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なんで原油が下落したの?(後半)~需要が減っているのに供給が減らないのはなぜ?サウジvsロシアの思惑~

こんばんは、FPむーです。

ここ最近、原油価格が急落した話題でもちきり(なのは私の周りだけ!?)。原油について聞かれることが多いので、投稿してみました。前の記事の続きです。

Q.なぜ原油価格が急落したの?
原油の先物価格(5月物)が1バレル=23ドル→マイナス37.63ドルになりました。一日で56ドルも下がるなんて。
原油先物の取引が1983年に始まって以来、最低の水準。

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2000年以降で3回目の原油価格の下落。下落なんてもんじゃない、暴落。それが今回のコロナショック。

COVID-19の感染拡大の影響により、世界中で外出自粛。経済がまわってないのだから、当然原油の需要も激減。需要は30%減と言われています。需要が減ったなら、それに伴って供給も減らさないとバランスおかしくなるのに、供給はそこまで減っていないので、価格は暴落。

「え、なんで需要が減っているのに供給が減らないの?」っと思ったあなたへ。2020年の動きを見てみましょう。

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◆2020年から減産していた原油

原油価格って、どうやって決まるのか。前回の記事で書きました。供給量を調整することで価格を調整している、と。

・加盟国が価格を上げたい場合→供給を制限するために生産割当量を下方修正。
・加盟国が価格を下げたい場合→供給を増やすために生産割当量を上方修正。

「需要が一定であるとすれば」価格は意図した方向へ変わるのです。そう、みなさまお気づきの通り、需要が一定ではなくなったのです。

COVID-19感染拡大の影響で、原油需要は減っている。需要が減ったら供給を減らした方がいいんちゃう?ということで、OPECプラスが臨時の会議したんです。

あ、OPECプラスというのは、OPEC+ロシアなどの国のこと。

そもそね、OPECプラスは昨年12月から減産で合意していたの。だって、米中貿易摩擦等で世界経済が減速気味だったから。世界経済が減速しているなら、原油の供給減らさないと、原油価格が維持できない。

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ということで、今年の1-3月に日量50万バレルの減産拡大を行うことで合意。サウジは加えて自主的に40万バレルの減産を表明。

で、今年1月から減産して開始していたの。

◆その中で新型コロナの拡大

今年の1月下旬以降
新型コロナの拡大によってさらに経済が減速
→原油需要も減少
→もっと原油の供給を減らさないといけないよね
→さらなる減産の検討

で、3月6日に会議した。
結論から言うと、サウジとロシアが対立。

◆3月6日、サウジアラビアVSロシア、協調減産の拡大で合意できず

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<サウジ側の主張>
OPECの盟主であるサウジは原油価格を引き上げるべく減産を主張

この主張の背景は2つ
サウジの財政均衡に必要な原油価格83.6ドルとお高めだから。
・国の構造転換の原資を賄う国営石油会社サウジアラムコの海外上場に向けて企業価値を高めたいから(との思惑があったためとみられる)。

財政均衡に必要な価格が83ドル。だからなんとしても原油価格を上げたいわけ。原油価格が上がらないと赤字になっちゃうの。83ドル以上の原油価格が望ましいのに、当時の原油価格は40ドル前後。困りますがな。だから何としてでも原油価格を上げたい=供給量を減らしたい!これが、サウジアラビアの姿勢。

<ロシア側の主張>
これ以上の減産には慎重な姿勢。つまり、これ以上原油の供給量を減らしたくない!

この主張の背景は3つ
・新型コロナの影響を見極めるには時期尚早と判断したから。
ロシアの財政均衡に必要な原油価格42.4ドルとサウジに比べて低めだから。
・プーチン大統領の支持基盤である石油企業がもともと協調減産に不満を持っている(という思惑があったとみられる)から。

財政均衡に必要な価格が83ドルのサウジアラビアに比べて、ロシアは半額の42ドル。サウジほど原油価格の下落に困っていない。だから供給を減らしたくない。これがロシアの姿勢。

ぶっちゃけね、
減産拡大を主張するサウジ
VS
難色を示すロシア
というのは、お決まりのパターン。

大阪でバーンと指向けられたら、あうっと打たれて死ぬふりする、みたいな。

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サウジVSロシアのお決まりのパターンは、交渉戦術の一環としての面もあったと見られているほど。でも、今回はいつも以上にロシアの否定的な態度が目立っていたんです。

で、産油国が協調減産の拡大で合意できなかったので、原油価格が急落。
ちなみにロシアは、この協議が決裂に終わった直後、

「原油価格が1バレル=30ドルになっても6年間は予算を削減せずに執行できる」(シルアノフ財務相)

と強気の姿勢でした。この時はまだ40ドル前後でしたから。まぁ、今となっては、発言で出てきた1バレル30ドルを大幅に下回っているんですけどね!

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◆4月12日、OPECプラスで…

下のグラフを見てもらうと分かる通り、さすがにですね、原油が下がりすぎたのですよ。今までは60ドル前後だったのに、20ドル付近。3分の1って。

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原油価格が今までの3分の1ってさすがに大変。

ってことで再度話し合い。4月12日に、OPECとロシアなどの「OPECプラス」は、協力して減産することに合意。過去最大規模となる970万バレルの協調減産。この減産量、通常の需要から見て、約10%ほどの減産。

減産に反対していたロシアが強硬姿勢を改めたんです。そりゃそうです。
ロシアの財政均衡に必要な原油価格は42ドル。前回は強気な姿勢でいけたけれど、さすがに原油価格が20ドル台になるなんて、想定以上の暴落。ここまで暴落すると、ロシア経済そのものも長期低迷する危険があるからです。ロシアにとって、原油、大事ですから!

減産合意したから、原油価格は持ち直して上がる。みんな、そう思っていました。

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ところがどっこい。

10%の減産で合意したのに、原油価格は上がらなかったのです。
なぜか。
コロナの影響で原油の需要は30%減と言われていたから。10%程度の減産では不十分だとマーケットは判断したのです。

そんな中迎えた4月21日。


◆4月21日、暴落

20ドルほどだった原油価格が、一気に56ドルも下がって、マイナス37ドルに。

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なぜ暴落したのか、については詳しく解説してくれている人が多いので詳細は割愛しますが、簡単に言うと、前回の記事に書いた通り。

5月先物の現物渡しの期限が4月21日だったから。
4月21日に決済しないと石油そのものを引き取らないといけない。期限が迫った石油の出来高はとても少ない。商いが薄いと価格が動きやすいのはマーケットの常。

期限まで権利を持っていたら石油を引き取らないといけないけれど、タンクはパンパンで引き取れない。困った、誰でもいいから石油を引き取って!
投げ売りやー!って価格が暴落。

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まさか、マイナスになるなんて。歴史的低水準。原油価格がマイナスなんて、これから先も語り継がれるレベルかと思います。

暴落したのは5月ものだけで、出来高が少ないので、マーケットへの直接的な影響は少なかったのがせめてもの救い。

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(画像はhttps://nikkei225jp.com/oil/より)

以上、「なんで原油が下落したの?」でした。気が付いたら3000字超え。分かりやすかったよ!とか、なるほどね!と思っていただいた方は、ぜひスキをお願いします。次の記事を書く励みになります!

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(チャート画像は、全て三井住友銀行HPマーケット情報より)


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