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【短編】人付き合い

人付き合いって、どうしてこうも面倒なんだろうか。
新しい職場で働き始めてから2週間程経った帰り道、ふと溜息とともにそんな思いが頭をよぎった。

20代の頃はそれこそ友人は多いに越したことはないと、積極的に交友関係を広げていた。けれど、どうでも良い派閥や意味不明な上下関係等に振り回され続けているうちに、すっかり人付き合いが面倒になってしまった。

その思いは年々強くなるばかりで、今では気を遣う必要のない、ごく一部の友人としか親しい付き合いはしていない。

そんな自分でも、仕事を円滑に回すにはそれなりの人付き合いが必要だということは重々承知している。
なので面倒ながらもこちらから話しかけるなどの努力は無理のない範囲でしているけど、すでにできあがっている輪の中に連れ込まれたり連れ込まれなかったりと、人や日によって対応が変化する今の状況が正直つらい。

相手との距離感が縮まったかと思えばそうでもなかったりするし、なら一人でいるかと思っているとまた親しげにされたりするし。
その度に「どうするのが正解なんだ⁇」と頭を悩ませてしまう自分が嫌になる。

だからといって考えないようにすることも、スパッと割り切ることもできない。まさに負のスパイラルだ。
相手に直接問い質してみない限り正解なんてわかりっこないというのに、勝手にあれこれ想像して自分で自分のメンタルを削り続けている。

色々と面倒すぎて、いっそ人付き合いのまったくない職場で働きたいとすら思うこともあるけど、それはそれできっと何か物足りない気持ちになるような気がする。ようはただワガママなだけなのかもしれない。

こんな風に、ひとつの溜息から人付き合いの面倒臭さについて改めて思い返した末の着地点までを、何度も何度も何度も繰り返してばかりいる。
とりあえず今日は美味しいものを食べて、いつもより長めにお風呂に浸かろう。そしてビールを片手に好きなバンドのライブDVDを観て、まったりと過ごそう。

明日になればまた「人付き合いって面倒だなぁ…」と思う環境に嫌でも身を置くことになるのだから。

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