入手困難グルメの魅惑〜おやつ編〜
世の中には美味しいものがありすぎる。これから仮に約60年生きるとしても21,900日、食事の機会は1日大体2〜3回だとすれば、1回1回の食事がいかに重要なのか痛感する。
だって新しいお店も開拓したいし、気に入ったお店は何回もリピートしたいし!
私は食べることが好きで、B級グルメや赤ちょうちん系のリーズナブルなお店から、頻繁には行けない、とっておきの高級店までなんでも来い。
最近は、色々な意味で簡単には手に入らないグルメを目指すことにもハマっている。
入手困難なものはそれなりに理由があるし、関門をくぐり抜けて出会った特別な食べ物を口に運んだ瞬間の、あの達成感は何ものにも変え難い。〝掴み取った感″が、その食べものの美味しさを増幅させるのだ。
今日は私が幸運にも巡り合うことができた、とっておきのおやつを紹介していきたい。
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「タケノとおはぎ」の日替わりおはぎセット 入手困難度★
東京・桜新町に店を構えるおはぎ専門店、「タケノとおはぎ」。
初めて知ったのはInstagramで、フォローしている人がもらった美しい手土産の写真を見たとき。
芸術品か!?と思う見た目のそれは、おはぎだった。
木箱にぎっしり詰まった美しい餡子の花。1日3〜4セットのみ注文を受けている、オーダーメイドおはぎ。永遠に眺めていられそうだ。
いつか誰かへの贈り物にしたい…!と思いつつ、保存料を使っていないので賞味期限は当日中だったりと中々ハードルが高い。
ということで、毎日の「日替わりおはぎセット(1,900円)」を友人が入手してくれた。
こちらも1日限定50セットのみの販売で、事前予約が必要。14〜18時の間で受け取り時間が決まっていて、配送も行っていない。
そうして手に入れた7種の日替わりおはぎがこちら!
ア〜ッ、かわいすぎる!!!!!
見た目が美しいのはもちろん、マンゴーとココナッツ、麻の実ときな粉、ほうじ茶とたくあんの醤油漬けなど、想像もつかない味のおはぎがまんさいで、どれから食べようか迷ってしまう。
やわらか〜い餅米と餡子の組み合わせは顔がほころぶ美味しさで、おはぎの魅力を再認識した。
誰かへの手土産にも、自分へのちょっと贅沢なおやつにも。ぜひ食べてみてほしい。
「エシレ・メゾン デュブール丸の内」ガトー・エシレ ナチュール 入手困難度★★
「丸ごとバターでできてるのか!?」と思うような、インパクトのある見た目。フランス産発酵バター・エシレバターをふんだんに使ったバタークリームケーキが、「ガトー・エシレ ナチュール」である。
洋食レストランやホテルの朝食でバケットとともにバターが提供されるとき、わずかなパン片に対してほぼバターを食べているのでは?という感じのバランスでかぶりつくのが至福だ。
高級バター・エシレバターを丸ごとそのまま食べられたら……なんて想像するだけで背徳感でいっぱいになるが、この「ガトー・エシレ」にはその夢を叶えてくれそうなロマンがある。
1台5,940円。購入できるのは、エシレバターの専門店「エシレ・メゾン デュブール丸の内」のみ。
しかも1日15台前後しか販売されず、予約もできないので開店に合わせて並ぶしかない。
ずっと憧れていたのだが、友人が買ってきてくれると言うではないか…!
その日は金曜日。お店は10時オープンで、友人が到着したのは朝8時45分。
配られた整理券は、12番目!!!
その日の夜集合し、ついにご対面したガトー・エシレ。夢にまで見たケーキ!!!憧れすぎて、芸能人に会った気分だ。
脳みそが溶けるようなバタークリームに、一発ノックアウト。もう言うことはありません。
ちなみに一緒に買ってきてくれた「サブレ・エシレ」も大層美味しく、香ばし目に焼かれたバターサブレは幸せの塊だった。
「虓(コウ)」カヌレ 入手困難度★★★★★
それはまさに、幻のカヌレ。
その日私と友人は、2週間後に訪ねるもう1人の友人の実家への手土産に頭を悩ませていた。なぜかって、その友人のお母さんがとんでもないグルメ&トレンドキャッチャーだからである。
しかも、毎日のように人から手土産を貰う家業をやっているので、普通に商業施設のスイーツフロアで買えるくらいの品では満足してもらえないと考えた。
いや別に、手土産は気持ちなのでそこまで気合いを入れなくてもいいのだが、食と贈り物を愛する私と友人は、せっかくならお母さんにサプライズを届けたい、と思ったのだ。
どこで知ったのかは失念したが、ふと思い出したのが「虓(コウ)」のカヌレ。
ここはなんと、お店の住所を公開していない。
元々同じ店名のフレンチレストランの手土産として販売されていたこのカヌレ。
初めは銀座にこのカヌレだけのお店をオープンさせたのだが、住所がネットなどで割れてしまったからか都内某所に移転した。
その入手困難っぷりは凄まじく、住所非公開なのに、お店に直接行って電話番号を入手し、電話をかけて予約して後日受け取りに行かないといけない。
私はあらゆる手を使って移転先が描かれたざっくりとした地図を入手。
うだるような暑さの7月、慣れない駅をウロウロしながら何とかお店を発見したものの、何とドアも窓も閉まっている。
万事休す…!と思い、2〜3分周囲をウロウロした後店先に戻ると、お店の前で店主らしき人と近所のマダムが談笑しているではないか……!
おずおずと近づくとマダムが「あら、お客さん?」と優しく話しかけてくれたので、「カヌレを予約したくて……」と伝えると、店主の女性が名刺を差し出してくれる。
私とカヌレが繋がった瞬間だった。
その後電話をかけ、1箱3,000円のカヌレを3箱予約。後日また受け取りに行った。
高級感のある箱に、10個の大ぶりのカヌレが並んでいる。ちなみに、箱の中にはお店の地図が入っていた。
箱を開けるだけでバターの甘い香りがふわっと香り、天にも昇る気分。
しっとり香ばしいカヌレを頬張りながら、これを入手するまでのRPGゲームばりの困難な道のりを思い出していた。
ちなみに友人のお母さんも「これは見たことない!」と大喜びしてくれ、私と友人はニヤッと勝利を分かち合った。
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この他にも、たくさんの素敵なおやつに巡り合ってきた。
一世を風靡している生ドーナツ店「I'm donut?」のドーナツは29年間食べたことのない食感で衝撃的な美味しさ。「流行りものでしょ」なんて言わず、騙されたと思って食べてみてほしい!
オンラインショップなどでも買えず、北海道でしか売っていないという点では「六花亭」のポテトチップスも入手困難おやつかもしれない。奇を衒わない素朴な塩味ながら、しゃくっと優しいじゃがいもの歯ごたえに、妙にクセになる旨味……あれは何の味なんだろう? 札幌に行ったら必ず買ってしまうおやつの1つになっている。
私はクッキーも大好きで、溜池山王にある「ツッカベッカライカヤヌマ」のクッキー缶「テーベッカライ」は王者の風格だ。人気のため当日店頭販売で手に入れるのは困難なので、電話で事前予約が必須。お値段もそれなりにするが、いかにも「特別な食べものですよ」という雰囲気のブラックの缶に美しく並ぶクッキーを口に入れると、天にも昇る気分になる。
クッキーと言えば、香港の「ジェニーベーカリー」も欠かせない。数年前は香港でしか買えなかったが、最近は日本でも買えるお店があり、オンラインショップでも手に入るようになった。ちょっとわざとらしいくらいのシャクッとした食感と芳醇なバターの香りは唯一無二で、「あ〜、あれ食べたい……」と禁断症状が出てしまうこと請け合いだ。
未だ味わったことがない憧れのおやつもまだまだある。
福島県「ゼリーのイエ」の、色とりどりのキラキラなゼリー。鎌倉にある「ハウスオブフレーバーズ」の、1ピース2,700円(紅茶orコーヒーセット)のチーズケーキ。それから、会員しか購入できない村上開新堂のクッキー缶。
最近はオークションサイトやフリマアプリで、定価以上のお値段でこうした入手困難おやつが転売されているとも聞く。
中々手に入らないスイーツをどうしても食べてみたい、その情熱は痛いほど分かるが、私はあくまで正規のルートで購入したい。つくり手が提示するやり方で手に入れてこそ、真にその食べものの魅力を感じられると思うから。
まだ見ぬ素晴らしい食べもの達のことを思うと、まだまだ生きていく理由があるな、と大袈裟でなく思うのだ。