見出し画像

描く、撮る、踊る、演じるビダイセイ

「栗は嫌いだ、栗崎颯樹」

確か三年前、大学一年生の私(記事の作者)は他学科合同の講義に参加していた。同じ講義を受けていた栗崎颯樹さんの自己紹介キャッチフレーズを見た途端、見入ってしまった。インパクトが強くSNSにアップされる彼の作品を見るたびに思い出すくらいだった。四年経った現在、幅広い活動に勤しむ様子を見て取材を依頼した。

Profile
 名前:栗崎颯樹
 出身:宮城県仙台市
 大学:東北芸術工科大学・洋画コース
 所属団体:パフォーマンスチーム「Lrin Trick」代表。

展示歴、受賞歴

 芸歴:15年(ミュージカル、演劇、ダンス)
 絵:7年目
 写真:2年目

彼のバックボーンについては制作のアカウントにて彼自身で作ったものが投稿されていた。

クリックで投稿にジャンプできます

しかし、作品に関してはハッシュタグや簡単なコメントのみの投稿であった。そのため、今回作品の裏側にあるバックボーンについて注力して取材を行った。

代表作、

2022 呪

コンセプト:小さい頃から教育という呪いに縛られることを理解したかのような少年。
制作期間:3ヶ月。その間、作品と向き合えず1年間描かず。
 
真ん中にいる子供は誰なのか?
 
―作品のモデルは私で、当時の写真を見ながら描きました。なので、あの表情もあのまんまで写真に写ってます。
なんで眉間にシワを寄せているのか、「眩しかったから?」「疲れたから?」とも思いましたが、現在の自分は「幼稚園が嫌だった」と最終的に思ってしまいました。私は自由が大好きです。縛られることが大嫌いです。おそらく、写真の当時から縛られるのが嫌だったんだと思います。「教育に縛られる。」それが私にとっては呪いの様なものでした。幼稚園、小学校、中学校ではずっと縛られてきました。
良い成績を取らなければいけない。塾に行かなければいけない。全てがどこにいても付き纏ってくるので、やりたい事が自由にできませんでした。ですが、高校に入学してからはある程度自由になりました。生徒会、部長、学級委員、制作、ダンス、ミュージカル、映像制作…様々な事に挑戦できました。呪いが解かれる感覚がそこにはありました。
なので、この作品では「呪い」というタイトルにしました。
 
制作期間に空白ができたのはなぜ?
 
―1年間描かなかった理由は、自身と向き合いながら描く中で手が進まなくなってしまったからです。人それぞれ、様々な問題を抱えていると思います。私もそうです。約10年間、両親にも言えていない問題があります。それらと向き合う中で変化も多くあり、個人の制作を行う余裕が無くなってしまいました。それが理由です。ですが、向き合う事で「人」をテーマに制作する事に尽力することができました。

2022.3 企画展in仙台 「すてきな6にんぐみ」の会場の様子

この作品を展示会場で見た人は「作品に描かれた子供の目線に魅入られた。でもどこか怖いようにも思う。」と感想を残している。

レオナルド・ダ・ヴィンチに憧れて

2021.10 大学の課題「個展形式の展示」より

普通のビダイセイは専攻した分野をメインに、趣味や副業として他の領域に手を出たりするが、極めるのは難しい。しかし、彼は全てにおいて他者を巻き込みながら達成してゆく。小学校の頃から劇団に入り毎年公演やイベントに出演、卒業後はフリーとして活動。大学に入ってからは二度の出演と子供たちに教える側になった。カメラはミュージカル、イベントや個人撮影において依頼が来ているほどの腕前である。絵画も仙台、名古屋や東京での企画展への参加、個展の開催、受賞歴。全てにおいて輝かしい。

「レオナルド・ダ・ヴィンチの多彩さに憧れて、高校生の頃から様々な知識と経験を得ようとしました。今の自分があるのは彼のお陰です。」

天才というのは、持つ筆は選ばない。どこへ行っても寵愛される存在なのだろう。

自身の過去がモチーフ

「私の作品には人がよく描かれているのですが、その人が何を考え、何を訴えているかを鑑賞者には考えて欲しいです。」
国語と同様、美術も全てが答えなのだ。見る人の数だけ正解がある。美大受験や、現代文の試験に追われた経験を持つ現代人は、芸術は自由だということを忘れている。彼を取材中して気付かされた。(多数ビダイセイを取材していると答え合わせをしている気分になるのだ)

2022 "The thoughts in my head are full of children"

遠い昔のような雰囲気を醸し出すこの作品。よく見ると女性の髪飾りに哺乳瓶、積み木、おしゃぶりが付いている。女性の柔らかな視線先にまず気を取られ、画面のトーンが統一されている故かモチーフの奇抜さが調和されている斬新な一枚である。取材したところ、全ての作品に共通しているテーマは「人間性、社会性、自身の過去」だそう。「人」をモチーフに表現を模索する理由について聞いた。
「身近に存在するものの中で最も理解出来ないのが人間を含めた「生き物」だからです。」

白と黒で描くのは何故か、

チョコレートの色を思い浮かべてみてほしい。
赤よりの茶色や、深い茶色や店頭で見るパッケージを思い浮かべるなど、皆違う。それらは自身の思い出から一番印象に残っている色のチョコレートや、目の感度の違い、ビターやミルクなど普段選んでいるカカオの濃度によっても違うだろう。そう、漢字に同音異語があるように色にも、同じ言葉から違う色を連想するようなことが起こり得るのだ。

2022に制作

だから美術作品も、使われている色は作者本人のフィルター、色眼鏡を通して見えた世界を作品に落とし込んでいるに過ぎない。それがまた面白く、個性となる。しかし、全部シロとクロで構成されていたら。それは、鑑賞者の思い思いの色を当てはめて鑑賞できる。モノクロで撮られた一枚の葉を秋に見たら紅葉のオレンジを連想し、夏に見たら緑と思うだろう。
まさにその部分に彼の思惑がある、彼は全ての作品を白黒にすることによって鑑賞に対し「余白」を作り出しているのである。
 
「色には様々な意味合いがあるので、色に影響されずに鑑賞者に触覚値を高めてもらうため絵と写真は白黒。また、鑑賞者に自分で色を想像してもらいたい。」

これから、

「春からカメラマンになりますが、アート制作も続けていきたいです。また、アーティストを支える仕事もしてみたいです。」
今年大学四年生のため、卒業後は働きながら個人制作も続けるそうだ。多彩な彼はこれからも注目される存在となって多くの人に影響を及ぼしていくだろう。現在、彼は2023年の1月25~29日に仙台のアーティストランプレイス「SARP」での個展を控えている。こちらから情報が発信されていく。(栗崎颯樹インスタの制作アカウント)これを機に、実物を自由に鑑賞してみてはいかがだろうか。

クリックで投稿にジャンプ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?