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2030年の九州、どうなる?「ONE KYUSHUサミット宮崎2024」を宮崎市で開催

コロナ禍を乗り越え、予測不能な時代を手探りで生きる今。九州を「ひとつの島」として捉え、経済圏や行政区域を越えて、九州全体の産学官民が一体となり地域づくりや人の往来を加速させる未来を描く取り組みがあります。
 
2024年1月12日(金)、宮崎市にある宮崎市民プラザに九州内外から約300人が集まり、『ONE KYUSHUサミット宮崎2024』が開催されました。本サミットは昨年の大分県別府市での開催に続き、3回目。
2030年、九州をどのような地域にしていくのか。さまざまな視点や価値観で語り合う中から醸成されたものとは?
 
本レポートでは、めぐるめくプロジェクトの「食卓会議」とコラボレーションして開かれた前夜祭と、翌日のサミットの様子をご紹介します。


【前夜祭】廃校を活用した「MUKASA-HUB」


ONE KYUSHUサミット本番前夜、前夜祭が開かれました。翌日のサミットが待ち遠しいと言わんばかりに90名が集まったのは、宮崎市高岡町にあるMUKASA-HUB。2011年に廃校となった旧宮崎市立穆佐(むかさ)小学校に、ONE KYUSHUサミットの会長を務める村岡浩司さんが新たな命を吹き込んだ場所です。
 
そもそもONE KYUSHUサミットは、ここで開かれた「九州廃校サミット」を前身として2020年に第1回が開催されました。

「みなさん、やっと会えましたね」
会場を見渡して発した、村岡さんのそんな言葉から前夜祭はスタート。まずは廃校活用をアカデミックな視点で見続けてきた宮崎大学の根岸裕孝教授から、廃校活用の課題や事例紹介がありました。
 
村岡さんと根岸教授に加え、ONE KYUSHUサミット副会長で福岡に拠点を置く石丸修平さんも参加。廃校サミットからお二方とともに活動を続けている一人です。
 
根岸教授:行政はまちの最大不動産所有者。廃校はじめ、公共不動産を民間のノウハウを活かしながら最大の便益を創り出すことは重要なテーマです
 
石丸さん:福岡では、行政が民間にサウンディングして公に情報提供をしながら、民間に任せられるところとそうでないところを明らかにしていっているところ。そういった意味でも公民連携は大きな意味がありますね。
 
村岡さん:九州廃校サミットから始まって、コロナをきっかけにもっと多面的なテーマを捉える必要性を感じて2020年、『ONE KYUSHUサミット』に名称を変更しました。廃校のテーマに関しては廃校学会で研究や取り組みを行っていただき、ありがたいですね。
 
まちづくりには、行政と民間の関わり方が大きなポイント。明日のサミット本番につながる、そんな声が聞こえるディスカッションとなりました。

めぐるめく食卓会議in宮崎高岡

続いて「めぐるめく食卓会議in宮崎高岡」と題して、めぐるめくプロジェクトから三者が登壇。三菱地所の広瀬拓哉、中部ガス不動産の兵藤太郎さん、70seedsの岡山史興です。
 
MUKASA-HUBはめぐるめくプロジェクト設立初期にいちはやく宮崎のローカルハブとして参画した特別な場所。地域の内と外の垣根を越えたつながりをつくる「めぐるめくプロジェクト」らしく、兵藤さんからの「東三河フードバレー構想」紹介や、同じくめぐるめくプロジェクトのローカルハブのひとつである「稲とアガベ」(秋田県男鹿市)の酒を主軸としたまちづくりについての広瀬による発表など、九州地域外の刺激的な取り組みを共有しました。

めぐるめくプロジェクトを通じて秋田と宮崎の地域を越えたコラボが始まり、宮崎の特産品「日向夏」を使ったクラフトサケを限定発売することを発表しました。
 
その後、この三者に村岡さんが加わり、岡山の進行で「タベモノヅクリや地域のこれからのまちづくり」をテーマにトークセッションが行われました。

岡山:めぐるめくプロジェクトは食でローカルを活性化しようとしている中で、そもそも、皆さんは「ローカルを活性化する」ってどういうことと捉えていますか?
 
村岡さん:10年ほど前なら、いわゆる活性化の定義ってまちに『賑わい』を取り戻すことだった。今は変わってきていて、頑張っている人が得意分野で戦えること。仲間が増えて応援の輪が広がること、そしてそれらが繋がって明るい雰囲気が醸成されていることだと感じます。
 
広瀬:子どもたちがまちを誇れること。人が集まって何かを盛り上げて、その後に熱量を残せるかどうかがポイント。
 
兵藤さん:地域に住んでいる人々が誇りや愛着をもって過ごせること。ワクワクしていろんなことにチャレンジできるまちなんだって誇れることが活性化につながる。

岡山:今いる大人にできることはなんだと思いますか?
 
村岡さん:以前は地域の人々にも余裕があって、空き時間にボランティア的なこともできた。今は小さくてもいいから持続可能な商売の種をつくって、しっかり稼いだ方がいいと感じている。ローカルのスモールビジネスにおける成長を加速していく金融手段が多様性を持ち始めた。クラウドファンディングも活発に活用できる時代になったし、地域によっては信用金庫や保証協会と組んで応援する人を探している、そんな時代になった

岡山:デベロッパーとしてまちにいる人たちに対してできることってたくさんありそうですね。
 
兵藤さん:今開発している複合ビルを活用した、就農支援に特化したシェアハウスを今考えています。コミュニティ形成や生産者イベントなど、地域の人たちとつながりを大切にしながらまちを元気にする仕組みをつくっていきたいと考えています。」

岡山:秋田男鹿の「稲とアガベ」も酒づくり以外に地域への取り組みがどんどん広がっていますね。
 
広瀬:稲とアガベの岡住さんは『10年かかることを3年でやる』と言って、会社設立時にやるといっていたことを次々に実現しています。クラフトサケで実績をつくり、そこから資金調達して、レストラン、食品加工場、ラーメン屋を立ち上げて今や従業員30名。そのうち10数名は県外からの移住者。更に、ホテルや蒸留所の建設も予定していて、地域への雇用創出にも取り組んでいますね。

村岡さん:岡山さんたちの学童保育forkも素晴らしい取り組みだよね
 
岡山:我々の学童保育施設は子どもが40人、来春は55人になる予定。自己資金で始めたことに、行政が興味をもち始めた。スタートアップでいうところの1つのEXITのあり方かなと思っています。
 
村岡さん:民間が頑張ってうまく行き始めたところで、行政が官民連携を一緒にやろうと言ってくるケースが徐々に増えてきた。その方が無駄なお金も溶けていかないし、頑張る人が報われるような世の中になってきている気がする。
 
岡山:最後に、みなさんは九州に何をコミットしますか?

広瀬:越境して共有し合う関係性をどう作るか?にコミットする。めぐるめくの拠点は九州地域にまだ2つなので、まずは7つの県それぞれの地域と連携を目指してやっていきたい
 
兵藤さん:豊橋市の複合施設emCAMPUSで九州パンケーキの販売も始めました。東三河と九州は距離があるが、だからこそ越境して交流を深めていきたい。
 
村岡さん:世界で見ると、九州は地図に載ってない、発見されていない秘境。温泉やサウナがあって、この多様な彩りある九州をどう発展させていくか。アジアや世界の中で論じていくことは本当に大事なことと考えています。
 
めぐるめくプロジェクトを介してつながった地域や事業者。それぞれの事例を共有・分析しながら、これからの地域、これからの九州に希望を持って向き合う時間となりました。

宮崎と秋田のクラフトサケと長崎県五島列島「椿やさい」の料理で懇親会

いつの間にか満員の人で溢れかえるMUKASA-HUB。料理のおいしそうな香りがただよい始めました。宮崎の特産品「日向夏」を使った稲とアガベのクラフトサケと共に、数々の料理には、長崎県五島列島に移住して3年前に「椿やさい」の生産・販売を始めた八代侑紀さんから、4種類の旬の野菜が提供されました。
 
「元旦から辛いニュースがありますが、ぜひ前向きに日本そして九州の未来を考える良い意見交換、交流ができればいいなと思っております」
と宮崎市の清山知憲市長による乾杯の挨拶で、懇親会が始まりました。
 
久しぶりの笑顔、初めましての声があちこちから。ONE KYUSHUサミット本番を翌日に控え、越境と交流、情熱の輪がすでに生まれ始めていました。

【ONE KYUSHUサミット当日】

【オープニング】宮崎市の清山市長の開会宣言で開幕

宮崎の中心市街地に位置する宮崎市民プラザ内。会場のオルブライトホールは九州内を中心とした多様なプレイヤー約300人が、高揚感を漂わせながらONE KYUSHUサミット開幕を待っていました。
 
10時、本サミットの実行委員長を務める髙田理世さんと学生スタッフの町田リョウイチさんが登場。
 
「ONE KYUSHUサミットはどなたでもこの場に立って、一緒に盛り上げていただく場です。ここから共創の輪が広がっていきますよう、今日は1日どうぞよろしくお願いします!」
 
そして、宮崎市の清山知憲市長が壇上へ。

「多種多様な公共の仕事はもはや役所だけでは担いきれず、民間の皆様のお力を借りるべく宮崎市は今まさに公民連携を進めています。本日は市の職員も多く会場におりますので、ぜひ積極的に交流をしてください。
それではONE KYUSHUサミット宮崎2024、スタートいたします!」
 
高らかに開会を宣言し幕を開けました。
 
本サミットは、数々のセッションやピッチが企画され、多世代かつ多様なプレイヤーが登壇。先の見えない不確実な時代に“2030年の九州”を熱く語る1日となりました。
 
本サミットのスケジュールは以下の通り。

10:00〜10:05 オープニング「ようこそ宮崎へ!ようこそ九州へ!」
                超多世代!ピッチ「私にとっての"九州"とは」 
10:20〜10:50 キーノート
11:00〜11:50 セッション① 2030年の九州
      <ライフスタイルとそれに伴う産業の変化>
11:50〜13:00 休憩・ランチタイムセッション
13:00〜13:45 九州革命ピッチ
13:50〜14:40 セッション②2030年の九州
      <オープンシティとは?宮崎の視点から九州を考える>
 14:50〜15:40 セッション③ 2030年の九州
      <世界につながる地域を目指して>
15:50〜16:40 セッション④ 2030年の九州
      <西のゴールデンルートに向けて>
16:40〜17:00 ワークショップ/シェアタイム
17:00〜17:30 クロージング、集合写真撮影
17:30〜18:30 ネットワーキング・交流タイム

【超多世代!ピッチ】私にとっての“九州”とは?

まずは、「超多世代!ピッチ」として、年齢も所属もエリアも多様な9名の多様な方々がステージに登場。九州に対する思いを宣言しました。
想いのこもった熱い言葉で、会場の空気を一気に高揚させてくれました。

久保友佑さん(西日本高速道路株式会社 九州支社 総務企画部)
「九州は“宝箱”。地域に寄り添い、地域によろこんでもらえるものを創りたい」
 
山下卓寛さん(LR株式会社経営企画室)
「鹿児島で廃校を活用したコミュニティスペース『日々nova』運営中。地域の人たちがより良く生きるための施設にしたい」
 
おとみちゃん(新富町公式キャラクター)
「新富町に住んでいる小学5年生です。ONE KYUSHUの一人として、新富町だけじゃなく九州のいいところを知って広めたいです」
 
古庄伸吾さん(PREO DESIGN合同会社代表)
「チャレンジングな場所。九州のものづくりをアップデートしていきたい」
 
谷川徹さん(e.lab代表)
「自分にとって九州は『自己実現ができる場』。これからもずっと関わっていきたい」
 
加納ひろみさん(KIGURUMI.BIZ代表取締役)
「キャラクターの力で、九州から全国に“楽しい”を発信していきます」
 
前田希実さん(conext代表)
「温かい人と人の繋がりがある場所。九州を学生が活躍できる場に!」
 
崎原秀利さん(宮崎市都市戦略課公民連携推進室)
「宮崎は誰もが挑戦できる場。ONE KYUSHUサミットがみなさんにとって始まりの場となりますように」
 
大井建史さん(株式会社エーゼログループ 錦江町オフィス代表)
「“鹿児島県の”錦江町から、“九州の”1エリアとして認知されるよう活動していきたい」

【キーノート】ONE KYUSHUサミットが生まれた背景とこれから

まずはONE KYUSHUサミットがうまれた背景やきっかけ、今後の展開について紹介する「キーノート」で、これから始まるセッションがより理解が深まるための事前共有がなされました。ONE KYUSHUサミット副会長である石丸修平さんが、深い造詣と地域への情熱をベースに丁寧に説明しました。
 
石丸さんは、福岡をベースに地域デザインや産学官民連携を推進してきた方。会長の村岡さんとともに2020年、ONE KYUSHU宣言を掲げた一人です。
 
ONE KYUSHUサミットは、2018年から始まった「九州廃校サミット」に端を発します。毎年増える廃校問題を通じて地域課題や九州の未来について語り合ってきました。そんななか、2020年春コロナで私たちの生活は一変。人の往来が制限され、経済がどん底まで落ち込むなか九州を見つめ直して見えてきたのは、行政区域に囚われず、リージョンとして人流や経済を回すことの可能性。廃校だけではなくもっと多面的に九州の未来を語り合おうと、ONE KYUSHUサミットに名称を変えて、2020年7月にオンラインで第1回が開催されました。
 
3年後の2023年、大分県別府市で第2回を開催。そして2024年、宮崎市で第3回となる本サミット開催という運びになりました。
 
「これからの九州に必要なことは、『産学官民が連携して共創していく』こと。もはや一つの担い手が何もかもやっていける時代ではありません。そうした暗い側面を認識しつつも、新しい九州をどう考えていくのかを希望を持って議論していくことが大切です」
 
今回語り合う“2030年の九州”について、大前提をしっかりインプット。九州の未来、私たちの行動を考え共有するセッションの始まりです。

【セッション①_2030年の九州】ライフスタイルとそれに伴う産業の変化

▼パネラー
川原卓巳さん(Takumi Inc. Founder/プロデューサー)
齋藤潤一さん(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 代表理事/AGRIST株式会社 代表取締役CEO)
齋藤隆太さん(株式会社ライトライト 代表取締役)
▼モデレーター
石山アンジュさん(一般社団法人シェアリングエコノミー協会 代表理事)

世界、地球、地域を行き来する思考の中で
“自分”を考える

いよいよセッションスタート。
セッション①は、視座を高く視野を広くしたところから、2030年=ちょっと先の未来を考えます。登場した4名は、国内そして世界を飛び回り活躍している方ばかり。
 
「2030年、どうなりますか?」
 
モデレーターを務める石山さんの投げかけに、まずは“こんまり”こと近藤麻理恵さんのプロデューサーとして世界的に活躍する川原卓巳さんから。
 
川原さん:誰もわからない。これまでのデータから見て暗いシナリオで語られるけれど、僕たちが暗く生きる必要はない。世界190カ国に配信するなかで生まれたコミュニティの人たちと、僕らが交流して感じているのは、自分自身がときめくことに素直になって生きようとする人が増えている、ということ。個の単位での幸福度が上がるとすれば、2030年は幸せな未来になっていると思う。
 
事業承継プラットフォーム「relay(リレイ)」を運用し、全国各地の自治体と連携した事業に取り組む齋藤隆太さんはこう話します。
 
齋藤(隆)さん:いろんな意味で収斂が始まると思っている。地方は人口や働き手がどんどん減っていき、住民サービスの質が落ちると人は住みたい町に住めない、もしくは住みたいけれど不便すぎるから引っ越すようになる。そうして最終的には収斂された場所に住むしかなくなるのではないか。
 
さらに石山さんから、「世界では170もの紛争が起こっていて、国内では政治不信、不確実な世の中で私たちはどう生きるべき?」との質問で、私たちの視点をぐっと広げる言葉があふれます。
 
齋藤(潤)さん:資本主義から“地球主義”への変革と追求が大事だと思っています。自分たちの地域を良くしたいなら、地球を良くすることを考える必要がある。自分のまちだけ良ければいいというのはありえない時代。これからは“地球”に置き換えて考えよう。
 
齋藤(隆)さん:僕の会社では『地域に、光をあてる』というミッションを掲げている。広く捉えて考えることも必要だがグラデーションはあるし、だれもがそうできるわけではない。あり方を変えていける柔軟な人は変わっていけばいいし、そうじゃない人に寄り添うのが僕たちの役割。どちらが正しいかではなく、自分たちの幸せを実現できる経営者が増えることが大切で、互いにリスペクトし会える状態をメディアや行政が作っていってほしい。
 
川原さん:僕は今世界中の人とのつながりの中で生きているけれど、日本の中だけにいた頃の自分にとっては多くのことが他人事だった。物ごとを自分事として捉えるようになるためには、もっと越境して友だちを増やすべき。いろんなエリアに友だちがいたら、その地域のことを本気で心配するし、考えるはず。
 
最後に「今日から踏み出すアクション」として、こんなメッセージが届けられました。
 
齋藤(隆)さん:『ジャストサイズ経営』の一言に尽きるかと。誰を幸せにするためにやっていることなのか?を今一度捉えなおしてみませんか?
 
川原さん:片づけましょう!『ジャストサイズ経営』の個人版が“片づけ”。自分の周りが片づいて、世の中に目を向けられるようになることが最大の社会変革です
 
齋藤(潤)さん:『いま、ここ、じぶん』を大切に。自分が何にワクワクするのかを考えて、今すぐ行動に移しましょう!

九州から革命を起こすプレイヤーたち

昼休憩をはさみ、午後は本日2つ目のピッチ「九州革命ピッチ」からスタートしました。登壇者は下記の6名です。

●生駒 祐一さん(テラスマイル株式会社 代表取締役)
●山﨑 愛美華さん(宮崎大学農学部応用生物科学科 3年)
●秦 裕貴さん(AGRIST株式会社 代表取締役兼CTO)
●松田 稜平さん(株式会社ライトライト 地域連携推進チーム 自治体・アライアンス窓口)
●園田 正樹さん(株式会社グッドバトン 代表取締役)
●賴 青松さん(慢島生活有限公司 責任者)

アグリテックから微生物発電、事業承継、IT活用、半農半Xなど、さまざまな分野で社会課題の解決に挑戦するプレイヤーの皆さんたち。新しい視点と新たな技術、考えのもと、果敢に挑戦している様子が伝わりました。夢ではなく、新しい未来をもたらす“革命”がこの九州から生まれているのです。

【セッション②_2030年の九州】オープンシティとは?宮崎の視点から九州を考える

▼パネラー
清山知憲さん(宮崎市長)
米良充朝さん(共立電機製作所 代表取締役社長/令和2年度 日本商工会議所青年部 会長)
山本遼太郎さん(北九州市 官民連携ディレクター)
▼モデレーター
石丸修平さん(ONE KYUSHUサミット 副会長)

セッション②のキーワードは「オープンシティ」。2023年12月、宮崎市は公民連携を掲げて宮崎オープンシティ推進協議会(通称:MOC)※の翌年4月の発足を発表し、準備を進めています。
 
※宮崎オープンシティ推進協議会(通称:MOC)/ヒト、モノ、情報が集まり、常に門戸が開かれたまちづくりを進めるために考え、実践(Think & Action)する組織。また、公民連携、産学連携、民間同士の連携の手法により共創を推進する「場」を創設する組織。
 
ともにMOCの発起人である宮崎市の清山市長と民間代表・米良充朝さん、そして北九州市で官民連携ディレクターを務める山本遼太郎さんがパネラーとして登場。それぞれの経験や社会情勢から、目指したい方向性を確認し合うディスカッションが繰り広げられました。

清山市長:行政の資金は税金なので、事業をするにもハイリスクな部分は取り組みが難しい。公民連携して、民間の力もお借りしながらともにやっていきたいと思っている。宮崎市は城下町でもなければ長い歴史があるわけでもなく、外から多様な人が集まってきてビジネスをはじめた地域。これからも、自由に挑戦を始められるような場所にしたい。
 
米良さん:団塊世代が活躍していた時代は、日本は技術大国で、技術の高さを競いながら後からお金がついてきた。先日中国でものづくりの現場を見たら、すでに日本の何歩も先を行っていた。取られる技術など日本にはもうない、と感じた。
強い国とは強い地域の集合体。強い地域は強い個人、気概のある人たちの集合体。だから人にフォーカスし、人の力を盛り上げていける地域でありたい。
 
山本さん:北九州市は経済成長を第一優先に決めた。毎年7000人ずつ人口が減少するなか、経済成長すれば人口増加に間違いなくリンクする。北九州市の特徴として、高専から大学院まで理系学生・理系人材が多いこと。今はその人材が卒業とともに外に出てしまっているが、もっと活用できるのではないか。官民連携ディレクターとして、これから新しい市長とともに新しいビジョンを掲げて変えていこうとしている。
 
今回のONE KYUSHUサミット実行委員会は、宮崎市職員の方々も加わり組織されました。そうすることでお互いの理解が進みサミットを実現した経緯からも、「混ざる」ことの大切さを確認し合いました。
 
「今回宮崎市さんはMOCという旗を立て、民間と連携する意思があることを表明したわけです。我々ONE KYUSHUとしても自己実現プラットフォームとしてもっと発信していくことが大事だと感じました」
 
モデレーターの石山さんの言葉で本セッションは終了しました。公民連携の旗揚げをした宮崎市で、これからどのような動きが生まれてくるのでしょうか。

【セッション③_2030年の九州】世界につながる地域を目指して

▼パネラー
大瀬良 亮さん(株式会社遊行 代表取締役)
高峰由美さん(株式会社ブルーバニーカンパニー 代表取締役)
橋本 司さん(福岡地域戦略推進協議会 シニアマネージャー)
▼モデレーター
村岡浩司さん(ONE KYUSHUサミット 会長)

このセッション③では、世界から九州はどう見えているのだろう?海外とのつながりのなかで大事なことは何だろう?そんな話題から九州を俯瞰的に捉えます。
 
「九州をデジタルノマド※の聖地へ」と、新しいインバウンドの形を模索している大瀬良さん。場所を問わず働けるデジタル人材を世界から福岡に集めて滞在してもらい、福岡を拠点に九州の観光や地域との交流を楽しむモニターツアーを実施したそうです。参加者50人の国籍はなんと24カ国。2000万以上の経済効果を生んだとのこと。
※デジタルノマド/IT技術を活用し、場所に縛られず(国内外を問わず)、「ノマド(遊牧民)」のように旅をしながら仕事をする人達のこと。
 
大瀬良さん:食、スタートアップ支援、交通の利便性、適度な規模感、自然が近い、そして何より安全性が高いという魅力に気づき、参加者たちは九州をめちゃめちゃ好きになってくれました。九州のデジタルノマドの可能性は非常に高いです。今は『KYUSHU』が知られていないので、これから『KYUSHU ISLAND』として世界で認知が広がるといいですね。
 
台湾へ100回以上もバックパックで行き来しているという高峰さんは、様々な事業やプロジェクトを通して台湾の人たちとつながり、今や関係人口5000人超。台湾は今日本以上に少子高齢化が急激に進んでいて、地方創生に取り組んでいるそう。「台湾は日本からたくさんのことを学んだ。日本は台湾から何を学びたい?」そう尋ねられて答えられなかった、と話す高峰さん。
 
高峰さん:これからの交流で大事なのは、『do』じゃなくて『be(あり方)』、『attitude(態度)』だと思います」

福岡から参加している橋本さんは、自らスタートアップ企業の経営者でありながら、行政とともにスタートアップ支援に携わる専門家。
 
海外と九州がつながる動きに対する質問に、橋本さんは「福岡は昨年末から急激に海外の人が増えた」と話しながら、宮崎についてもこう話しました。
 
橋本さん:昨日、宮崎市役所の職員さんと話して驚いたのが『熱量の高さ』。これは大きなポテンシャルではないでしょうか。また他のセッションで『宮崎は外から多様な人が集まってきてビジネスをはじめた地域』とありましたが、実際に受け入れやすい土壌があると感じました。情報発信に工夫すればもっともっとおもしろい都市になると思います。
 
MOCでスタートアップ支援にも乗り出す宮崎市。専門家からのポジティブな評価が背中を押してくれそうです。
 
最後はモデレーターの村岡さんが「福岡が拠点となり九州全体への『送客』の設計が必要」であることや、「人と人、個人がつながり熱量を持って交流する」ことの重要性等を改めて確認して終了。次のセッションにつながる材料が散りばめられた内容となりました。

【セッション④_2030年の九州】西のゴールデンルートに向けて

▼パネラー
日野 昌暢さん(博報堂ケトル チーフプロデューサー)
八代 綾子さん(株式会社いきいきファーム 専務取締役)
長田 将明さん(公益社団法人宮崎市観光協会 常務理事 事務局長)
▼モデレーター
持留英樹さん(株式会社Glocal K 代表取締役)

2025年に開催される「大阪万博」。インバウンド需要が高まるこの時期に、東京を中心とした東のルートではなく、大阪より西のエリア、特に九州にも来てもらいたい。自治体の枠を超えた動きが見える今、ONE KYUSHUで取り組める「西のゴールデンルート」を考えよう、というのがセッション④のテーマです。
 
登壇したのは、九州の価値を掘り起こし紹介するメディア「qualities」を運営する日野さん、長崎県五島列島に移住して「椿やさい」を生産する八代さん、宮崎市観光協会で地域活性に取り組む長田さん。そして、元KBC記者で株式会社Glocal K 代表取締役の持留さんがモデレーターとして登場しました。
 
まず、「西のゴールデンルート」を提案するのは、日野さん。
 
福岡の「豚骨ラーメン」からスタートして、佐賀は「嬉野温泉」や「お茶」、長崎の雲仙では「火山」「温泉」そして「有機野菜」。フェリーで熊本の天草に渡り、「キリシタン文化」や「イルカウォッチング」…宮崎はニシタチの「スナック文化」や高千穂の「神話」も登場しました。
 
「その土地の人が価値に気づいたり、外の人たちと一緒になって磨き上げたりすれば、きっと楽しいルートができると思います」
九州の新しい価値が可視化されたプランに、モデレーターの持留さんも「これ、実現したら絶対楽しいですね!」と期待に胸を膨らませている様子でした。
 
宮崎市観光協会の長田さんからは、プライベートジェットを使った富裕層向けプランの提案がありました。一緒に登壇する八代さんの地元、長崎県五島の五島つばき空港と宮崎空港を結び、ラグジュアリーなホテルに泊まったりゴルフを楽しんだり、神楽や宮崎牛といった宮崎の観光資源も盛り込んだもの。交通アクセスに課題のある宮崎は、プライベートジェットも一つの可能性と言えるかもしれません。

最後に、実際に地域で活動する“椿やさい”の八代さんに、「西のゴールデンルート」に対する当事者としての意見を聞きました。
 
八代さん:椿やさいを生産するいきいきファームの八代さんは、7年前に大阪より移住。台風は多いけれど春夏秋冬が楽しめて海がひときわ美しいのが五島の魅力だそう。人口減少や担い手不足といった課題と向き合いながらも五島の自然と共存し、特徴ある野菜作りに取り組んでいる八代さん。ホテルとのコラボレーションでより深い農業体験のプランをつくるなど、最近は外への宣伝活動やイベント参加も積極的に活動している様子が伺えました。
 
最後に「2030年に向けて今私たちができること」をそれぞれがシェア。
 
長田さん:一つひとつ魅力あるコンテンツを作っていき、インバウンド取り込みをやっていきたい。
 
八代さん:椿やさいを、自分たちだけではなく一緒に作ってくれる人たちとつながっていきたい。
 
日野さん:西のゴールデンルートを作ってインバウンド誘客するなら、地域の人たちが広域でつながり、ONE KYUSHUで取り組んで実現してほしい。そのきっかけになればうれしく思う。
 
大阪万博に向けた「西のゴールデンルート」という、ONE KYUSHUで取り組むべき具体例が可視化されました。1人ひとりがこれからどう行動に移すかが試されているようでした。

【クロージング】

▼パネラー
永山英也さん(宮崎市 副市長)
石丸修平さん(ONE KYUSHUサミット 副会長)
髙山理世さん(ONE KYUSHUサミット 実行委員長)
▼モデレーター
村岡浩司さん(ONE KYUSHUサミット 会長)

最後のクロージングは、小川 綾さん(宮崎市都市戦略課)によるグラフィックレコーディングで各セッションを振り返りながら、いよいよサミットは終盤へ。

永山さん:今回のONE KYUSHUのように、人々が繋がり合い協力し合う流れができることの方が大切です。仕組みだけ作ってもうまくいかないし、流れができてから行政の仕組みをもう一度議論する方がいい。MOCの4月の組織づくりに向けて必死に取り組んでいきます。
 
石丸さん:コロナが終わったこのタイミングで2030年の九州を語るにあたり、新しい視点や進むべき方向性の示唆を浴びることができて、いろいろとアップデートされた感動的な回になりました。

ONE KYUSHU会長の村岡さんは会場を見渡し、参加してくれた九州の仲間たちに感謝を伝えながら、このように締めくくりました。
 
村岡さん:今回、宮崎市がONE KYUSHUサミットを共催として誘致してくれました。官民連携、オープンシティといった大切なキーワードも生まれてきているように思います。
 
世界から見たら、九州ってまだ発見されていない、全く知られていない島。だからこそ自分たちが感じる、僕らだけが知っている九州の魅力や面白さを可視化して言語化していき、世界に、アジアに発信していくのはすごく大事なことではないかと思うんです。
そして今回の能登半島地震を見ても、県や自治体単位ではなくリージョン単位でつながって支え合うことの大切さを感じました。
 
 
 ******
 2030年の九州はいかに?本サミットに「答え」はありません。得られたのは、私たちが目指すべき方向性の示唆と、確かな人と人のつながり。それぞれが新たな一歩を踏み出し、ONE KYUSHUの情熱と波動を増幅させながら、2030年の九州を明るく描いていくことを予感させてくれました。

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