く見せたい、間違ったら恥ずかしい、などと見栄を張るような人ではなく、これまでだったら「困ったなぁ、全然家につかんのだよ〜、イヒヒ」とちょっと子供のように肩をすくめて笑う、そんな印象でした。

「それが、迷ってない!」「何を言ってるんだ、ちゃんと帰ってきた!」と
大きな声で言い張ると言うんです。
恥ずかしくて隠しているという風でもなく、、、
本当に覚えていないのか?
それとも、迷っていたという意識じゃないのか?

うーん、どう受け止めていたらよいものか迷いました。
義母はボケと言い、義父は覚えていない

私は足の状態、靴、歩き方など「歩く」を総合的にサポートするお仕事をしています。
お客様は自力で歩けるシニアの方も多く、
介護予防のためにインソール調整やウォーキングレッスンに来てくださいます。
もっと住んでいる地区に貢献できるといいな、と考えて、地元の地域包括、医療や介護の関係者の方と、月に1度ほど自主的な交流と学びの会に参加していました。
その中でも認知症の話題はよくあがっていました。

この場で物忘れと認知症の違いを聞いたことがあるんです。
私はおっちょこちょいで、自転車で出かけた帰り道に、家のすぐそばのスーパーへ寄って、考え事をしていると自転車を忘れて歩いて自宅へ帰ってしまうということを度々やっていたました。
何回目か、また自転車を忘れたことに気がついてスーパーへ戻った時に、
ふと「私、大丈夫かしら?」
と心配になったので、「恥ずかしながら私ごとなんですが、、、」と聞いてみたんです。

すると、
「自転車を忘れたことを思い出せるんでしょ?だから認知症じゃないわよ〜。認知症ならやったことをすっかり忘れちゃうわよ」と皆様から教えていただきました。

私が認知症になっていたら
自転車に乗ってない、と言い出すとか
出掛けたことも覚えていない、と言うことだそうです。

義父が迷っていない、と言い張るのと聞きながら
急にこの時の会話が思い出されました。

この場合はどうなんだろう…………

目に見えない得体の知れないものが近づいてきたような
変な感覚がしたことを覚えています。

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